本日2月17日、「
大岡昇平の同名小説をもとにした「野火」は、第2次世界大戦末期にフィリピン・レイテ島を彷徨する日本兵の姿を描いたもの。監督と主演、脚本、編集、撮影、製作の6役を塚本が務め、ほかのキャストには森優作、リリー・フランキー、中村達也らが名を連ねる。
トークイベントで顔を合わせるのは初めてだという塚本と想田。想田は「ちゃんとお会いするのは実は初めてではなくて、1997年にヴェネツィア国際映画祭で塚本さんが審査員をなさっていたとき、僕の『ザ・フリッカー』という短編が招待されて現地へ行っていたんです。会場に塚本さんがいらしていて『ファンです』と言いました!」と明かし、塚本を驚かせる。
想田は「野火」を2度鑑賞したといい「改めて傑作だなあと感じます。実は、最初に観たときは『塚本さんにずいぶん似た方を主演にキャスティングされたんだなあ』と思っていたんです」と率直に述べる。そして「あまりに迫真の演技だったので、最後の書斎のシーンで『あっやっぱり塚本さんだったんだ!』って気付くまで、ずっとわからなかったんです。自分で撮って、演じるのは無理だしなと思って……」と続けると、塚本は「僕は現場ではただぼーっとしていただけなんですけどね。編集がうまいんですかねえ」とにこやかに答えた。
さらに想田は「見せるところと見せないところ、その演出のメリハリがすごく効いているなと思いました。人の死を表すとき、ほかの映画では記号的に倒れるだけという演出が多い中『野火』は内臓が出たりドーンと頭が吹っ飛ばされる。容赦ないですよね」とコメント。塚本は「最初はあのシーンは撮影していなかったんですが、戦争の恐ろしさを描くと言ったわりには足りないような気がして。コンテに描いてあったのにどこかで一度消しちゃっていたので復活させました。脳みそが出たり、1本の腕を2人の兵隊が取り合ったりする場面については、(映画の)セールスの方に『あのシーンをカットしたら買ってあげる』と言われたこともありましたが、残したかった。反対に、リリーさんが八つ裂きにされる様子は映す必要がない。その加減は感覚的なものですが、そうでしかありえないと思ってやっていました」と回想する。
また、想田が「敵の存在を光だけで表す場面は、見えないから恐怖感が煽られるしリアリティを感じました。現場の兵士には敵すら見えないんだろうなと思いました」と話すと、塚本は「最初からアメリカの若い兵隊さんは映すつもりはなかったですね。彼らは向こうで教育を施されてきたけど、そういうことさえなければお友達になれちゃう者同士なので。銃弾はアメリカ兵によって飛ばされるのではなく、戦争を取り決めた人たちというか、闇の中からザーッと降ってくるような感じにしたかったんです」と本作に込めた思いを語る。その後もフィクションにおける戦争の描き方や、想田が本作を観て原一男の監督作「ゆきゆきて、神軍」を思い出したという話、さらには「野火」公開後の観客の反応に関するエピソードなどが展開され、盛況のうちにイベントは終了した。
「野火」は3月4日までユーロスペースで凱旋上映。また茨城・CINEMA VOICEほか全国で順次公開される予定なので、詳しい上映情報は公式サイトで確認を。
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- 「野火」公式サイト
- 「野火」 Fires on the Plain 予告編
- 「牡蠣工場」公式サイト|想田和弘監督作品観察映画第6弾
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