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塚本晋也が「野火」に込めた並々ならぬ熱意明かす、終戦記念日トークショー

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「野火」の終戦記念日トークショーの様子。左から塚本晋也、森優作。

「野火」の終戦記念日トークショーの様子。左から塚本晋也、森優作。

本日8月15日、「野火」の終戦記念日トークショーが東京・ユーロスペースにて行われ、監督を務めた塚本晋也とキャストの森優作が出席した。

塚本は「この作品が終戦記念の日に上映されるようにと長い間思っていたので、ついにこの日が来てしまったというのが、どこか信じられないような気持ちです」と心境を述べた。年少の兵士・永松役の森は「自分は戦争についても、もの作りの現場も知らなかったので、お芝居をすること以前に、今の等身大の自分が戦争という状況の中に放り込まれたらどう思うだろうかと考えていました」と述懐。

キャストへの指導について問われると、塚本は「僕はただ痩せてください、日焼けしてください、髭を伸ばしてくださいとお願いしただけで。でもこれをやるのが大変なんです。痩せていくと精神が鋭敏になって、実際の兵隊さんの状態に近くなっていって。現場にきた人はみんな髭を伸ばして、お腹がペコペコな状態でやっていたので、メイキングを見ると覇気がないですね。スタッフも監督もヘロヘロで」と撮影時の様子を明かした。

また森は「小さい頃観た日本映画の中の戦争が自分にとってスタンダードだったので、大岡昇平さんの『野火』の物語は衝撃的でした。実際にこういうことがあったんだという事実を知れただけでも、考え方が変わりました」と語る。それを受けて塚本が「森くんはふにゃっとしたやわらかいキャラクターなんですけど、豹変していく永松を演じてくれそうな予感がはっきりとあったのでお願いしたんです。最初は演出するために彼の肩を触ったりすると、そのまま崖から落ちていってしまいそうなくらいやわやわで。でも最後には相当な集中力で、揺るぎない雰囲気で演技をしてくれた」と、難役を演じきった森を称える場面も。

さらに塚本は「原作そのものがあまりにインパクトが強くて、これだけで絵が全部浮かびました。あと10年ほど前にフィリピンのレイテ島に行った方から伺った話が恐ろしくて。戦争にいくと人間がものになってしまったり、とても本能的に生きるという、これまでの映画や小説には描かれていないものでした」と製作の準備段階を振り返る。

そして観客から戦争映画全般について尋ねられると、塚本は「フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』が自分にとって金字塔のようなもので、ときどき喝を入れるために観るんです。病院の爆破シーンを本物でやろうとこだわったのは、あの作品でナパーム弾で爆破するところがすごく印象的だったということもあります」と答える。さらに「人間は死ぬとただのモノになって、もっともいやな形で壊れてそこに散らばっているというのを表したくて。スタッフに協力してもらって、陸で死ぬとこうなって水辺だとこう、といったところも細かく追求しながら描きました」と語り、並々ならぬ情熱をもって「野火」を作り上げたことをうかがわせた。

全国で公開中の「野火」は、大岡昇平の同名小説をもとにした人間ドラマ。耐え難い飢餓感に苛まれながら戦地を彷徨する兵士の姿を追う。

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