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塚本晋也「野火」舞台挨拶で思い述べる「若い人のよいトラウマになれば」

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「野火」初日舞台挨拶の様子。左から塚本晋也、リリー・フランキー、森優作、石川忠。

「野火」初日舞台挨拶の様子。左から塚本晋也、リリー・フランキー、森優作、石川忠。

本日7月25日、「野火」の初日舞台挨拶が東京・ユーロスペースにて行われ、監督の塚本晋也、出演者のリリー・フランキー森優作、音楽を手がけた石川忠が出席した。

大岡昇平の同名小説をもとにした「野火」は、飢えに苦しみながら戦地をさまよう兵士たちの姿を描いた人間ドラマ。

塚本は「『野火』を撮りたいと思いはじめてから20年、3年前にとにかく作ると決めて動き出しました。多くのボランティアスタッフやキャスト、リリーさん、中村達也さん、森くんの手を借りて、皆さんの熱い思いでここまで来ました。手探りながらもやってきて、今日に至ることができました」と万感の思いをあらわにする。

兵士・安田を演じたリリーは「上の階では『女囚さそり』をやっているにもかかわらず、ありがとうございます。本当はここに中村もいるはずだったんですけど、今日はどうしてもピザのデリバリーの仕事が忙しくて来れないみたいです。彼は今苗場までピザを運んでいるところです」と、欠席した中村について冗談を飛ばす。年少の兵士・永松役の森は「僕はこういう場に慣れていなくて、ちゃんと話せるかどうか……。こんなにたくさんの方が、朝早くから並んでまでこの作品を観に来てくださって本当にうれしいです」と緊張の面持ちで感謝の意を述べる。

石川は「この日をやっと迎えられて感無量です。塚本監督とは長年一緒に仕事をしてきましたが、今回は音楽としての課題が多くて。映画の内容は戦争なんですが、人間というものを掘り下げた作品なので、ぜひ観ていただけたら」と涙をこぼし、時折言葉を詰まらせながらも真摯に語った。

本作のキャストたちは、“戦場に放り込まれた兵士”という役柄にリアリティを持たせるため、撮影前に大幅な減量を行ったという。その話題を受けてリリーは「森くんは最近バイトをカフェから定食屋に変えたら太ったんだよね?」と、森の現状にふれる。そして「彼は映画のオーディションをほとんど受けたことがなかったのに、いきなりヴェネツィアのレッドカーペットを歩いて。それでまた定食屋に戻っていくなんて、潔い男ですよ。あと映画祭のパーティで『これからどうするの?』って聞いたら、『僕、通訳になりたいです!』って言っていて」と明かし、観客の笑いを誘う場面も。森は「ヴェネツィアで外国人とたくさん話せてよかったです」とほほえみながら、今後の活動について「役者をやっていきたいと思っているので、がんばります。定食屋もやりながら……」とコメントした。

最後に塚本が「自分には映画という手法があったので、戦争を体験した方から伺ったことに少しでも近づこうと思い、 彼らの話を染み込ませながら『野火』を撮りました。若い人にとって、この作品がよいトラウマとなってほしいです。自分が子供のころに読んだ『はだしのゲン』のように。ドキュメンタリーや史実以外にも、創作でも戦争の恐ろしさを伝えることができるという思いが込められています」と真摯に語り、舞台挨拶は幕を下ろした。

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