中村扇雀・中村虎之介親子が初役で挑む「日本振袖始」は“歌舞伎鑑賞教室にふさわしい演目”

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令和5年6月歌舞伎鑑賞教室「日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―」が、6月2日から24日まで東京・国立劇場 大劇場で上演される。これに先駆け、出演者の中村扇雀中村虎之介の取材会が、昨日4月24日に東京都内で行われた。

左から中村虎之介、中村扇雀。

左から中村虎之介、中村扇雀。

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令和5年6月歌舞伎鑑賞教室「日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―」チラシ表

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歌舞伎鑑賞教室は、国立劇場で1967年から行われている、解説付きの歌舞伎公演。今回上演される「日本振袖始」は、近松門左衛門が手がけ、1718年に人形浄瑠璃として初演、同年に歌舞伎化された作品だ。1940年以来、歌舞伎公演としては上演されていなかったが、1971年に国立劇場で中村歌右衛門の主演で復活上演された。本公演では、扇雀が岩長姫実ハ八岐大蛇、その息子・虎之介が素戔嗚尊を、いずれも初役で勤める。

中村扇雀

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扇雀は、自身の父・坂田藤十郎が、近松作品を現代によみがえらせるという精神で1981年に近松座を結成し、近松作品を研究していたことに触れ「近松を長年追いかけ、坂田藤十郎と名乗った父の遺志を受け継ぐことは私の責務」と言葉に力を込める。「最初は、虎之介と『曾根崎心中』を原作通りにやるのはどうだろうと考えていたのですが、昔『女殺油地獄』を鑑賞教室でやろうとしたら『子供たちも観るので、殺人事件はだめなんです』と言われたのを思い出して。『テレビドラマではいつも殺人事件が起こっているのに』と思いつつ(笑)、『曾根崎心中』も心中ものなので、ふさわしくないかなと外しました。近松作品でほかに何か良い作品はないだろうかと考えていたところ、ふっと『日本振袖始』があるじゃないかと。虎之介にも聞いたところ、『日本振袖始』と言いましたので、両方で意見が一致しました。歌舞伎鑑賞教室にふさわしい演目かと」と話す。

中村虎之介

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虎之介は「父から『(どの作品にしたいか)一晩考えてね』と言われ、翌朝『日本振袖始』が良いのではと伝えようと思っていたら、先に父に『日本振袖始はどう?』と言われてしまいました。僕はちょうど、冷蔵庫を開けるときに言おうと思っていたんですけど……(笑)。意見が一致したということで、良い演目を選べたんじゃないかなと」と演目選定に自信を見せる。また「『日本振袖始』は、2014年に(坂東)玉三郎さんが八岐大蛇、(中村)勘九郎さんが素戔嗚尊をおやりになられた公演を拝見してから、ずっとやりたいなと思っていた演目ですので、鑑賞教室でできることはとてもうれしい」とコメントした。

虎之介は、演目の上演前に行われる解説パート「歌舞伎のみかた」にも解説役で登場する。本企画で解説を務めるのは4度目のことで、2013年に15歳で初めて解説したときのことを「あのときは僕も学生だったので、(観に来た学生たちと)同じテンションでできました」と振り返りつつ、「『歌舞伎のみかた』は、芝居に入る前のただの説明ではなく、1つの演目だと思っています。次の演目につながるような、良い解説にしたい」と語る。さらに「僕自身が解説をするのは4回目ですが、(解説を)実際に観客としても観たことも何度かありまして。なので、そのときの“お客様目線”や“学生目線“も生かし、今回はこれまでの総まとめとして、最新技術も用いた“スペクタクルエンタテインメント”にしたいですね」と意気込みを述べた。

左から中村扇雀、中村虎之介。

左から中村扇雀、中村虎之介。[拡大]

扇雀は歌舞伎鑑賞教室を「僕たち、歌舞伎を残していこうと思っている人間にとっては、とても大切な公演」と表現し、「作品自体、感動して涙が出るような内容ではありませんが、歌舞伎の醍醐味が非常にある演目。鑑賞教室を通し、若い子たちに、日本にはこんなに素敵な伝統芸能が残っているんだ、ということを肌で感じてもらいたい」と意欲を見せる。また「来年、近松の没後300年忌なんですよね。近松のものをこれからどんどん上演していくチャンスだなと思っています」と語った。

なお、国立劇場は10月末に建て替えのため一旦閉場する。扇雀は、国立劇場で三島由紀夫や宇野信夫、武智鉄二との出会いがあったことを明かし「歌舞伎は先輩から習うことが多いのですが、国立劇場では演出家の方にいろいろと教えていただいた思い出が強いですね」と話す。虎之介は「僕がプライベートで出会った『昔、歌舞伎を観たことがある』と言う人は、だいたい国立劇場の歌舞伎鑑賞教室で歌舞伎を観ていました。特に学生だと歌舞伎に触れる機会は少ないかと思いますが、歌舞伎鑑賞教室を通して、その人の思い出に歌舞伎が残っていくのは大事なこと。大切な劇場です」と述べた。本公演のチケットの一般販売は5月13日10:00にスタート。

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令和5年6月歌舞伎鑑賞教室「日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―」

2023年6月2日(金)~24日(土)
東京都 国立劇場 大劇場

解説「歌舞伎のみかた」

出演:中村虎之介

「日本振袖始―八岐大蛇と素戔嗚尊―」

作:近松門左衛門
脚色:戸部銀作

出演

岩長姫実ハ八岐大蛇:中村扇雀
稲田姫:中村鶴松
素戔嗚尊:中村虎之介
ほか

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読者の反応

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コスモス @tanaka1964_a

昨日国立劇場でちらしもらってきました!!
【会見レポート】中村扇雀・中村虎之介親子が初役で挑む「日本振袖始」は“歌舞伎鑑賞教室にふさわしい演目” https://t.co/TcvvWgWXv7

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