本作は、Kバレエカンパニー芸術監督・
第1幕では、海賊の首領コンラッドと、美しき少女メドーラの出会いが描かれる。海賊一行は、嵐に巻き込まれてギリシャの浜辺に漂着。コンラッドは自らの命を救ってくれたメドーラと恋に落ちるが、彼女とその姉妹グルナーラは奴隷商人に捕まり、奴隷市場に連れて行かれてしまう。コンラッドは従者アリらと共に、メドーラたちを奪い返すことを決意し……。
壮大な音楽と共に幕が開くと、宝の位置が印された古めかしい海図が紗幕いっぱいに映し出され、観客を「海賊」の世界へと誘う。紗幕の向こうでは海賊たちが漂流するまでの活躍が、回想のように演じられた。また、場面ごとに立ち上がる豪華絢爛な舞台セットや、登場人物1人ひとりの個性を際立たせる美しい衣装も、物語への没入感を高めていった。
公開ゲネプロでは、メドーラを成田、コンラッドを堀内、アリを山本が担当。成田は軽やかな舞にメドーラが持つ芯の強さをにじませる。石橋演じる奴隷商人ランケデムとのパ・ド・ドゥでは、売られる身となったメドーラの艶やかさを強調しつつ、表情やふとした仕草に悲壮感を浮かべ、役の内面を表現した。
堀内は、コンラッドを、海賊でありながら良識的で気品漂う人物として立ち上げる。メドーラたちを取り返そうと、仲間に訴えかけるシーンでは、伸びやかなダンスで、集団のまとめ役らしさを表した。高い身体能力で存在感を見せたのは、アリ役の山本。野生動物のようなダイナミックな所作で観客を魅了しつつ、心根の優しさやコンラッドへの忠誠心を雄弁に語った。
第2幕冒頭では、海賊の隠れ処を舞台に、自由の身となった女たちの喜びの舞や、海賊による迫力ある群舞が披露される。コンラッドと衣装を変えたメドーラ、そして幸せそうな2人を優しく見守るアリの3人舞は必見だ。コンラッドの部下ビルバントの裏切りにより、メドーラが再び奴隷の身となると、場面はメドーラが売られた先の宮殿に移り変わる。彼女を取り戻そうと現れたコンラッド一行が、剣を手に派手な立ち回りを見せると、コンラッドとビルバントが対峙するラストシーンへ突入。幸福感に溢れた前半と、緊張感が続く後半のコントラストにも注目したい。
開幕に際し、熊川は「海賊」がKバレエにとって約半年ぶりの活動再開作品となったことに触れ、「この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはずです。そのひとときを共にする観客の皆さんにも、この舞台が明日へと向かう大きな活力をもたらすものとなることを願っています」と観客にメッセージを送った。公演は10月18日まで。
なお、10月15日18:30開演回、17日12:30開演回、18日12:30開演回はStreaming+、PIA LIVE STREAM、ローチケ LIVE STREAMINGでライブ配信されるほか、18日には映画館でのライブビューイングも実施。また本作をもとに神戸万知が執筆した小説「海賊 Le Corsaire」が、10月28日に刊行される。併せてチェックしよう。
熊川哲也コメント
約半年におよぶ活動休止期間を経て、本公演「海賊」がKバレエ カンパニー再始動を飾ることになります。
社会全体が新しいスタイルへの転換を求められる今、劇場芸術の世界を生きる我々もまた、必要な変化に柔軟な発想をもって対応していかなければなりません。
2007年に初演したこの「海賊」は、僕がそれまでに手掛けたどの古典バレエよりもオリジナリティにあふれ、まさに他に類を見ない、「Kバレエの『海賊』」と誇れる作品と自負しています。
この作品が持つ力強さこそ、カンパニーが踏み出す新たな第一歩にふさわしく、かつてないほどのエネルギーと感動が劇場を満たすはずです。
そのひとときを共にする観客の皆さんにも、この舞台が明日へと向かう大きな活力をもたらすものとなることを願っています。
Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn 2020「海賊」
2020年10月15日(木)~18日(日)
東京都 Bunkamuraオーチャードホール
芸術監督:
指揮:井田勝大
管弦楽:シアター オーケストラ トーキョー
キャスト
メドーラ:
コンラッド:
アリ:
グルナーラ:
ランケデム:
ビルバント:
※高橋裕哉の「高」ははしご高が正式表記。
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Tadashi @Tadashi_777
【公演レポート】Kバレエが誘う美しき「海賊」の世界、熊川哲也「明日へと向かう大きな活力を」(コメントあり) https://t.co/RVHZ5ncdMi