長引くコロナ禍を受けて野外フェスも軒並み中止となり、多くの音楽ファンが楽しみを失ってしまった2020年の夏。読者の中にも毎年の恒例となった旅行やキャンプといった行楽を断念した人も多いはず。音楽ナタリーでは読者にひと時の脳内旅行を楽しんでもらうべく、旅好きとして知られるアーティストへのアンケート取材をもとに「2020年の夏休み」と題した夏限定の連載企画を展開している。第7回となる今回は音源制作、ライブ、プライベートで海外に足を運ぶ機会の多い
今まで旅した外国、および国内の印象深かった地域は?
海外:アイルランド、スコットランド、オックスフォード
国内:北海道(美瑛町)
その中で最も印象深かった場所は?
大学生の頃に姉が留学していたイギリスのオックスフォードに半ば無理やり社会勉強として送り込まれたのが、旅が自分と音楽を結びつける重要な役割になったきっかけでした。特に海外旅行というものへの思い入れも、色んな世界を見たいという欲求もない僕にはとても退屈な旅だったのを覚えています。ただ、建築や景色の奥行きなど何も感じなかった僕にも灰色の空とオレンジ色のライト、とてつもなく冷たい空気の匂いが残す違和感が強烈にじわじわと植えつけられていきました。僕はそれから定期的に姉のいるオックスフォードへ遊びに行き、そこから更に色んな国へ旅をしていました。ロンドンから初めてスコットランドのエジンバラまで行った時、その見たことのない壮大な景色に吸い込まれそうになって、求めてもいないものを求めていた様な変な感覚に取り憑かれました。エジンバラから湖水地方へのバスツアーを予約していたある朝、僕は随分早くに目が覚めてプリンシズストリートにあるマクドナルドで歌詞を書きました。「DISCO FLIGHT」は凛として時雨にとってとても大事な一曲となり、今でもすべてが灰色に輝いて見えたあの瞬間を歌詞に残せたこと、今もその楽曲を演奏していることを奇跡だと思っています。
今から1週間、仕事や日常から完全に解放されて自由に旅行できるとしたら、どこに行ってどんなふうに過ごしてみたいですか?
行きたいところはたくさんあるはずなのに、心のどこかで自分がまだ何かを感じられる場所があるのかが怖くなる時があります。本当に身体や精神を休めたいならベトナムやハワイへ行って豪華なホテルでゆっくり寛ぐかもしれません(笑)。でも僕はまだ日常や音楽から解放されたいんじゃなくて、自分の感覚が震える瞬間を見つけられる様な時間を過ごしてみたいです。そういった意味では音楽に縛られていたいのかもしれません。目に見えるものも、過ごしてる時間も、脳内の思考もすべての刺激が音楽を生み出してくれる様な旅をしていたい。旅立つ前の自分がちっぽけに見える場所であればどこにでも行きたいですね。
プレイリスト「2020年の夏休み」Selected by TK(凛として時雨)
01. 君がいた夏 / Mr.Children
02. スカーレット / スピッツ
03. ENDLESS SUMMER NUDE / 真心ブラザーズ
04. 強く儚い者たち / Cocco
05. Easier to Lie / アクアラング
06. No Surprises / Radiohead
07. DON'T LOOK BACK IN ANGER / Oasis
08. Dramatic Slow Motion(album version) / TK from 凛として時雨
09. 若者のすべて / フジファブリック
10. 真夏の夜の事 / 初恋の嵐
11. Sadistic Summer / 凛として時雨
12. 熱帯夜 / SPEED
13. Are You Even Real? / ジェイムス・ブレイク
TK(凛として時雨)
凛として時雨のボーカル&ギター。凛として時雨では、全作曲作詞と共にエンジニアを担当し、鋭くも激しい独創的な視点で自らの音楽を表現する。またソロプロジェクトTK from 凛として時雨名義でも活動中。テレビアニメ「東京喰種トーキョーグール:re」のオープニングテーマとなった「katharsis」や、映画「スパイダーマン:スパイダーバース」の日本語吹替版主題歌「P.S. RED I」などを収めた4thソロアルバム「彩脳」を2020年4月にリリースした。
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【TK メディア情報】
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