この規模だからこそ描ける物語を、「デカローグ」制作会見に40名超のキャスト集う

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「デカローグ」の制作発表会見が昨日3月11日に東京・新国立劇場で行われ、翻訳の久山宏一、上演台本を手がけた須貝英、演出を担う新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子上村聡史をはじめ、各エピソードに出演する俳優たちが登壇した。

「デカローグ」の制作発表会見の様子。

「デカローグ」の制作発表会見の様子。

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「デカローグ」チラシビジュアル

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「デカローグ」は旧約聖書の十戒をモチーフに、ポーランド・ワルシャワのとある団地を舞台にしたクシシュトフ・キェシロフスキによる10編の連作集。今回は同作の舞台化となり、1・3・5・9・10話を小川、2・4・6・7・8話を上村が演出し、4カ月にわたって総勢40名以上のキャストにより作品を立ち上げる。

久山宏一

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まずは久山があいさつ。久山は「ちょうど36年前の今日になりますが、1988年の3月11日にポーランドでクシシュトフ・キェシロフスキ監督の『殺人に関する短いフィルム』が封切られました。当時ポーランドに留学していた私は、死刑制度に異議を表明する社会的作品であるこの作品を劇場で見て、その芸術性の高さに圧倒されました。『デカローグ』全編がテレビで初放送されたのはその2年後、1990年初夏のことです。『デカローグ』のシナリオ集が刊行され、私はたまたま立ち寄った書店でそれを見つけて購入し、シナリオと映像版を比較する幸福な機会を得ました」と作品との出会いを語る。そして当初、若手の監督が映画版を監督する予定だったが、キェシロフスキ自身で監督することになったこと、今回の上演は日本の若い才能ある人たちによって立ち上げられるという点で、「キェシロフスキのそもそもの意図の実現と言えるかもしれません」と期待を込めた。

須貝英

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上演台本を手がけた須貝は新国立劇場とイギリスのロイヤルコート劇場による共同プロジェクト「劇作家ワークショップ」に参加した際、本プロジェクトのオファーがあったと話し「コロナ禍だったこともあり、この作品に関わることが心の支えだった部分もあります。また劇作家ワークショップ自体も素晴らしい時間でしたが、そこからさらに次のプロジェクトにつながっていることに感動した覚えがあります。ただ実際に台本を書き始めてみたら作品数が多いこともあり大変で……(笑)。資料にあたるのも大変でしたし、映像のファンの方たちを失望させてはいけないという思いで試行錯誤がありました。でも小川さんと上村さんがどういう道筋でいきたいかを示してくださったので書けました」と語った。

小川絵梨子

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小川は「4カ月にわたる大きなプロジェクトで、新国立劇場としても大きな挑戦になります。この規模だからこそ描ける、大きな大きな人間の物語をお客様にお届けできたら」と思いを語る。また本作は10年以上前から小川がいつか上演したいと思っていた作品だと言い、「キェシロフスキ監督は、意図的に登場人物たちをどこにでもいる人たち、我々の隣人または現代人の象徴として描いています。人間が存在することの根源的な肯定を描いた作品だと思うので、作品を通してそのことを皆様にお伝えできたら」と意気込みを述べた。

上村聡史

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上村は「きっとお客様は、『あれ、このエピソードは小川と上村とどっちが演出してるんだろうな?』と思う状況になると思うんですけど……」と話し、場を和ませる。作品の魅力については「『デカローグ』の魅力は、過剰な演出や映像美ということではなく、キェシロフスキが見つめた人間の視点と奥行きのある映像だと思っています。そして何より物語力がある作品だと思います。人間の内面に肉薄していかないといけない作品だと思いますが、そういったことに取り組めるのはぜいたくなことだなと。表層的な面白さではなく、パフォーマーの内面をいかに際立たせられるかが楽しみです」と話した。

ノゾエ征爾

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続けて各話に出演するキャストが出演への思いを述べた。「デカローグ1 ある運命に関する物語」では、大学教授のクシシュトフと息子、クシシュトフの姉を軸にした物語が展開する。クシシュトフを演じるノゾエ征爾は「とある巨大な団地の中にいろいろな人がいるという作品ですが、まさに今日皆さんにお会いして、“演劇団地”にいるような感じがしました。まずはここに生きてなければなと。ごまかしが効かない、という思いがしました」と語った。

 

クシシュトフの姉・イレナを演じる高橋は、「今の時代だからこそ、この作品が胸に突き刺さったり、感じていただけることがたくさんあると思います」と見どころを述べた。

前田亜季

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「デカローグ2 ある選択に関する物語」は、夫の死を前に愛人の子供を身籠ったバイオリニストのドロタと、同じアパートに住む医長の物語。ドロタ役の前田亜季は「ドロタはある大きな選択を前に葛藤している女性で、それぞれの選択が影響し合い、どんな未来を獲得していくかという話かなと思っています」と作品の印象を述べる。

医長役の益岡徹は「大きな団地の中をちょっと覗いてみたらこうだった、という面白さが10編もある。この普遍さ!」と作品の魅力を語った。

千葉哲也

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「デカローグ3 あるクリスマス・イヴに関する物語」では、イヴの晩に訪ねてきた元恋人のエヴァと、彼女の失踪した夫を探すことになったタクシー運転手ヤヌシュをめぐる物語が展開。ヤヌシュ役の千葉哲也は「お互いが抱えている孤独を確認しあう話だと思って、今稽古に臨んでいます」と語った。

エヴァ役の小島聖は「演劇ならではの醍醐味がちりばめられた作品」と述べつつ「エネルギーをすごく使うみたいで毎日とってもしんどいです(笑)」と話した。

近藤芳正

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「デカローグ4 ある父と娘に関する物語」では仲良し親子である演劇大学生の娘アンカと父の物語が描かれる。父ミハウ役の近藤芳正は、「普通の親子よりも友達のような親子ですが、ある秘密が見つかりそれにどう対処していくかという話です」と説明。さらに「私は娘がいる父親の役をけっこういっぱいやっておりまして、なので娘役に関してはかなりパーフェクトだと思っていますので、期待していただけたら(笑)」と話し、会場を笑いで包んだ。

アンカ役の夏子は「まずは近藤さんをコンちゃんと呼べるようになるところからがんばります(笑)」と続け、「2人の親子関係がどう変わっていくか、繊細なところも楽しんでいただけたら」と話した。

福崎那由他

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「デカローグ5 ある殺人に関する物語」は、とあるきっかけで殺人の罪に問われているヤツェクと彼の弁護を担当することになった新人弁護士ピョトルをめぐる物語。ヤツェク役の福崎那由他は「本来知り合うはずもなかったヤツェクとピョトルが、殺人によって出会ってしまうという物語」と作品を紹介した。

ピョトル役の渋谷謙人は「劇中で死刑制度に触れていますが、それまで自分はしっかりとそういうことを考えたことがなくて。お客様にもぜひ関心を持っていただけたら」と話す。

仙名彩世

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「デカローグ6 ある愛に関する物語」では、向かいのアパートに住むマグダと、彼女の生活を望遠鏡で覗き見している郵便局員トメクを軸とした物語が展開。マグダ役の仙名彩世は「それぞれの登場人物の愛をじっくりと見つめていただけたらと思います」と作品への思いを語る。

トメク役の田中亨は「エピソードタイトルにもありますが、“愛に関する物語”として純粋に作品を楽しんでいただけたら」と観客にメッセージを送った。

吉田美月喜

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「デカローグ7 ある告白に関する物語」はある母子を軸にした物語が展開。娘のマイカには教師ヴォイテクとの間に生まれた6歳の娘アニャがおり、マイカの母エヴァはアニャを自分の娘として育てているのだった。マイカ役の吉田美月喜は「『デカローグ』観るね、と多くの方から声をかけていただいていて。この作品は、たくさんの人に愛されている作品なんだと実感しています」と話す。

ヴォイテク役の章平は「本当に壮大な企画に参加させていただけるのだと身が引き締まる思いです」、エヴァ役の津田真澄は「すごくストレスが多いので、稽古では笑って過ごすようにしています!」と話し、笑いが起きた。

高田聖子

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「デカローグ8 ある過去に関する物語」には大学教授のゾフィアとその隣人である切手コレクターの男性、そしてゾフィアの著作を英訳した大学教員エルジュビェタが登場。ゾフィア役を演じる高田聖子は「つらく重い過去を持つ者たちが数十年経ち、改めてその過去と向き合うというお話。細い緊張の糸がつながっていくような物語ではありますが、ファンタジーに包まれる物語でもあります」と作品の魅力を語る。

エルジュビェタ役の岡本玲は「今日皆さんのお話を聞いていて、10編に分かれてはいますがいろいろとつながるところがある作品だなと。全部のつながりを大事にしながら演じたいと思います」と意気込みを語った。

切手コレクター役の大滝寛は「倫理学の教授の過去を突き詰めていくサスペンスでありつつ、仕立て屋、ゴム人間、酔っ払いなどいろいろな人間が関わってきて(笑)、単なるハッピーエンドでは終わらない、人間のありようを見せるところが素敵だと思っています」と見どころを述べた。

伊達暁

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「デカローグ9 ある孤独に関する物語」には性的不能と宣言された外科医のロマンと彼の若い妻ハンカの物語が展開。ロマン役の伊達暁は「映像を見て、身体の機能の一部を失ってしまった男性のモヤモヤした思いを感じ取ることはできたのですが、舞台上でそれが現出できるのか。演出の小川さんと一緒に稽古で考えていきたい」と話す。

ハンカ役の万里紗は「パートナー同士が、相手の弱さを写し出してしまうという関係性で、滑稽でありながらリアリティもある。孤独や欲望が描かれた作品だと思うのでその思いに誠実に向き合っていきたいと思います」と真摯に述べた。

ハンカと不倫関係にある大学生マリウシュを演じるのは宮崎秋人。「話が進めば進むほどロマンが見ていられなくなるのですが、ロマンのことを考えるとこの役は演じられなくなってしまうので(笑)。ハンカをまっすぐに愛していけたら」と意気込みを述べた。

竪山隼太

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そして最終話「デカローグ10 ある希望に関する物語」では、父の死によって久しぶりに再会した兄イェジと弟アルトゥルが描かれる。アルトゥル役の竪山隼太は、場が持つエネルギーがあると言い「新国立劇場が持つエネルギーを感じつつ、アルトゥルが父親のフラットを訪れたときに感じたエネルギーを感じながら演じたいと思います」と力強く語った。

イェジ役の石母田史朗は「最初はまったく切手に興味なんてなかったのに、その切手が価値あるものだと知った途端、そこに固執していく様がすごく滑稽だなと思います。演出の小川さんはじめご一緒する方ばかりなので、現場で生まれるものを楽しみにしています」と語った。

亀田佳明

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最後にあいさつしたのは、10編のエピソードすべてに出演する亀田佳明。亀田は「……天使役、だそうなんですけど(笑)」と話し、会場を笑いで包む。続けて「よく知っている俳優さんも、これまで客席から観て素敵だなと思っていた俳優さんたちもいて、稽古期間も含めると5カ月にわたって皆さんに並走していけるのは何よりの楽しみです。先ほどノゾエさんが『ごまかしが効かない』とおっしゃいましたが、ごまかしのない表現を要求する演出家という点では、小川さんも上村さんもかなりしつこい2人。強度のある作品になるんじゃないかと思います。とにかく私は5カ月間病気をしないようにがんばります」と述べて会見を締めくくった。

公演は大きく3つのプログラムに分かれており、4月13日から5月6日までプログラムA・B(「デカローグ1~4」)、5月18日から6月2日までプログラムC(「デカローグ5・6」)、6月22日から7月15日まではプログラムD・E(「デカローグ7~10」)が上演される。

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「デカローグ」プログラムA

2024年4月13日(土)~2024年5月6日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場

スタッフ

原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子

出演

「デカローグ1 ある運命に関する物語」

ノゾエ征爾 / 高橋惠子 / チョウ・ヨンホ / 森川由樹 / 鈴木勝大 / 浅野令子 / 亀田佳明

「デカローグ3 あるクリスマス・イヴに関する物語」

千葉哲也 / 小島聖 / 浅野令子 / 鈴木勝大 / チョウ・ヨンホ / 森川由樹

「デカローグ」プログラムB

2024年4月13日(土)~2024年5月6日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場

スタッフ

原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
上演台本:須貝英
演出:上村聡史

出演

「デカローグ2 ある選択に関する物語」

前田亜季 / 益岡徹 / 坂本慶介 / 近藤隼 / 松田佳央理 / 亀田佳明

「デカローグ4 ある父と娘に関する物語」

近藤芳正 / 夏子 / 益岡徹 / 松田佳央理 / 坂本慶介 / 近藤隼 / 亀田佳明

「デカローグ」プログラムC

2024年5月18日(土)~2024年6月2日(日) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場

スタッフ

原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
上演台本:須貝英

「デカローグ5 ある殺人に関する物語」

演出:小川絵梨子

「デカローグ6 ある愛に関する物語」

演出:上村聡史

出演

「デカローグ5 ある殺人に関する物語」

福崎那由他 / 渋谷謙人 / 寺十吾 / 斉藤直樹 / 内田健介 / 名越志保 / 田中亨 / 亀田佳明

「デカローグ6 ある愛に関する物語」

仙名彩世 / 田中亨 / 寺十吾 / 名越志保 / 斉藤直樹 / 内田健介 / 亀田佳明

「デカローグ」プログラムD

2024年6月22日(土)~2024年7月15日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場

スタッフ

原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:上村聡史

出演

「デカローグ7 ある告白に関する物語」

吉田美月喜 / 章平 / 津田真澄 / 大滝寛 / 田中穂先 / 堀元宗一朗 / 笹野美由紀 / 伊海実紗 / 亀田佳明

「デカローグ8 ある過去に関する物語」

高田聖子 / 岡本玲 / 大滝寛 / 田中穂先 / 章平 / 堀元宗一朗 / 笹野美由紀 / 伊海実紗 / 亀田佳明

「デカローグ」プログラムE

2024年6月22日(土)~2024年7月15日(月) ※公演終了
東京都 新国立劇場 小劇場

スタッフ

原作:クシシュトフ・キェシロフスキ / クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子

出演

「デカローグ9 ある孤独に関する物語」

伊達暁 / 万里紗 / 宮崎秋人 / 笠井日向 / 鈴木将一朗 / 松本亮 / 石母田史朗 / 亀田佳明

「デカローグ10 ある希望に関する物語」

竪山隼太 / 石母田史朗 / 鈴木将一朗 / 松本亮 / 伊達暁 / 宮崎秋人 / 笠井日向 / 亀田佳明

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※初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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章平(Shohei) @Shoheyhey_0428

僕のコメントも取り上げていただきありがとうございます。
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