中村米吉

中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第13回 [バックナンバー]

中村米吉の“ゆかりカワイイ”in浅草で、一緒に公演の成功祈願

八重垣姫の願いもかなう? 寄り添う1組のカワイイカップルも

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現在、東京・浅草公会堂で上演中の「新春浅草歌舞伎」で、「本朝廿四孝 十種香」の八重垣姫、「与話情浮名横櫛 源氏店」のお富といった大役に挑んでいる中村米吉。八重垣姫は女方の大役・三姫の1つで、「十種香」では死んだはずの許嫁・武田勝頼(の絵姿)にそっくりな男に一目ぼれしてしまう。米吉は、腰元の濡衣に「ねえねえお願い、私と彼をくっつけて!」とお願いしたり、実は本物だった勝頼に「好き好き」と言い寄る八重垣姫のお姫様らしい天真らんまんさを、「これだけ可愛かったら、多少のワガママも仕方がない」と観客を納得させてしまう、圧倒的な可愛さで表現。「源氏店」では雰囲気が一転、湯上がり姿で登場したお富を、しっとりとした色気をたたえながら演じる。お富が持っている手ぬぐいの柄にも注目だ。

このコラムは、“可愛すぎる女方”の名をほしいままにする米吉に、身の回りの“カワイイ”を紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果を生み出すことを目的としている。ご存じの通り、今年の「新春浅草歌舞伎」は、米吉にとってラストイヤー。公演に足を運んだあと、余韻を感じながら浅草の街も散策したい。今回米吉が紹介してくれるのは、浅草で見つけることのできる、自身と縁深い“カワイイ”。さらに八重垣姫や、1組のカワイイカップルも登場する。

題字:中村米吉

浅草の街には、米吉と縁深いものが…

ちょっと遅いですが、新年明けましておめでとうございます。
新年早々胸の痛む出来事が続きました。心よりお見舞い申し上げますと共に、1日も早い復旧復興を切に願っております。
こうした時に自分の無力さを痛感するものですが、きっと“カワイイ”が世界を救うこともあるのではないかと信じ、この連載も進めてまいりますので、今年もお付き合いのほどよろしくお願いいたします!

さあ、今年のスタートは4年ぶりの「新春浅草歌舞伎」!
年のハジマリの公演ながら、1つのオシマイでもあるのが今回の浅草歌舞伎。
約12年間いろいろな形で出演させていただいたこの公演ですが、私を含め7人のメンバーが今回で出演に一区切りつけることになりました。

さみしい!笑
大きな経験を積ませてもらっている舞台そのものはもちろん、みんなでヤイノヤイノと馬鹿話をしている楽屋での時間をも、1日1日愛おしみながら過ごしております。

浅草の街にいることも、愛おしむべき時間の1つです。
浅草は我が家とも縁深く、街の中には“歌六”、“米吉”と私たち親子の名前が刻まれたものがあるんです。

とは言っても、私たち親子ではなく、私からしたら3世代前、高祖父三代目歌六とその三男で三代目米吉を名乗られていた十七代目勘三郎のおじさまの名前です。

左は、三代目歌六&三代目米吉が奉納したお狐様。右は、その向かいに立つ、初代中村吉右衛門と米吉の曽祖父・三代目中村時蔵が奉納したお狐様。表情にも注目してみよう。

左は、三代目歌六&三代目米吉が奉納したお狐様。右は、その向かいに立つ、初代中村吉右衛門と米吉の曽祖父・三代目中村時蔵が奉納したお狐様。表情にも注目してみよう。

ここは、浅草神社裏手にある被官稲荷様という小さなお稲荷様。
立身出世のご利益があるとして、鳥居をくぐったところにある対のお狐様を奉納したのが高祖父・歌六一家なのです。

幼い頃から父に連れられ、浅草寺や浅草神社よりも優先してお詣りに行っていて、浅草歌舞伎に出るようになってからは度々お詣りして公演の成功と無事を祈ったものでした。

曽祖父たちの方はキリッとしたお狐様、高祖父たちの方はどことなく目元に色気がある気がします。
外のお狐様も子供がいたり、鍵を持っていたりそれぞれの可愛らしさと威厳がありますね。

被官稲荷神社を鳥居の外からりりしく守っている、お狐様たち。小さな子狐には、朱色の前掛けが。

被官稲荷神社を鳥居の外からりりしく守っている、お狐様たち。小さな子狐には、朱色の前掛けが。

お守りも可愛らしく、狐のお人形さんのお守り。
今月勤めている八重垣姫も、狐に縁があるお役ですから、楽屋にいらしていただきました。

白狐のお守りをじっと見つめる、カワイイ八重垣姫。

白狐のお守りをじっと見つめる、カワイイ八重垣姫。

いつの日か“狐火”の八重垣姫まで勤められますように!

そんなお稲荷様から公会堂への帰りがけ、新たな浅草のカワイイものを発見。

浅草神社の境内の片隅にあったこの夫婦狛犬。

カワイイカップルを発見した米吉。カワイイが3つ並んだ。

カワイイカップルを発見した米吉。カワイイが3つ並んだ。

普通は対になって参道にいるはずの狛犬さんが寄り添っています!
カワイイ! 本当に夫婦なのかしら?
ちなみに、尻尾はハートみたいな形になっていて、良縁や夫婦の関係にご利益があるかもしれないとのことでした。
浅草でのお芝居見物のお帰りにでも是非是非お詣りしてみてください。

いや、御見物の皆様より、出演者一同でお詣りした方がいいかも……。

だって、今年の浅草歌舞伎、演目中のカップルが全組波瀾万丈すぎるんですもの(笑)。

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。2022年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、2022年12月から昨年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、昨年3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」では、ヒロイン・ユウナ役を勤めた。現在、東京・浅草公会堂で上演中の「新春浅草歌舞伎」にて、第1部「本朝廿四孝 十種香」で三姫の1つ、八重垣姫、「与話情浮名横櫛 源氏店」で妾お富、「神楽諷雲井曲毬 どんつく」で芸者、第2部「新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎」で召使おなぎを勤めている。2月から3月にかけては、東京・新橋演舞場でのスーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」に兄橘姫 / 弟橘姫役で出演。

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@waka_rokusuke

歌六さんも新春浅草歌舞伎のパンフレットで仰ってましたね〜🦊✨
https://t.co/Bac7gwrtPM

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