文学座研究生が巧みに描き出す生と死、ソーントン・ワイルダー「わが町」

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文学座附属演劇研究所本科第57期生による「わが町」の公演が、本日7月9日に東京・文学座アトリエにて行われた。

文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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文学座附属演劇研究所は、本科、研修科からなる文学座の養成機関。俳優のみならず、演出、舞台監督、美術、照明、音響効果、制作などスタッフの養成も行っており、これまでに数々のOG・OBを輩出してきた。本科では昼間部・夜間部の2クラスに分かれ、年3回文学座アトリエで発表会を実施。本科第57期生による1回目の発表会となる今回は、ソーントン・ワイルダー作「わが町」が上演演目に選ばれた。ステージナタリーでは、昨日7月8日に行われた夜間部のゲネプロの模様をレポートする。

文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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1938年にアメリカ・ニューヨークで初演された「わが町」は、ニューハンプシャー州のグローバーズ・コーナーズと名付けられた架空の町を舞台に、2つの家族の日常生活、両家の子供の恋愛と結婚、そして彼らを取り巻く町の人々の死を、3幕構成で描いた物語。劇中では研究生たちが進行役となる舞台監督や町の人々を、1幕ずつ配役を変えて演じていく。

文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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舞台は、研究生による「57期夜間部、よろしくお願いします!」という元気いっぱいの挨拶で幕開け。1幕で描かれるのは、グローバーズ・コーナーズに暮らすギブス家とウェブ家の物語だ。上手・下手の壁沿いには、俳優たちが並んで腰を下ろし、ステージ上には机や椅子といったシンプルな装置が置かれている。朝を告げる鳥のさえずりから、牧場の牛の鳴き声、町を走る列車の走行音や汽笛、忙しなく動き続ける工場の機械音まで、キャストが自身の声色や楽器を用いて表現。1幕中盤では合唱隊に扮した俳優陣が讃美歌を歌唱し、伸びやかな歌声で心地よいハーモニーを届ける。また突如登場したMCがラップを披露して客席を盛り上げるなど、趣向を凝らしたユニークな演出が随所に散りばめられた。

文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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2幕の主軸となるのは、ギブス家のジョージ、ウェブ家のエミリーの恋愛物語。配役を交代したキャストたちは、ジョージとエミリーの淡い恋から、2人が各々の生家で過ごす最後の夜、そして結婚式当日の様子までを丁寧に描写していく。1幕ごとに配役を変更することにより、それぞれの俳優の個性をじっくりと見ることができるのも今作の見どころの1つ。全国から集まった、経歴も年齢も異なる18歳以上の研究生たちは、熱のこもった演技でそれぞれの役柄を立ち上げていく。

文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」夜間部のゲネプロより。(撮影:宮川舞子)

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喜びに包まれた2幕と打って変わって、3幕の舞台となるのは丘の上の集団墓地だ。俳優たちは丘の上に鎮座する墓石を自身の身体で表現し、ゆっくりとした言葉遣いで“死者の言葉”を紡いでいく。やがて産褥死したエミリーの遺体が運ばれてくると、エミリーの霊は亡くなった母や町の人々と再会を果たす。はじめは生者のようにはつらつと発語するエミリーだったが、死を受け入れ生の素晴らしさに気づくことで、彼女の言葉は次第にスローなテンポに。2つの家族を通して1つの町の歴史、そして生と死を巧妙に描き出し、舞台は静かに幕を下ろした。

※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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文学座附属演劇研究所本科第57期発表会「わが町」

2017年7月9日(日)※公演終了
東京都 文学座アトリエ

作:ソーントン・ワイルダー
訳:森本薫
演出:小林勝也(昼間部)、高橋正徳(夜間部)
出演:文学座附属演劇研究所本科第57期生

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