「朧の森に棲む鬼」松本幸四郎の“配役ボケ”に尾上松也がツッコミ「それは尾上右近！」

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」の上演を記念し、昨日11月14日に「《ゲキ×シネ》朧の森に棲む鬼」の舞台挨拶付き上映会が福岡のT・ジョイ博多で行われた。

中島かずきが作劇、いのうえひでのりが演出を担う「朧の森に棲む鬼」は、ウィリアム・シェイクスピア「リチャード三世」「マクベス」と、源頼光とその家臣・四天王が大江山に住む鬼神・酒呑童子を退治する「酒呑童子伝説」の世界を融合させた物語。上映会で公開されたのは、松本幸四郎（当時は七代目市川染五郎）が、主人公・ライを演じた2007年の初演版だ。なお、歌舞伎NEXT版は11・12月に東京・新橋演舞場、来年2月に福岡・博多座で上演され、幸四郎と尾上松也がWキャストでライを勤める。

上映終了後、会場の熱気が冷めやらない中、スクリーン前に幸四郎と松也が登場。観客からの拍手で迎えられ、幸四郎は「本日は、これだけたくさんの方々にお集まりいただき、本当にありがとうございます。17年の時が経ちましたが、歌舞伎NEXTとして、この作品に再会できていることを、私自身うれしく思っております。博多では、来年2月に上演しますので、ぜひとも楽しみにしていただきたいですね。（博多座公演まで）クリスマスがあり、年越しがあり、お正月もありますが、絶対に、絶対に忘れないでください！（笑）」と訴えかけた。

松也は「『《ゲキ×シネ》朧の森に棲む鬼』をご覧いただきまして、ありがとうございます。そうです。私は出ておりません！（笑） 当時私は、皆様と同じように観客として観ておりまして、今回歌舞伎NEXTで幸四郎さんと共に、ライをWキャストで演じられるなんて、こんなに光栄なことはございません。新橋演舞場公演を経て、我々は博多に戻ってきますから、今日ご覧いただいた熱量を劇場に持ってきていただければ」と呼びかけた。

司会から、見どころを問われると、幸四郎は「息子の（市川）染五郎が、『朧の森に棲む鬼』に初めて出させていただきます。染五郎は、初演では阿部サダヲさんがやられていたキンタ役ですが……」と真面目な顔でボケると、会場はざわつき、隣の松也も「違う違う、それは（尾上）右近です」と笑い交じりにツッコミを入れる。幸四郎は「ああ、染五郎の前の名前が（松本）金太郎だから、“キンタ“違いで間違えました（笑）。染五郎は、初演では真木よう子さんが演じられていたシュテンを演じます。女性の役だったのが、男の役に変わることが1つ大きな変化かなと」と語る。松也は「今回、幸四郎さんと僕は、ライとサダミツを回替わりで演じるんですけど、初演版で、小須田康人さん演じるサダミツが、キューちゃんという鳥を殺すときの顔が、僕は大好きで……」と述べ、その表情を実際に再現してみせると、観客たちはその再現度の高さに喜びの声を上げる。観客の反応に、松也は照れ笑いを浮かべながら「これは絶対にやりたいんですよね。そこを意識して観ていただけると（笑）」と述べた。

最後に集まった観客へのメッセージを求められると、まず松也は「2月の博多座公演に向けて、とにかく皆様に『何度も足を運びたい』と思っていただけるような、新たなエンタテインメントをお見せすべく、絶賛稽古中でございます。ぜひ2月の博多座公演には、お誘い合わせの上、最低でも2回は観に来ていただき（笑）、一緒に『朧の森に棲む鬼』を盛り上げていただきたいなと」と観客に笑顔を向けた。幸四郎は「今回、この大スクリーンで『朧の森に棲む鬼』をご覧になられたということで、歌舞伎NEXTの楽しみ方の引き出しが1つ増えたのではないでしょうか。ぜひとも見比べていただきたいですし、17年が経ちましたので、おそらく17倍面白くなっており、興奮していただけると思います。“歌舞伎NEXTここにあり”というものが、この博多で確立できるよう、一同1つになって博多に戻ってまいりますので、ぜひぜひご観劇いただきたい」と熱く語った。

舞台挨拶の終了後は、観客も含めた記念撮影が行われた。観客は、タイトルが入ったA4サイズの赤いボードを胸元にかざしながら、撮影に応じた。また幸四郎と松也は、9月に行われた「歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』」製作発表記者会見にて、招待されたオーディエンスとのやり取りから生まれた“鬼ポーズ”を披露し、撮影タイムを盛り上げた。

公演は11月30日から12月26日まで東京・新橋演舞場、来年2月4日から25日まで福岡・博多座で行われる。福岡公演のチケット販売は12月14日10:00にスタート。

なお、ステージナタリーでは歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」の特集を展開中。幸四郎と松也、そして中島、いのうえが、「朧の森に棲む鬼」の初演のエピソードや、今回の上演に向けた思いを語っている。