世田谷パブリックシアター2024年度ラインナップ発表会が本日2月19日に東京都内で開催され、芸術監督の
発表会ではまず白井が「私は2022年から芸術監督を務めていますが、2022年度と2023年度は前任者から引き継ぐ形でプログラムを推進してきた。2024年度のラインナップからは、最初の企画段階から設計しています。この間パンデミックも収束に向かい、舞台芸術を取り巻く環境、世界情勢は大きく変化した。『わたしは、この世界とどのように向き合うか』を今年度のテーマに活動していきたい」とコンセプトを語った。
パフォーマー・振付家の橋本が手がけるのは、古代ギリシャの哲学者プラトンの「饗宴」を題材とした「饗宴 / SYMPOSION」。本作は2021年初演「Pan」に端を発した作品となる。橋本は「プラトンの『饗宴』は、古代アテネの劇場で、知識階級の男性たちが愛についての演説を行う対話篇ですが、私はそういった特権を持つ人たちが語る愛や議論を批判的な目で見たい。もし2024年に東京で“饗宴”が行われるとしたら、どんな人がその場にいるべきか、どんな愛が語られるのか、そもそも今安全に語れる場所はあるのか、といったことを主軸にしました」と説明。また本作のキャストには池貝峻、唐沢絵美里、Chikako Takemoto、田中真夏、野坂弘、湯浅永麻、モーリー・ロバートソンらが名を連ねているが、橋本は「いわゆる“ダンサー”ではない、ジャーナリストやミュージシャン、マルチメディアアーティストなど、すでに表現の場を持っている人を意図的にキャスティングしました。それぞれが対等にこの場を“利用”する機会にできたら」と展望を語った。
野上は、自身の憧れの作家である
ノゾエは「世田谷パブリックシアターさんとは、高齢者施設や障害者施設をバン1台で回る『移動劇場 あっとホーム公演』を2010年からやらせていただいていますが、主催公演を担当するのは初めてで緊張しています(笑)」とあいさつ。ノゾエは白井からのリクエストで、カレル・チャペックの代表作「ロボット」を潤色・演出する。ノゾエは「本作のように、100年以上前からロボットが人間を凌駕する未来に警鐘を鳴らす作品が作られてきたにも関わらず、我々は今着実にその道に向かっている。ただ、僕は人間の愚かさを描きたいわけではないので、では“その先”は何だろう、本戯曲をどうやって現代的にしよう、と大きな課題を突きつけられた」と迷いを明かす。白井は「本作の最終章ではロボットが世界を支配していますが、そこではロボットが人間を奉る姿も描かれます。それが何を象徴しているのか? ノゾエさんがどう解釈されるかを楽しみにしています」と期待を口にした。
今年度のシアタートラム・ネクストジェネレーションには、32団体の中から、“異常で、日常で、シュール”を掲げる
桐山は、イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの2作品を同時上演する。2021年にKAAT神奈川芸術劇場プロデュースでリーディング公演として披露した「ポルノグラフィ」と、桐山がスティーヴンス作品の中で一番惹かれたという「レイジ」だ。「ポルノグラフィ」は、2005年に起きたロンドンの地下鉄・バス連続爆破テロ事件を題材に、人々の日常の断片を描く作品で、『レイジ』は、2015年のマンチェスターの大晦日の夜に、フォトジャーナリストであるジョエル・グッドマンが撮った作品シリーズをもとにした群像劇となる。桐山は「『ポルノグラフィ』はモノローグが多く、耳を澄ませて“聴く”作品ですが、『レイジ』は時は暴力的で無理やり”聞かされる”、対照的な2作品」と紹介する。「両作で描かれた、人々の孤立や断絶、暴力、不正が不正と認められない世の中は、一種の予言のようにも感じられる。2025年から先の世界がどうなっていくのかを考えながら作品を作りたい。2本で上演時間は3時間強。会場はシアタートラムですが、お尻が痛む心配をさせない面白い作品にします」と意気込んだ。
また白井は今年度、すでに情報が解禁されていた「Medicine メディスン」のほかに、
また2024年度も、海外から多彩なサーカスカンパニーやダンスカンパニーが来日する。カナダのマシーン・ドゥ・シルクによるシーソーを用いたアクロバティックなデュオ作品「ゴースト・ライト」、同じくカナダのル・グロ・オルテイユによる、1人の男性が次々に本の登場人物になりきる「図書館司書くん」、北欧のサーカス・シルクールが毛糸を取り入れた幻想的なパフォーマンスを見せる「ニッティング・ピース」、靴下が印象的な7人のパフォーマーがうごめくドイツのタンツマインツによる「PROMISE」が上演される。
そのほか世田谷パブリックシアターの公演事業としては、恒例企画となる「フリーステージ」「せたがや 夏いちらくご」「三茶 de 大道芸」「地域の物語」が開催される。また学芸事業として、演劇部がない学校に通う中学生が集まる”世田谷パブリックシアター中学生演劇部”、小学校の新1年生向けの新たなワークショップ、20・30代が“子どもを持つこと / 持たないこと”を考えるワークショップをはじめ、さまざまな企画や試みが行われる。
世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ
「フリーステージ2024」
音楽部門
2024年4月28日(日)
シアタートラム
世田谷クラシックバレエ連盟
2024年4月29日(月・祝)
世田谷パブリックシアター
ダンス部門
2024年5月4日(土・祝)~6日(月・振休)
世田谷パブリックシアター
「Medicine メディスン」
2024年5月6日(月・振休)~6月9日(日)
シアタートラム
作:エンダ・ウォルシュ
翻訳:小宮山智津子
演出:
出演:田中圭、奈緒、富山えり子 / 荒井康太
「饗宴 / SYMPOSION」
2024年7月初旬
世田谷パブリックシアター
演出・振付:
音楽:篠田ミル
出演:池貝峻、唐沢絵美里、Chikako Takemoto、田中真夏、野坂弘、湯浅永麻、モーリー・ロバートソン ほか
せたがやアートファーム 2024
「せたがや 夏いちらくご」
2024年7月21日(日)
世田谷パブリックシアター
プロデュース:春風亭一之輔
出演:春風亭一之輔 ほか
マシーン・ドゥ・シルク「ゴースト・ライト」
2024年7月下旬
世田谷パブリックシアター
作・演出:マキシム・ロレン、ユーゴ・ダリオ
出演:ギヨーム・ラルーシュ、マキシム・ロレン
音楽劇「空中ブランコのりのキキ」
2024年8月
世田谷パブリックシアター
原作:
構成・演出:
音楽:オオルタイチ
脚本:北川陽子
出演:咲妃みゆ、松岡広大 ほか
ル・グロ・オルテイユ「図書館司書くん」
2024年8月8日(木)~10日(土)
シアタートラム
構成・演出:マリー=エレーヌ・ダムール
出演:イポリット
「三茶 de 大道芸」
2024年10月
キャロットタワー周辺
「セツアンの善人」
2024年10・11月
世田谷パブリックシアター
作:
音楽:パウル・デッサウ
翻訳:酒寄進一(新訳)
上演台本・演出:白井晃
音楽監督:国広和毅
「ロボット」
2024年11・12月
シアタートラム
原作:カレル・チャペック「ロボット」(海山社 / 栗栖茜訳)
潤色・演出:
サーカス・シルクール「ニッティング・ピース」
2024年11月20日(水)~22日(金)
世田谷パブリックシアター
演出・コンセプト:ティルダ・ビョルフォス
作曲・サウンドデザイン:サミュエル・“ループトゥーク”・アンデション
出演:サーカス・シルクール
シアタートラム・ネクストジェネレーション vol.16 演劇 くによし組「ケレン・ヘラー」
2024年12月20日(金)~22日(日)
シアタートラム
作・演出:
サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」
2025年2・3月
シアタートラム
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志(「ポルノグラフィ」)、高田曜子(「レイジ」)
演出:桐山知也
※高田曜子の「高」ははしご高が正式表記。
タンツマインツ「PROMISE」
2025年3月
世田谷パブリックシアター
振付:シャロン・エイアル
出演:タンツマインツ
「地域の物語 2025」
2025年3月
シアタートラム
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