7月リリースの最新アルバム「朝の迎え方」を携えたこのツアーは東名阪3会場で開催。新作の収録曲はもちろん、ライブではひさびさの披露となったレアな楽曲も交えたセットリストで各地のファンを楽しませた。
本気で思いっきり伝え合いたい
サポートメンバーの西野恵未(Key, Cho)、江渡大悟(G, Cho)とともにステージに登場したhockrockbは、アルバムでも1曲目を飾った「私のポラリス」でライブをスタート。軽快なリズムに乗せてフロアからハンドクラップが起こり、場内の一体感が高まっていく。落ちサビでは「満天の星を見上げながら」という歌詞に合わせて、堀胃あげは(Vo, G)がステージ上にきらめくミラーボールに目をやった。田中“そい”光(Dr)が「最後まで楽しめるかみんなー!」と叫んで大歓声を起こしたあとは「はるかぜ」「トビウオ愛記」と、hockrockbのポップネスが炸裂したナンバーを連投。場内にポジティブなムードをもたらした。
メランコリックな空気を漂わせる「星屑ワンルーム」を届けたのち、堀胃は「やっと会えましたね!」と、東京でのひさびさのライブを喜ぶ。そして「今日は遠慮してももったいないので本気で笑ったり泣いたり、日頃の鬱憤をぶつけたり……あっ、お客さん同士で揉めたりしたら困るんですけど(笑)。とにかく本気で思いっきり伝え合いたいと思っています」と、このステージに懸ける熱い思いを打ち明けた。
その後は不穏な音像が印象的な「ラビリンス」、堀胃が遊び心を含んだボーカリゼーションを聴かせた「つよがりアルマジロ」、西野のエレピのイントロから始まった「Rain Check」と、「朝の迎え方」の収録曲を続けて披露したhockrockb。「カナヅチ」では5人編成ならではの華やかなアンサンブルを響かせ、「プレゼント交換」ではみと(B)と田中が刻む優しくも力強いリズムが堀胃の歌声の切なさを増幅させた。
がむしゃらに自分たちの音を鳴らしていた路上時代
ここで西野と江渡が一度ステージを離れ、堀胃、みと、田中の3人だけでのパフォーマンスに移る。堀胃が「改めて3人の魂を受け取ってほしいです」と告げたあとで披露されたのは、2021年リリースの1stフルアルバム「骨格」の1曲目「エンドレスロール」だ。ヒリヒリとした質感に満ちたこの曲が3人の練度を増した演奏で届けられ、オーディエンスも思わず感嘆の声を漏らした。
田中はバンドの結成当初、この日の会場にほど近い渋谷駅前で何度も路上ライブを行っていたと振り返り「がむしゃらに自分たちの音を鳴らしていたなと。アルバム『朝の迎え方』にはそういう3人のグルーヴや経験を詰め込んでいます。なので、こうやって3人だけで演奏するゾーンを設けました」と話す。そして「もっとたくさんの人に聴いてもらいたいと思っているので、これからもよろしくお願いします」と、さらなる前進を誓った。
続いて披露されたのはインディーズ時代の楽曲「胎の蟲」。最近のライブではほぼ演奏されていない楽曲ということもあり、曲名を告げられた瞬間にフロアからは悲鳴混じりの歓声が起こった。堀胃の鮮烈なアコギのカッティング、3人が真剣勝負を繰り広げるかのような緊迫感に満ちたプレイに、観客は息を呑んで聴き入った。
田中のダイナミックなドラムソロから、ライブは再び西野と江渡を加えた5人編成でのパフォーマンスに戻る。「バタフライ」の間奏では堀胃と江渡がステージ前方に進み出てともにギターソロを奏で、「Driver」のイントロではみとが華麗なスラップベースを披露するなど、それぞれの見せ場も十分。「hanasaka」では堀胃がギターを下ろしてハンドマイクを握り、オーディエンスのハンドクラップに乗せてステージを行き来しながら軽やかな歌声を響かせた。本編最後を飾った曲はアルバムと同じく「はじまりの鍵」「ひとつだけ」の2曲。前向きな思いをファンに届け、メンバーはステージをあとにした。
音楽にはぐちゃぐちゃな感情も凌駕する力がある
アンコールで堀胃は「正直、ここに立つまで大変でして……いろいろな覚悟を持って立ちました。ふさぎ込んで誰とも話せない日が何日もあったけど」とこの日を迎えるまでの赤裸々な思いを吐露。しかし「みんなの楽しそうな顔を見て、音楽にはぐちゃぐちゃな感情も凌駕する力があると確信しました。ありがとうございます」と笑顔を見せた。みとは「結構真面目なことを言うと、みんなが私の人生を作ってくれていると思ってて、感謝してます。私たちの音楽もそういう存在だとうれしいです」と熱く語り、ファンだけでなく堀胃までも「みとは普段こんなこと言わないから泣きそう……」と感動させた。
田中はアルバム「朝の迎え方」の歌詞カードに登場する白い花・ハーデンベルギアの花言葉が「あなたに出会えてよかった」だと明かし、「あなたに会うために作った作品を、直接演奏することができてよかったです」とツアーを終える心境を語る。3人の充実した思いを表したアンコールの楽曲は「あなうめ」。軽やかに跳ねるサウンドでオーディエンスと気持ちを分かち合い、ツアーの幕を閉じた。
セットリスト
「hockrockb Tour 2025 "Dawn Chorus"」2025年11月3日 Spotify O-WEST
01. 私のポラリス
02. はるかぜ
03. トビウオ愛記
04. 星屑ワンルーム
05. リップシンク
06. ラビリンス
07. つよがりアルマジロ
08. Rain Check
09. カナヅチ
10. プレゼント交換
11. エンドレスロール
12. 胎の蟲
13. ムーンライトロマンス
14. バタフライ
15. Driver
16. Champon
17. hanasaka
18. はじまりの鍵
19. ひとつだけ
<アンコール>
20. あなうめ
関連人物
田中そい光(hockrockb) @tamagoyaki95
ライブレポ書いていただきました!
素敵な写真も見られるぞよ! https://t.co/bHPmMovIOG