平成ドラマ委員会~懐かしドラマを令和に観てみた~ Vol. 4 [バックナンバー]
てれびのスキマと「野ブタ。をプロデュース」 | 青春とは、残酷な世界を心ゆくまで楽しむこと
主題歌が良いドラマは、ほぼ間違いなく名作だ
2026年4月22日 12:05 1
そこまで昔というわけではないけれど、改めて観るとなぜかセンチメンタルな気持ちになる……。そんな“微妙に懐かしい”平成ドラマの魅力を再発見するべく、映画ナタリーでは「平成ドラマ委員会」を発足。4人の委員会メンバーと、それぞれの思い出深い作品を振り返り、現代に生かせる教訓を探っていく。
Vol. 4では、生粋のテレビウォッチャーとして知られるライターのてれびのスキマが、日本テレビ系ドラマ「野ブタ。をプロデュース」を語る。2005年に放送された同作は、クラスの人気者である修二が、彼を親友と思い込むクラスメイト・彰とともに、いじめられっ子の転校生・信子を“プロデュース”する物語。「主題歌が良いドラマは、ほぼ間違いなく名作」と太鼓判を押すてれびのスキマは、名曲「青春アミーゴ」と共鳴する同作の奥深いストーリーに注目した。
文
これは、「野ブタをプロデュースする」物語ではない
「ドラマは主題歌で見る」
というのは、極論だ。けれど、あながち間違いではない気がする。
名作の主題歌が必ずしも優れているとは限らないが、主題歌が良いドラマは、ほぼ間違いなく名作だ。
ただし、ここで言う「良い主題歌」とは、単に楽曲として優れているだけではなく、いかに物語の世界観と共鳴しているか、だ。
そういった意味で、自分がこれまでに見てきたドラマの中でベスト級に好きな主題歌は、「野ブタ。をプロデュース」(日本テレビ系)の「青春アミーゴ」。
ドラマの登場人物名である「修二と彰」名義でリリースされながら、いまやドラマの世界を越え、「友情と青春」を象徴するスタンダード・ナンバーとなっている。もはや、ドラマ自体の存在すら知らないまま、この曲を口ずさんでいる人も少なくないのではないだろうか。
しかし、もし作品を一度でも視聴すれば、この曲の魅力は何倍にも増して、心に響くに違いない。
「野ブタ。をプロデュース」は、「すいか」でドラマファンを虜にしたプロデューサー・河野英裕と脚本家・木皿泉のコンビによる第2作だ。
白岩玄の同名小説をドラマ化したものだが、クラスの「人気者」が「イジメられっ子」を「プロデュース」していくという設定以外は、大胆に改変されている。
何より、主人公・修二(
修二は、クールで面倒見のいいクラスの人気者。だがその内面では「俺が思うにこの世のすべてはゲームだ。ていうかみんな口には出さないけれど、そう思わないとやってられないことばかりだ。(中略)マジになったほうが負け」と斜に構え、「キャラ」という仮面を被っている。
その“天敵”が、「この世のすべては自分のためにある」と信じているような彰だ。「~だっちゃ」「なのよ~ん」といった独特の口調がクセになる。だが、実はこれが当時“反抗期”だった山下が独断で作り上げた台詞回しだったと後で知って驚いた。
彼らのクラスに、「この世のすべてを恨んでいるような」信子が転校してきたところから物語は始まる。彼女の「キャラ」をプロデュースして人気者にしようというのだ。
しかし、彼女は当初、絶望していた。
「この世はどこまで行っても同じ世界が続いているだけ。私が住んじゃいけない世界がずっと続いているだけ」
かつて“スクールカースト”の底辺にいた僕にとって、信子の抱える孤独は、痛いほどよくわかる。
いや、共感するのは信子に対してだけではない。
孤立への恐怖から、その場でうまく立ち回ることを最優先にして、自分の本音を隠す修二の処世術に、心当たりがないわけがない。また、「やりたいことも欲しいものも何もない人間なんだ」とポツリと漏らす彰の空虚さにも、強く感情を揺さぶられてしまう。
このドラマで忘れてはいけないのは、“大人”たちの存在だ。
「美男美女以外立ち読み厳禁」というルッキズム全開の独自ルールを掲げた書店「ゴーヨク堂」。そこで立ち読みを許された信子は、店内を見渡して「全然違う世界に来たみたい」と呟く。
すると、店主のデルフィーヌ(
「あたしが作った世界」
神出鬼没な教頭・キャサリン(
「人はね、何を思っても自由。(中略)頭は便利だよ。本当に行動しなくても思っただけで、それで切り替えて次に行けるからね」
本来、ドラマの中で「現実」を担うはずの大人たちの方が、逆にどこか浮世離れしていて、子供のような純心さを持っている。それでいて、彼らは人生経験に裏打ちされた深い一言を、さりげなく投げかけて子供たちを導いていく。
キャサリンは修二にプロデュースされている信子に言う。
「あんた、こいつ(修二)が真っ当な人間になるように教育してやってよね」
これは、「野ブタをプロデュースする」物語ではない。
自分たちが生きやすい世界を自分たちで作るために「野ブタとプロデュースする」物語だ。
現代社会では、リアルでもSNSでも、いかに「キャラ」をうまく纏うかという処世術の重要性が日に日に増している。そんな中で「キャラ」をプロデュースすることから始め、様々な葛藤を経て「自分らしさ」を見つけていく彼らの転換はより切実に響いてくる。
どん底に落ち込んだ修二にデルフィーヌが「ハッピー?」と問いかけて言う。
「生きていれば最悪の日もある。されど最高の日もある。それが人生」
もうダメかもしれない。そう思っても、誰かがいれば取り返しのつかない場所からも戻ってこられる。
「この世のすべてはゲームだ」
その事実は変わらないかもしれない。けれど、修二はプロデュースを経て、ゲームのルールを書き換えた。
「負けたと思い込んで、途中で降りてしまうやつはバカだ。最後まで生き残って、ゲームを心ゆくまで楽しんだやつが勝ち──。この世はたぶん、そういうルールだ」
青春とは、残酷な世界を心ゆくまで楽しむこと。「野ブタ。をプロデュース」には、その刹那的な燦めきが刻まれていた。
「野ブタ。をプロデュース」(2005年放送 / 日本テレビ系)
自分自身を演出することで人気を集め、本音を隠している高校2年生の桐谷修二と、修二を親友だと思い込み付いて回る草野彰。2人のクラスに、陰気な転校生・小谷信子が転校してくる。信子はたちまちクラスの女子からいじめを受けるようになり、修二と彰は彼女を人気者にすべく、変身プロデュース作戦を始めることに。「修二と彰」名義でリリースされた主題歌「青春アミーゴ」はミリオンセラーを記録した。現在はHuluで見放題配信中のほか、Blu-ray / DVD BOXが販売中。
てれびのスキマ プロフィール
1978年福岡県生まれ、静岡県出身。ライター、テレビっ子。本名の戸部田誠名義でも活動しており、主な著書に「タモリ学」「1989年のテレビっ子」「芸能界誕生」「王者の挑戦 『少年ジャンプ+』の10年戦記」など。
バックナンバー
関連記事
亀梨和也のほかの記事
関連商品
タグ
映画ナタリー @eiga_natalie
平成ドラマを語るリレー連載 Vol. 4
テレビウォッチャー・てれびのスキマが「野ブタ。をプロデュース」を語る🏫
「主題歌が良いドラマは、ほぼ間違いなく名作」
▼記事はこちらから
https://t.co/nZaYpkqvF0
#野ブタをプロデュース #亀梨和也 #山下智久 #堀北真希 https://t.co/CY1D4scVQv