古典歌舞伎とテクノロジーが融合した「超歌舞伎」は、2016年のニコニコ超会議で誕生し、このたび10周年の節目を迎える。今回は、2023年以来となる東京・歌舞伎座での公演で、これまでの演目をちりばめた“決定版”が披露される。
取材会で獅童は、10年前を振り返り、「歌舞伎を古くからご覧になっているお客様にとっては“クエスチョン”が浮かぶ作品だったのではないかと思います。歌舞伎には“約束事”があるので、当時はバーチャルチームとの意思疎通に苦戦しましたが、演出・振付の藤間勘十郎先生をはじめ、良いものを作ろうという一心で挑み、幕が開いたら(初音)ミクさんのファンの方の盛り上がりに、思わず泣かされてしまうような公演だった」とコメント。さらに、「超歌舞伎」は「バーチャルと言えど、作っているのは人間。なので、人の心が通っている」と言い、前回の歌舞伎座公演までを第1期として、「第2期は新たな気持ちで未来に進んで行けたら。今回は新作ですが、これまでの思いを込めて、今まで印象的だった部分を全部つなげたストーリーにしたいとお願いした」ことを明かした。公演では、これまで初音ミクが演じた役を、今度は歌舞伎俳優が演じるなど、ブラッシュアップされるという。
今回の公演について、獅童は「歌舞伎座でやるにあたり、萬屋一門、播磨屋一門、小川家の皆に参加してもらいたかった」と話す。尾上左近が「理想の女性は初音ミクさん」と獅童に伝えたことから、出演が決まったという経緯を語り、「(左近は)ミクさんの役を演じるので、同じ場面はないけれど、同じ場所に立つという意味では“共演”(笑)。眠れない日々が続いていると思います」とその心境を思いやった。また獅童の実子である中村陽喜、中村夏幹は、好きなものが“女形と立役”(陽喜)、男っぽいもの(夏幹)と異なるため、途中で2人の役を入れ替えたこと、またアクションスクールに通う夏幹が、いつの間にか綺麗なとんぼを返ることができるようになっていたことを話し、子供たちの成長ぶりに目を細めた。
会場には、学生の記者の姿も。獅童は、「歌舞伎は最初に観るものが肝心だなと思います。歌舞伎には、難しいものもあれば喜劇、踊り、そして現代の演出家さんが手がける新作といった演目がある。映画『国宝』の影響で若い人たちが歌舞伎を観に行っていると聞きますが、最初に難しいものを観て、歌舞伎を『退屈だな』『難しいな』と思われてしまうのが、すごく残念で。最初に観るべき演目をどうしたらお客様全員に伝えられるのか……今のところ僕が出ているものは全部面白いんですけど(笑)、1つひとつクリアしていくような感覚で、だんだんと難しいものを観ていってもらいたい」と言葉に力を込める。さらに、「古典歌舞伎の“良いところ取り”をしている『超歌舞伎』から始めて、一緒に年をとっていける芸術として、長い目で歌舞伎を楽しんでいただけたら。劇場はお客様と演者で作る空間です。夢のような空間で、ぜひ、我々と心と心のキャッチボールをしに来てください」とメッセージを送った。
松竹創業百三十周年「十二月大歌舞伎」は12月4日から26日まで歌舞伎座で行われる。
松竹創業百三十周年「十二月大歌舞伎」第一部
開催日程・会場
2025年12月4日(木)〜26日(金)
東京都 歌舞伎座
スタッフ
超歌舞伎Powered by IOWN「世界花結詞(せかいのはなむすぶことのは)」
脚本:松岡亮
演出・振付:藤間勘十郎
出演
超歌舞伎Powered by IOWN「世界花結詞(せかいのはなむすぶことのは)」
源朝臣頼光 / 袴垂保輔:
傾城七綾太夫実は将門息女七綾姫:初音ミク
渡辺綱奥方小夜風御前:中村時蔵
市原野の鬼童丸実は純友一子藤原元純:中村歌昇
頼光弟源頼信 / 卜部季武:中村種之助
初音姫実は白鷺の精霊:尾上左近
坂田公平丸:中村陽喜
碓井貞景丸:中村夏幹
平井保昌:澤村精四郎
伊予掾藤原純友の霊:市川青虎
蜘雲阿闍梨:市川猿弥
和泉屋女将おしき:市川門之助
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
関連記事
中村獅童のほかの記事
関連人物
甘栗@今年も劇場客席に生息中 @miso_amaguri
>中村歌昇が「理想の女性は初音ミクさん」と獅童に伝えたことから、出演が決まったという経緯を語り
ん?この後に続く役柄の話と総合すると、歌昇さんでなくて左近さんでは??? https://t.co/yutJ7k9WTM