ヒントは“規制線”、「ポルノグラフィ / レイジ」に向け桐山知也・亀田佳明・saraが語る

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2月から3月まで東京・シアタートラムにて上演される、サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」に向けて、演出を手掛ける桐山知也と出演の亀田佳明saraの鼎談が10月末に東京都内で行われた。

サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」出演者(宣伝美術:秋澤一彰、宣伝写真:山崎伸康)

サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」出演者(宣伝美術:秋澤一彰、宣伝写真:山崎伸康)

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これはイギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの2作品を、第1幕「ポルノグラフィ」、第2幕「レイジ」という構成で同時上演するもの。「ポルノグラフィ」は、2005年に発生したイギリス・ロンドンの地下鉄・バス連続爆破テロ事件を題材に、人々の日常生活をオムニバス形式で描く作品で、「レイジ」は、2015年の大みそかの夜に、フォトジャーナリストであるジョエル・グッドマンが混沌とした都市の様子を撮影した作品シリーズをもとにした群像劇となる。

亀田佳明

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まず記者から、スティーヴンスの2作品を連続上演することになった経緯について問われると、桐山は過去のインタビューで語った通り、世田谷パブリックシアター芸術監督の白井晃と打ち合わせした際に「ポルノグラフィ」と「レイジ」が候補に挙がっていたこと、その2作を上演するアイデアはプロデューサーからの提案だったことを明かした。また2作を連続上演することについて、スティーヴンスから「これを企画したのは誰? すごい!」と言われたと話し、自身にとっても「『ポルノグラフィ』の登場人物たちの“こうあるかもしれない / こうあったかもしれない人生”が『レイジ』に描かれているような気もしますし、またその逆にも感じられるような気がしています」と2作品の印象を語った。

sara

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桐山の発言をうなずきながら聞いていたsaraは「ある意味、表裏一体のようなこの2作が、どういう風に1つの作品として立ち上がっていくのかというワクワクと、同じ役者が2作を演じ分けることをお客さんがどう受け止めてくれるのかという楽しみの両方があります」と笑顔で話す。亀田は、かつて「ポルノグラフィ」を観たことや台本を読んだことがあると言い「そのときは、作品の構造が印象的だなと感じましたが、今回改めて台本を読んでみたら、オリンピック開催地決定の歓喜と、テロの悲劇の間にいる人間たちの様子や生活感が詳細に描かれていて、作品から受ける印象が変わりました」と話す。また「レイジ」については「今回初めて作品に触れて、ストーリーや登場人物のエピソードに寄りかかることができない作品だなと。なので観てくださる方の想像力を拝借する作品になるのではと思いますが、ところどころに差し込まれる、作家の閃光のようなメッセージがすごく詩的で、強烈な印象を残すのではないかと感じています」と話した。

2作品をどのように立ち上げるのかという点については、チラシにもある黄色いライン、規制線がヒントになっていると桐山は話す。「“黄色い線の内側に下がっていなければいけない”、これは『ポルノグラフィ』の印象的なセリフなんですけど、リーディングのときからずっと僕の中で引っかかっていて。安全を考慮して“Mind the Gap”と言われているように感じますが、自分を守るため、傷つかないためにみんなが内側に籠っているようなイメージもある。この黄色いテープを劇中でうまく生かすことができたらと思っています」と続けた。

なお、「ポルノグラフィ」と「レイジ」はまったく別の作品のため、俳優たちは2作でそれぞれまったく別の役を演じる。しかしsaraは、「全然別の作品、別のキャラクターなのに、それぞれがそれぞれの役を背負っているように感じてしまう」と言い、亀田も「確かにお客さんは2作品の役につながりを求めながら見ると思いますね」とうなずく。さらに亀田は「この作品は遠い別の国の話ということではなく、日本でも同じような状況は起こり得るし、“(事件や事故の)当事者”になる可能性は常にあります。なので、どちらの作品、どちらの役にもそういった思いを持って臨まないといけないのかなと思っています」と話した。

サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」メインビジュアル(宣伝美術:秋澤一彰、宣伝写真:山崎伸康)

サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」メインビジュアル(宣伝美術:秋澤一彰、宣伝写真:山崎伸康)[拡大]

今回、桐山と亀田、saraは初めてのタッグとなる。亀田は「これまで桐山さんとお仕事されたことがある人たちから、桐山さんは対話しながら稽古場で作り上げていく方だと聞いていて。今回もいろいろ相談しながら作ることができそうだなと、楽しみにしています」、saraは「実は桐山さん、私の歌のライブや舞台を観に来てくださっていて、すでにいろいろな姿を見られているような気がしています……(笑)。今回ご一緒できるのがうれしいですし、桐山さんとこの作品をどのように立ち上げていけるのかすごく楽しみです」と思いを述べた。

そんな2人について桐山は「今回の台本はセリフが急に詩的になるところがあって、そういったときにお二人のご所属である文学座さんの“言葉を大事にする”という部分が生きてくるのでは、と期待しています」と笑顔を見せ、「saraさんはパワーもあって真っすぐで、周囲への気配りもされる方で……何より会話するのが面白いんです(笑)。亀田さんは、百戦錬磨の俳優さんですから、ぜひその経験を分けてもらいたいなと。稽古場では、僕が作るというよりはみんなで作っていきたいなと思っています。もちろん僕が先頭を走らなければいけない瞬間はあるとは思いますが、皆さんがやりたいこと、思っていることがうまくできたら良いなと思っています」とクリエーションに向けて思いを語った。

最後に、サイモン・スティーブンス作品に桐山が惹かれる理由を記者が問うと「サイモンさんの作品は、小さな世界を描きつつ、大きな世界に立ち会わせてくれる瞬間があり、独特のブラックユーモアがあって、そこにすごく惹かれます」と返答。「サイモンさんと実際に会ってお話ししたときにも、コラボレーションすることにすごく興味がある方なんだなと感じました。サイモンさんの作品はト書きがあまりなく、余白が多いんです。なのでシェイクスピアとか古典を読んでいる感じで、すごく自由になれる感覚があります。翻訳の小田島創志さんとお話ししたときに、『ポルノグラフィ』というタイトルには“すごくリアルに書かれてるけど、手が届かない”というイメージがあるんじゃないかというお話になったんですが、繊細にいろいろと書かれてはいるけれども、彼らの中には入っていけない、手は出せない、コミュニケーションできない……というようなイメージが、サイモンさんの作品にはあるのかなと。そういう点も含めて、サイモンさんは面白い作家だなと思っています」と、桐山はその魅力を楽しげに語った。

本作には亀田、saraのほか土井ケイト、岡本玲、田中亨、古谷陸、加茂智里、森永友基、斉藤淳、吉見一豊、竹下景子が出演する。公演は2月15日から3月2日まで東京・シアタートラムで行われ、チケットの一般販売は12月15日にスタート。なお一部公演の終演後にはポストトークが行われる。

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サイモン・スティーヴンス ダブルビル「ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE」

2025年2月15日(土)〜3月2日(日)
東京都 シアタートラム

スタッフ

作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志(「ポルノグラフィ」) / 髙田曜子(「レイジ」)
演出:桐山知也

出演

亀田佳明 / 土井ケイト / 岡本玲 / sara / 田中亨 / 古谷陸 / 加茂智里 / 森永友基 / 斉藤淳 / 吉見一豊 / 竹下景子
スウィング:伊藤わこ / 森永友基

※高校生以下チケットあり。

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薙野信喜 @nonchan_hg

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