第36回高松宮殿下記念世界文化賞の授賞式典が、本日10月22日に東京都内で行われた。
高松宮殿下記念世界文化賞は、世界の優れた芸術家に贈られる賞。式典には、絵画部門に選ばれたピーター・ドイグ、彫刻部門に選ばれたパフォーマンスアートのマリーナ・アブラモヴィッチ、建築部門に選ばれたエドゥアルド・ソウト・デ・モウラ、音楽部門に選ばれたピアニストのアンドラーシュ・シフ、そして演劇・映像部門に選ばれたローザスの芸術監督、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが出席し、顕彰メダルと賞金を授与された。
式典冒頭で上映された受賞者の紹介ムービーでは、ドゥ・ケースマイケルの経歴が紹介された。モーリス・ベジャールが創設した舞台芸術学校ムドラでバレエを学んだドゥ・ケースマイケルは、1983年にダンスカンパニー・ローザスを旗揚げ。日常的な動作を振付の起点とし、それを極限まで抽象化するスタイルで、音楽と身体の関係性を再構築する作風を確立した。1995年にはブリュッセルに舞台芸術学校P.A.R.T.S.を設立。ローザスの創設メンバーに池田扶美代がいることから日本とも縁が深く、2004年に細川俊夫のオペラ「班女 Hanjo」を演出したほか、来日公演も数多く行ってきた。またドゥ・ケースマイケルが23歳のときに発表した「ローザス・ダンス・ローザス」の振付をまねた動画が、YouTubeなどで多数公開されている。
紹介ムービーの中で、ドゥ・ケースマイケルは「ダンスは最も現代的な芸術。世界をどう見るか、思考や考察をどう表現するかが詰まっている。ダンスは人間性を祝福する行為だと思います」と思いを述べた。
ムービーでは、第28回若手芸術家奨励制度の対象団体に選ばれたナショナル・ユース・シアターの紹介も。同団体は、1956年にイギリス・ロンドンの学校教師たちによって設立され、青少年に演劇のトレーニングや上演機会を提供している。多様な生徒が共に演劇を学んでおり、過去にはダニエル・クレイグ、ヘレン・ミレンらを輩出した。ムービーには同団体のCEO兼芸術監督ポール・ローズビーが登場し、「今回の表彰を受け、日本とイギリスそれぞれの団体の協力が進むよう願っています。日本の団体とつながり、コラボレーションできればうれしい」と思いを語った。
式典では、本賞の国際顧問を務める元アメリカ合衆国の国務長官ヒラリー・ロダム・クリントンからのあいさつも。クリントン国際顧問は、7月に死去したアメリカの演出家・ビジュアルアーティスト・劇作家のロバート・ウィルソンが、2023年に本賞の演劇・映像部門を受賞したことに触れつつ、ウィルソンの「アーティストの仕事は時を超えて世に残る。アーティストは私たちが生きる時代のジャーナリストであり、我々を分断してしまう政治と宗教に対し、アートは私たちを結び付けるもの」という言葉を紹介。続けてクリントン国際顧問は「ロバート・ウィルソンが言ったように、アーティストとはジャーナリストであり、この時代に“人間である”ということを喚起してくれる存在。これこそ、私たちが今思い起こす必要があるものだと思います」と述べた。
また岸田文雄元内閣総理大臣も祝辞を述べた。岸田元首相は「地球規模の課題の解決に向け、世界的視座に立った取り組みが求められています。世界文化賞が国際理解を基本理念としながら、文化芸術の普及と発展へ寄与すると共に、受賞された皆様が引き続きご研鑽とご活躍を続けることで、国際社会との相互理解、他者との共感が促進され、世界平和の礎になっていけば」と期待を込めた。
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ダンスは人間性を祝福する、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルが高松宮殿下記念世界文化賞を受賞
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