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「護送車はダンボール」塚本晋也が手作りで完成に漕ぎ着けた「野火」会見

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「野火」記者会見の様子。左から塚本晋也、森優作。

「野火」記者会見の様子。左から塚本晋也、森優作。

本日7月14日、東京・日本外国特派員協会にて「野火」の試写および記者会見が行われ、監督の塚本晋也とキャストの森優作が出席した。

「野火」は大岡昇平の同名小説を映画化したもの。第2次世界大戦末期を舞台に、フィリピン戦線を彷徨する兵士の姿を描く。主人公の田村一等兵を塚本が自らが演じ、ほかのキャストには森、リリー・フランキー、中村達也らが名を連ねる。

塚本は本作について「以前の作品では“都市と人間”をテーマにしてきましたが、今回はフィリピンの美しい自然とそこで泥んこになっていく人間の対比を描きたかったのです。田村と観客の視点が一体化するような撮り方で、敵がまったく見えない中から弾が飛んできたり爆発したりという、昔からどうしてもやりたいと思っていた映像はお金がなくてもあきらめなかったので、結果的に自分がやりたいことのエッセンスが凝縮された映画になりました」と述べる。

年少の兵士、永松を演じた森は、通訳を介さずに流暢な英語で外国人記者の質問に答える。撮影時の心境を尋ねられると、森は「自分は演技の経験がほとんどなかったので、塚本さんの言うことをとにかく聞いて、失うものは何もないという思いで精一杯やりました」と当時を振り返った。

本作はスタッフや俳優など作品に携わった人のほとんどがボランティアで、彼らの多大な協力を得て完成に漕ぎ着けたという。塚本は「劇中の護送車は、実を言うとダンボールでできてるんです。でも間近で見てもそうとはわからない完成度になりました。映画の中には本物しか出したくなかったので、別の形の車は選ばずにダンボールで作ることを思いついて。スタッフに『僕は本物がほしいし、ダンボールが好きなんだ』と言って、あのようなものができあがりました」と製作エピソードを明かす。

そして塚本は「この映画を作ろうと思っていた当初は、どこか戦争が遠いもののような気持ちで、普遍的なテーマを豊かな原作によって描こうという思いがありました。でも実際に制作を始めたときには、近未来に起こってしまう可能性のあることだという危機感と恐怖が大きくなっていって。モノクロはどこか過去の出来事を見ているような印象を与えるので、そうではなく、今現在起こっていることだというイメージをお客さんに持ってもらいたい気持ちからカラーで撮りました。戦争は嫌だなあと観た人に思ってもらえれば」と力強いまなざしで語った。

「野火」は7月25日より全国でロードショー。なお東京・ユーロスペースでは、連日最終回に英語字幕付きの上映が行われる。

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