もともとは劇作家の平田オリザが書き下ろした小説である「幕が上がる」は、弱小高校演劇部の個性豊かな部員たちが全国大会出場を目指す1年間をつづった物語。ほぼ演技経験のないももいろクローバーZが、平田のワークショップを通して演技と向きあい見事演じきった。
ももクロメンバーの印象を尋ねてみると、本広は「アイドルなのでそれぞれにギャップがあって当たり前だなと思っていたんですが、彼女たちはギャップがないんですよ。裏で疲れた感じなわけでもなく、いつもまっすぐで、元気があって。一緒に仕事をしていてすごく気持ちがよかったです」と答える。また本広は撮影中に印象に残ったという百田夏菜子が放った言葉を述懐。「あるとき夏菜子ちゃんに聞いたんですよ。『疲れて眠い』とか、『だるい』とか言えばいいじゃんって。それで返ってきた答えが『そういうのってカッコ悪くないですか?』だったんですよ」と話し、「彼女たちの生き方がそうなんでしょうね。見ていないところでも凛としていようという姿勢がある」と分析する。
当て書きしたかのようにメンバーの個性とぴったりの配役については、本広は「たまたまなんですよね。別に狙ったわけでもなく、あわせたわけでもないんです」と述べる。ただ、有安杏果が演じた転校生については役柄に変更を加えたと明かし、「原作だとクールビューティーな役なんですよ。向上心が高く、プロの女優を目指している。でも映画では少し杏果ちゃんにあわせて、“コンプレックスの塊”という設定にしたんです」と等身大のキャラクターが生まれた理由の一片を教えてくれた。
近年はアニメーションも手がけている本広は、その理由として「普通の邦画を作るのではなくて、もっと世界に向けて作品を作りたいなと思っていた」と胸中を明かす。だがそうした中で「幕が上がる」を撮影したことで「作り手って楽しんでたらダメだ、苦しまないといい映画はできないっていうのがあったんですけど……作っている人、出演している人が楽しい映画があっていいんだなと思ったんです」と晴れやかに語る。そして「『笑いました』『勇気をもらいました』っていう声がすごく多くて。そうか、栄養剤みたいな映画があってもいいんだなと思ったんです。そうなると自分の作りたいものはまだまだあるなあと。またこれからも実写は作っていこうかなと思っています」と述べ、本広の中でも「幕が上がる」が重要な1作となったことをうかがわせた。
関連記事
本広克行の映画作品
関連商品
てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
本広「アイドルなのでそれぞれにギャップがあって当たり前だなと思っていたんですが、彼女たちはギャップがないんですよ。裏で疲れた感じなわけでもなく、いつもまっすぐで、元気があって」/「幕が上がる」本広克行が見た“カッコいい”アイドル http://t.co/CoAgZRv5nH