「野火」「ほかげ」などで知られる
ベトナム帰還兵のアレン・ネルソンによるノンフィクションをもとにした「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」。ネルソンは来日後、自らの戦争体験をもとに日本全国で1200回以上の講演を行い、“本当の戦争とは何か”を語り続けた人物だ。塚本はネルソンの証言から、“戦争加害者の傷”をテーマに映画を手掛けた。
本作の主人公は、ニューヨークの貧しい家庭に生まれ、差別と貧困から抜け出すために18歳で海兵隊に入隊したアレン。映画のヒーローのように誇り高い兵士になれると信じていた彼は、1966年にベトナム戦争の最前線へ送られる。しかしそこで待っていたのは栄光ではなく、ただ人を殺すことを強いられる恐るべき凄惨な現実だった。命を奪う経験を重ねるうち、アレンの心は次第に感覚を失っていく。23歳で帰国した彼を待っていたのは、戦場での記憶に縛られる日々だった。大きな音や暗闇に怯え、家族との関係は崩壊。ホームレスになり孤独と絶望の中で生きるアレンの前に、彼を救い出そうとする退役軍人病院のダニエルズ医師が現れる。
ブロードウェイミュージカル「RENT」のオリジナルキャストおよびクロージングキャストを務めたロドニー・ヒックス、「英国王のスピーチ」の
塚本は「アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた」と回想。「映画化は困難を極め、作らなければ、でも逃げたい、というせめぎ合う気持ちは7年もの間完成に到るまで続いた」「今は亡くなってしまったアレンさんを蘇らせ、人々に知ってもらうことが今の世の中にどうしても必要、という考えを捨て去ることができずに、多くの人たちの理解と協力を得て完全なものとして出来上がった」と伝えた。
なお本情報は「ベトナム戦争退役軍人の日」である3月29日にあわせて発表された。
※塚本晋也の塚は旧字体が正式表記
塚本晋也 コメント
大岡昇平さんの「野火」を映画化するとき、さまざまな資料、書籍を読んだが、そのとき出会った何よりも恐ろしいノンフィクションが「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」だった。アレン・ネルソンさんは、ベトナム戦争で多くの人を殺した。そして戦争後遺症に生涯悩まされ続けた。自分の犯した罪とその後の人生を包み隠さず吐露した本は、いつまでも頭から離れず強烈に自分の心に刻み付けられた。
これがもし映画になったら?と想像すると、今の世の中に絶対必要なことに思えた。戦争がどういうものか。戦争が人をどう変えるか。周囲の人にどういう影響を与えるか。
同時に、そんな恐ろしい考えは持たないようにしよう、と逃げる理由も考えた。
映画化はあまりに難しく、逃げる理由はいくらでも並べることができた。
その物語に近づこうとするたび、人間の暗部がいやというほど浮き彫りになり、苦痛を感じた。しかし、体は、この企画の実現のためにとどまることを忘れ休みなく動き続けた。果たして映画化は困難を極め、作らなければ、でも逃げたい、というせめぎ合う気持ちは7年もの間完成に到るまで続いた。
あちこちで戦火をあげている今の世界。それをますます身近に感じるようになった。これは、アレン・ネルソンというアフリカ系アメリカ人の一人の兵士を描いた真実の物語だ。
今は亡くなってしまったアレンさんを蘇らせ、人々に知ってもらうことが今の世の中にどうしても必要、という考えを捨て去ることができずに、多くの人たちの理解と協力を得て完全なものとして出来上がった。
彼の生きる姿が、皆さんの心に届くことを心から願っています。
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