1984年、チケットぴあ開始を発表した記者会見の様子。(写真提供:ぴあ株式会社)

チケットぴあとエンタメファンが歩んだ37年間

店舗運営の終了から見る、チケットビジネスの変遷

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店舗販売・電話予約からインターネットへ

さらに1998年、ぴあはファミリーマートと業務提携。これをきっかけに、コンビニでチケットを発券するというスタイルが一般化していく。1980年代後半からコンビニ各チェーンは、電気、ガスなどの公共料金の支払いサービスを開始。さらに携帯電話料金、保険の加入手続きや料金支払い、ATMの設置など、さまざまな代行サービスを担うようになった。“コンビニでチケット発券”も利用者のニーズに合わせた必然だったと同時に、すでにこの時期からチケットぴあ店舗の役割は変化しつつあったと言っていいだろう。1984年に50店舗からスタートしたチケットぴあ店舗は、1999年には611店舗まで増加。このタイミングでぴあは、Webサイト「@チケットぴあ」を開設。電話予約・店舗での販売から、インターネットによる予約へと大きく舵を切った。

「人気アーティストの数が増え、イベントが巨大化したことで、電話予約や店頭販売による先着順が時代に合わなくなってきたんです。インターネット予約であれば、一定期間に申し込んでいただき、抽選でチケットを売ることもできるので公平感が高い。早い者勝ちではなくなったことが一番の利点でしょうね」

1991年、ぴあ予約センターやぴあ店舗の様子。(写真提供:ぴあ株式会社)

1991年、ぴあ予約センターやぴあ店舗の様子。(写真提供:ぴあ株式会社)

“チケットぴあ店舗の運営終了”の理由

ぴあ株式会社は2003年に東京証券取引所の第一部に上場。1990年代後半からデジタルネットワークの構築に取り組んできたぴあは、上場をきっかけに、チケットサービス、情報サービスのIT化をさらに推し進めた。その大きな柱の1つが、電子チケットの導入だ。

「電子チケットのシステム構築の開発資金を得ることが、上場の目的でもありました。1997年10月にエンタテインメント情報サイト『@ぴあ』を立ち上げて情報誌としての『ぴあ』を必要としない状況を作るために動いていましたが、電子チケットの導入によって、それがさらに加速したと思います。チケットが端末に紐付いていれば、公演情報やクーポンを送れるなど、マーケティングのツールとしても活用できますからね」

インターネット販売の普及は、違法な転売防止やダイナミックプライシング(条件によってチケットの価格を変動させるシステム)の導入を進める大きな契機になっている。今回の“チケットぴあ店舗の運営終了”は、急速に進み続けるIT化の流れを考えると、当然の結果と言えるだろう。

「10年ほど前から採算が取れなくなっていた店舗運営を続けていたのは、いわばお客様に対するホスピタリティのためです。インターネットが不得手な方や、顔見知りの店員と会話を楽しみながらチケットを買いたいという方もいらっしゃるので。この先はさらにネットにシフトしますが、しばらく電話予約は継続しますし、紙での発券がなくなるわけでもない。使いやすいサービスを提供することに変わりはありません」

チケットポート銀座店。2021年6月30日をもってチケットぴあのサービス提供を終了した。

チケットポート銀座店。2021年6月30日をもってチケットぴあのサービス提供を終了した。

エンタメの価値を取り戻す

2020年から続くコロナ禍によって、エンタテインメント業界は深刻な打撃を受けている。ぴあも例外ではなく、チケット販売による収入は激減。2021年3月期連結決算で、純損益66億円の赤字となった。しかし小林氏は「エンタテインメントは生活に不可欠。来年以降は必ず盛り返す」と言葉を強める。

「“エンタメは不要不急”などと言われましたが、我々は“エンタメやスポーツは人が生きていくうえで、なくてはならない”と考えています。ぴあが目指すのは『感動のライフライン』。いい音楽、いい映画、いい舞台を体験することは生きる希望ですし、必ずやその価値を取り戻したいと思っています」

ぴあは、来年で50周年を迎える。情報誌の創刊、電話によるチケット予約から電子チケットの導入まで、エンタテインメントに関わるサービスを進化させ続けているチケットぴあは、コロナ以降のエンタメにおいても大きな役割を果たすことになりそうだ。

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玉置泰紀 エリアLOVE Walker総編集長 @tamatama2

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