dialogue+1は、演出家の
開幕に際し、詩森は「辛辣な設定でありながら、ふたりの女が手を携えて『精神の死』の淵から生還するシスターフッドの物語でもあります。だからわたしはこの物語が好きです。だからわたしはこの物語をこのふたりの俳優とやりたかったのだと思います。よくぞ出会えたね、という林田麻里と李千鶴という俳優ふたりは、はじめて会った役なのに仲良くなりすぎたり、かと思えばそれを用心しすぎてただの敵同士になったり、けして平坦ではない道を、皆で率直に言葉を交わすことで乗り越えてきました。最終通し、あの稽古場にあった、あの嘘のない瞬間を『最高の復讐』としてあなたに届けられますように」と語った。
上演時間は休憩なしの約2時間5分。公演は9月17日まで。詩森のコメント全文は以下の通り。
詩森ろばコメント
この戯曲の舞台となるワイト島はイギリスの最南端にあり、登場人物であるマデリンの言葉を借りると「ガーデニング」と「死」しかない島です。そして、「The Breath of Life」はそこに訪ねてくる流行作家でもあるフランシスとマデリンとの一昼夜の物語です。彼女たちはほぼ初対面であり、そこまでの人生はまったく交わっていません。ただひとつだけ。ひとりの男を長い時間共有していたことを除いては。ホストであるマデリンはその男の元愛人。そしてフランシスは元妻です。しかも今、彼はイギリスを去り、アメリカで新しい女性と暮らしているのです。ほんとうに、ウンザリするほど辛辣な設定です。
ふたりはマデリン曰く「向こう岸」のワイト島で、はじめて自分たちの男との記憶を持ちよります。出会い、生活、そのすべてを。ふたりはとうぜんながら深く傷つきますが、しかし、自分の心の深層部にも相手の心の奥底にも容赦なく分け入っていきます。
その戯曲に「The Breath of Life」、つまり「命の呼吸」というタイトルがついている。それは何故なのか。わたしたちの稽古場はこの問いに対して何かしらの答えを見つけようと奮闘する日々だったように思います。
作家デヴィッド・ヘアーは「もはや中年とは呼べないし、ましてや老年とも呼べない。その中間の何か…私はまさにその瞬間の二人の女性を描きたかった。彼女たちの背後には長い過去があるが、彼女たちの前には大きな未来への期待がある。」とこの戯曲について語っています。
大きな未来への期待!
わたしが読み解いたのもまさにそれでした。そう。だって、マデリンを追いかけて向こう岸に渡ったフランシスが向こう岸に渡ったままだったら、こんなタイトルがつくハズはないのです。なのに、この戯曲の扉には、「生きるとは復讐の夢を見ることである」というゴーギャンの言葉が書いてある。いったい何がしたいの。デヴィッド。
これは、この物語は、こんな辛辣な設定でありながら、ふたりの女が手を携えて「精神の死」の淵から生還するシスターフッドの物語でもあります。だからわたしはこの物語が好きです。だからわたしはこの物語をこのふたりの俳優とやりたかったのだと思います。よくぞ出会えたね、という林田麻里と李千鶴という俳優ふたりは、はじめて会った役なのに仲良くなりすぎたり、かと思えばそれを用心しすぎてただの敵同士になったり、けして平坦ではない道を、皆で率直に言葉を交わすことで乗り越えてきました。最終通し、あの稽古場にあった、あの嘘のない瞬間を「最高の復讐」としてあなたに届けられますように。ぜひ劇場にお出かけください。
詩森ろば
serial number presents dialogue+1「The Breath of Life」
2025年9月10日(水)〜17日(水)
東京都 OFF・OFFシアター
スタッフ
作:デヴィッド・ヘアー
演出:
翻訳:鴇澤麻由子
出演
※障害、U-25割引あり。
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