「デカローグ」の制作発表会見が昨日3月11日に東京・新国立劇場で行われ、翻訳の久山宏一、上演台本を手がけた
「デカローグ」は旧約聖書の十戒をモチーフに、ポーランド・ワルシャワのとある団地を舞台にした
まずは久山があいさつ。久山は「ちょうど36年前の今日になりますが、1988年の3月11日にポーランドでクシシュトフ・キェシロフスキ監督の『殺人に関する短いフィルム』が封切られました。当時ポーランドに留学していた私は、死刑制度に異議を表明する社会的作品であるこの作品を劇場で見て、その芸術性の高さに圧倒されました。『デカローグ』全編がテレビで初放送されたのはその2年後、1990年初夏のことです。『デカローグ』のシナリオ集が刊行され、私はたまたま立ち寄った書店でそれを見つけて購入し、シナリオと映像版を比較する幸福な機会を得ました」と作品との出会いを語る。そして当初、若手の監督が映画版を監督する予定だったが、キェシロフスキ自身で監督することになったこと、今回の上演は日本の若い才能ある人たちによって立ち上げられるという点で、「キェシロフスキのそもそもの意図の実現と言えるかもしれません」と期待を込めた。
上演台本を手がけた須貝は新国立劇場とイギリスのロイヤルコート劇場による共同プロジェクト「劇作家ワークショップ」に参加した際、本プロジェクトのオファーがあったと話し「コロナ禍だったこともあり、この作品に関わることが心の支えだった部分もあります。また劇作家ワークショップ自体も素晴らしい時間でしたが、そこからさらに次のプロジェクトにつながっていることに感動した覚えがあります。ただ実際に台本を書き始めてみたら作品数が多いこともあり大変で……(笑)。資料にあたるのも大変でしたし、映像のファンの方たちを失望させてはいけないという思いで試行錯誤がありました。でも小川さんと上村さんがどういう道筋でいきたいかを示してくださったので書けました」と語った。
小川は「4カ月にわたる大きなプロジェクトで、新国立劇場としても大きな挑戦になります。この規模だからこそ描ける、大きな大きな人間の物語をお客様にお届けできたら」と思いを語る。また本作は10年以上前から小川がいつか上演したいと思っていた作品だと言い、「キェシロフスキ監督は、意図的に登場人物たちをどこにでもいる人たち、我々の隣人または現代人の象徴として描いています。人間が存在することの根源的な肯定を描いた作品だと思うので、作品を通してそのことを皆様にお伝えできたら」と意気込みを述べた。
上村は「きっとお客様は、『あれ、このエピソードは小川と上村とどっちが演出してるんだろうな?』と思う状況になると思うんですけど……」と話し、場を和ませる。作品の魅力については「『デカローグ』の魅力は、過剰な演出や映像美ということではなく、キェシロフスキが見つめた人間の視点と奥行きのある映像だと思っています。そして何より物語力がある作品だと思います。人間の内面に肉薄していかないといけない作品だと思いますが、そういったことに取り組めるのはぜいたくなことだなと。表層的な面白さではなく、パフォーマーの内面をいかに際立たせられるかが楽しみです」と話した。
続けて各話に出演するキャストが出演への思いを述べた。「デカローグ1 ある運命に関する物語」では、大学教授のクシシュトフと息子、クシシュトフの姉を軸にした物語が展開する。クシシュトフを演じる
クシシュトフの姉・イレナを演じる高橋は、「今の時代だからこそ、この作品が胸に突き刺さったり、感じていただけることがたくさんあると思います」と見どころを述べた。
「デカローグ2 ある選択に関する物語」は、夫の死を前に愛人の子供を身籠ったバイオリニストのドロタと、同じアパートに住む医長の物語。ドロタ役の
医長役の
「デカローグ3 あるクリスマス・イヴに関する物語」では、イヴの晩に訪ねてきた元恋人のエヴァと、彼女の失踪した夫を探すことになったタクシー運転手ヤヌシュをめぐる物語が展開。ヤヌシュ役の
エヴァ役の
「デカローグ4 ある父と娘に関する物語」では仲良し親子である演劇大学生の娘アンカと父の物語が描かれる。父ミハウ役の
アンカ役の
「デカローグ5 ある殺人に関する物語」は、とあるきっかけで殺人の罪に問われているヤツェクと彼の弁護を担当することになった新人弁護士ピョトルをめぐる物語。ヤツェク役の
ピョトル役の
「デカローグ6 ある愛に関する物語」では、向かいのアパートに住むマグダと、彼女の生活を望遠鏡で覗き見している郵便局員トメクを軸とした物語が展開。マグダ役の
トメク役の
「デカローグ7 ある告白に関する物語」はある母子を軸にした物語が展開。娘のマイカには教師ヴォイテクとの間に生まれた6歳の娘アニャがおり、マイカの母エヴァはアニャを自分の娘として育てているのだった。マイカ役の
ヴォイテク役の
「デカローグ8 ある過去に関する物語」には大学教授のゾフィアとその隣人である切手コレクターの男性、そしてゾフィアの著作を英訳した大学教員エルジュビェタが登場。ゾフィア役を演じる
エルジュビェタ役の
切手コレクター役の
「デカローグ9 ある孤独に関する物語」には性的不能と宣言された外科医のロマンと彼の若い妻ハンカの物語が展開。ロマン役の
ハンカ役の
ハンカと不倫関係にある大学生マリウシュを演じるのは
そして最終話「デカローグ10 ある希望に関する物語」では、父の死によって久しぶりに再会した兄イェジと弟アルトゥルが描かれる。アルトゥル役の
イェジ役の
最後にあいさつしたのは、10編のエピソードすべてに出演する
公演は大きく3つのプログラムに分かれており、4月13日から5月6日までプログラムA・B(「デカローグ1~4」)、5月18日から6月2日までプログラムC(「デカローグ5・6」)、6月22日から7月15日まではプログラムD・E(「デカローグ7~10」)が上演される。
「デカローグ」プログラムA
2024年4月13日(土)〜5月6日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
原作:
翻訳:久山宏一
上演台本:
演出:
出演
「デカローグ1 ある運命に関する物語」
「デカローグ3 あるクリスマス・イヴに関する物語」
「デカローグ」プログラムB
2024年4月13日(土)〜5月6日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
上演台本:須貝英
演出:
出演
「デカローグ2 ある選択に関する物語」
「デカローグ4 ある父と娘に関する物語」
「デカローグ」プログラムC
2024年5月18日(土)〜6月2日(日) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
上演台本:須貝英
「デカローグ5 ある殺人に関する物語」
演出:小川絵梨子
「デカローグ6 ある愛に関する物語」
演出:上村聡史
出演
「デカローグ5 ある殺人に関する物語」
「デカローグ6 ある愛に関する物語」
「デカローグ」プログラムD
2024年6月22日(土)〜7月15日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:上村聡史
出演
「デカローグ7 ある告白に関する物語」
「デカローグ8 ある過去に関する物語」
「デカローグ」プログラムE
2024年6月22日(土)〜7月15日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場
スタッフ
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子
出演
「デカローグ9 ある孤独に関する物語」
「デカローグ10 ある希望に関する物語」
※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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章平(Shohei) @Shoheyhey_0428
僕のコメントも取り上げていただきありがとうございます。
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