いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」より。(撮影:堀川高志 / kutowans studio)

テンミニ!10分でハマる舞台

いいむろなおきがパントマイムで“走り続ける男”描く「走れ!走れ!!走れ!!!」

“言葉を使わない”んじゃなくて、“使う必要がない”

PRいいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」

兵庫県を拠点に活動するマイム俳優・いいむろなおきが、2017年の初演以来上演を重ねる人気作「走れ!走れ!!走れ!!!」を12月、東京・池袋で初披露する。“走り続ける男”を描く本作では、ファミリーも楽しめるようにと、言葉を用いず身体のみで、作品世界を立ち上げていく。

ステージナタリーでは本作の作・演出・振付を手がけるいいむろにインタビュー。朗らか、かつ真摯に質問に答えるその様子から、いいむろ作品が醸し出すじんわりとした味わいや温かみが、彼自身の人柄に由来するものなのだと伝わってきた。

取材・/ 熊井玲

“追いかけられる”様を楽しんで

「走れ!走れ!!走れ!!!」は、2017年の初演以来、たびたび上演を重ねているいいむろなおきマイムカンパニーの人気作。走り続ける男を軸にした物語を、言葉を介さず、身体だけで描き出す。本作立ち上げの背景についていいむろは、「もともと劇場からの依頼で、ファミリー向けの作品を作ろうということで生まれた作品です」と説明。

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」より。(撮影:堀川高志 / kutowans studio)

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さらに「パントマイムの魅力を打ち出すことで、小さい子供たちを含め、親子が楽しめる作品にできるんじゃないかということで、あまり難しくストーリーを構築していくものではなく、単純に“追いかけられる”ということが面白いんじゃないかというコンセプトで考えていきました。また僕はバスター・キートンが好きなのですが、彼の作品の中で、とにかくただただ追いかけられるという作品があって、それにもインスパイアされました。劇中には童話に出てくるようなキャラクターが出てくるんですけれども、たとえば浦島太郎や赤ずきんちゃん、シンデレラやうさぎとかめ、北風と太陽、サンタクロースなど、実にさまざま。上演を重ねる中で、伝わりにくいシーンはカットするなどブラッシュアップを重ねてはきましたが、結果的に我々の体力をかなり削る作品になりました(笑)」と話した。

初演以来、関西の劇場では幾度も上演されてきた本作だが、東京では今回が初となる。

「個人では関東で振付をしたり、関東での作品に関わることも多いのですが、コロナ禍以降、なかなかカンパニーで関東公演をすることが減っていたので、今回はとてもありがたい機会だなと思っています。先日会場であるとしま区民センターにも下見に行ったのですが、タッパ(高さ)もあり、思っていたよりずっと使いやすそうな空間で、僕たちが演出したい要素がそのまま実現できそうだなと安心しました」と話す。

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」より。(撮影:堀川高志 / kutowans studio)

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動きのスタイリッシュさ、カッコ良さはもちろん、作品から醸し出される温かみ、人間味がいいむろ作品の大きな魅力。それは、いいむろが自身を「マイム俳優」と名乗っている思いと、つながりがあるのではないか? そう尋ねると、いいむろは少し真面目な表情になって真摯に答えてくれた。

「日本では、パントマイムする人をなんて呼んだらいいかよくわからないところがあると思いますが、フランスでマイムをやってきた身としては、マイムという言葉自体がすでに“マイムをする人”という意味なんだけどな、と思います。なので僕は、あえて『マイム俳優』と言うようにしていて。『マイム俳優ってなんだろう?』っとちょっと引っ掛かりを感じてもらう形で、パントマイムの認知度を広げていけたらいいなと思っています。また、今は身体表現に対する興味が高まっていて、例えばカクカクとした動きや人間離れした不思議な動きに興味が集まりがちですが、なんてことない普通の動きの中に面白さや温かみ、ある種の無骨さや泥臭さのようなものが垣間見えると、お客さんにはより親近感を感じていただけるんじゃないかと思っていて。『走れ!走れ!!走れ!!!』では、そういった部分もぜひ楽しんでいただけたらと思っています」

“言葉を使わない”んじゃなくて、“使う必要がない”

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」チラシ

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」チラシ [拡大]

いいむろは、今年ロングラン13周年を迎えた京都発のノンバーバルシアター「ギア-GEAR-」の中心メンバーであるほか、マイムラボやワークショップを通じて、多くの俳優、パフォーマーたちに影響を与えてきた。演劇やダンスとは違う、パントマイムのカッコよさ、面白さを、いいむろ自身はどんなところにあると感じているのだろうか。

「マイムの面白さというのは、枠を決めない、ジャンルを問わない、ほかのジャンルとどんどん重なっていく面白さだと思うんですね。だから“言葉を使わない”んじゃなくて、“言葉を使う必要がない”し、観ているだけで心がおどりワクワクできる。それがマイムの面白さだと僕は思っています。その点で、今回上演する『走れ!走れ!!走れ!!!』は、単純明快に“追いかけられる”ことをテーマにしているので間口が広く入りやすいと思いますし、シンプルだからこそお客さんがどこを観るかを意識して、実は細やかに演出しているので、ご覧になる方に『これ、ちょっと面白いな。なんだかわからないけれど、奥深さを感じるな』と思っていただけたらうれしいです」。そう力強く語り、柔和な表情を見せた

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」公式サイト

いいむろなおきマイムカンパニー「走れ!走れ!!走れ!!!」

開催日程・会場

2025年12月19日(金)〜21日(日)
東京都 としま区民センター8F 多目的ホール

スタッフ

作・演出・振付:いいむろなおき

出演

いいむろなおき / 田中啓介 / 三浦求 / 羽田兎桃 / 橋本昌也 / 川島由衣 / ヒペ / さゆ~る / ROBI

※高校生以下割引あり。

公演・舞台情報

いいむろなおき(イイムロナオキ)

マイム俳優・演出家・振付家。いいむろなおきマイムカンパニー主宰。1991年に渡仏し、フランスのパリ市マルセル・マルソー国際マイム学院に入学。1994年に同学院を卒業後、フランスのニデルメイエ国立音楽院コンテンポラリーダンス科最上級クラス入学。翌年に首席卒業。1998年に拠点をフランスから日本に移し、いいむろなおきマイムカンパニーとして活動を開始。2003年に、同マイムカンパニーで集団マイム創作をスタートさせた。ノンンバーバルシアター「ギア-GEAR-」、東京2020パラリンピック開会式に出演。令和7年度兵庫県文化賞、尼崎市民芸術賞を受賞した。

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