今年2月に11枚目のアルバム「DETOX」をリリースしたONE OK ROCK。メキシコのフェス出演を含む南米ツアーや、バンド史上最大規模となった北米ツアーで各地を熱狂させてきた彼らは、国内ツアーで大分と北海道のドーム、神奈川と大阪のスタジアムを巡り、全7公演を実施した。なおONE OK ROCKが日産スタジアムでワンマンを行うのは結成20周年にして初めてのこと。この記念すべきステージを観るために真夏のスタジアムに約7万人のファンが駆けつけた。
「皆さんに一夜限りの勇気を与えたいと思います」
前作「Luxury Disease」から約2年半ぶりとなるアルバム「DETOX」。今作の制作は、Taka(Vo)が社会的テーマを盛り込んだ約40ページの本を作ったところから始まった。その背景は今回のライブのオープニングにも組み込まれており、会場のスクリーンに映し出されたのは、“神様”が世界の貧富をなくすために細菌を撒くというストーリーのアニメーション。ディストピアな世界観が描かれる中で、終わらない紛争やAIの進歩といった現代社会とリンクする場面も見られた。映像の終盤では「毒された思想に覆われた世の中を音楽の力で“DETOX”する」という今のONE OK ROCKが標榜するロックバンドとしての使命がナレーションを通して語られ、客席から大歓声が沸き起こる。その声に迎えられながら、メンバー4人がステージに登場。最新アルバムの収録曲「Puppets Can't Control You」でライブの口火を切った。そこから「Save Yourself」「Make It Out Alive」と一気に3曲を畳みかけたのち、Takaは「空を見上げてみてください。この四角く広がった青空は今宵は全部僕たちのものです。ここにすべてのパワーと、すべての光と、すべての希望を宿して僕らはステージの上から皆さんに一夜限りの勇気を与えたいと思います!」と高らかに宣言し、パフォーマンスを続行した。
アルバム「DETOX」を軸にしつつ、過去の楽曲も織り交ぜたライブ序盤。ONE OK ROCKはサビで特大のシンガロングが巻き起こる「Cry out」、ヘヴィなバンドサウンドを叩きつける「NASTY」で観客を圧倒し、世界レベルの実力を証明していく。Tomoya(Dr)は会場に集まったファンに感謝の気持ちを伝え、「7万人ってどういうこと!?って感じなんですけど、ここから見えている景色は本当に美しいです」と目を細め、Ryota(B)は「俺ら今年ずっとライブしてて、1人ひとり完全に仕上がってます。仕上がりすぎってくらい仕上がってます!」と自信に満ちた表情を浮かべる。Toru(G)は「日産スタジアム! 2025年、20周年にしてやっとできました。ありがとうございます。夏の思い出を作って帰りましょう。よろしく!」と挨拶した。
Takaによる「昔からONE OK ROCKを知ってくれている人たちが懐かしい曲を」という前振りから披露されたのは「Living Dolls」。2008年に発表されたこの曲を彼らは会場の1人ひとりに届けるように丁寧に奏でた。その後、Toruがつま弾くラテン風のギターイントロからアグレッシブな展開を見せる「Party's Over」で場内の空気は一変。4人はそのまま壮大なサウンドスケープを描くロックバラード「Tiny Pieces」へとつなぎ、多彩な表現力でオーディエンスを魅了した。
すっかり日が沈み暗くなったスタジアムで、Takaは「後ろのほうの皆さんは僕らの歌と演奏は届いてますか? 大丈夫ですか?」と客席に呼びかけ、観客をいったん座らせる。MCでは、自身も制作に参加したNetflixシリーズ「グラスハート」に触れ、劇中バンド・TENBLANKで佐藤健が演じるボーカルと自分が似ていると冗談を飛ばして会場を笑わせた。またこの日の公演を佐藤が観に来ていることを明かすと、「今度対バンしましょう(笑)」と呼びかけ、ファンを沸かせるひと幕もあった。その後はTakaが祖母に向けて作ったという「This Can't Be Us」でパフォーマンスが再開。サポートメンバーのGakushi(Pf)が加わり、会場にしっとりとした旋律を響かせる。ひさびさの披露となった「All Mine」に続き、全編ピアノアレンジが施された「Renegades」ではTakaの力強いボーカルがより際立ち、その美しい歌声に7万人のオーディエンスがじっくりと聴き入った。
ぶつかり合う個性×個性×個性
Toru、Ryota、Tomoyaによるスキルフルな演奏が光るインストを挟み、会場のスタンド席に突如現れたのは、上半身裸姿のDAIDAI(G /
その後Takaは、ONE OK ROCKのライブは日頃の鬱憤やストレスを発散できる場であってほしいと語り、次に披露する曲について「今の混沌とした世の中を乗り越えていきたいという思いで作った曲です。無理して歌う必要はないし、これが正解だとも思っていません。いろんな考え方があっていいし、俺はそれを尊重します。でももし心の中に溜まっているものがあるなら、次の曲で思いきりぶち撒けてください」と呼びかけた。こうして演奏された「Delusion:All」では、その言葉に応えるように温かなシンガロングが会場全体にこだました。「さあ飛ばしていこうぜ、日産スタジアム!」という煽りから「Dystopia」でライブはラストスパートへ。「Tropical Therapy」では観客との熱いコール&レスポンスが交わされた。
アルバムに込めた“裏のテーマ”
残り1曲となったところでTakaは「DETOX」に込めたという“裏のテーマ”について語り始めた。彼は今の世の中について思うところがあるようで、「だからこそこんなに強いアルバムになったし、俺たちも覚悟を決めて最後まで作り上げました」と切り出し、自らの人生を振り返った。彼は自分自身も含めてさまざまなことを許せない人生だったそうだが、バンドを組み、ファンに出会ったことで、強い感情に囚われすぎると大切なことを見失う瞬間があることに気付かされたという。さらにTakaは「今の世の中には許すという気持ちを忘れてしまった人たちが多すぎる」と言い、許せない気持ちの連鎖が今の混沌とした世の中を作っているのではないかと訴えた。「人間っていうのは許せないという気持ちを強く持ち続けると、いつかその人自身が誰かに許されない人間になってしまう。それを俺らの音楽を聴いている皆さんにはわかってほしいなと思いました」とアルバムに込めた裏のテーマを明かした。
続いてTakaは「この混沌として、人間の弱さ、未熟さが露呈しまくっている世の中では、俺が今言ったことは綺麗事に聞こえるかもしれない。でも、自分のエゴを一番に優先して、大事なものを忘れて、人の気持ちを踏みにじって、戦争したり、傷付けたりする……そんな合理的なバカ野郎どもより俺はよっぽどマシだと思う」と言葉を強め、最後は「皆さんたちの未来がこのアルバムを聴いて、より明るいものになってほしいなと切実に思って作りました。今日、皆さんがここに来てくれたこと、心より感謝します。そして僕らの魂の叫びを、皆さんが少しでもキャッチしてくれることを切に願っています。明日から皆さんはまた“戦場”に戻ります。でも忘れないでください。ONE OK ROCKはいつもここにいます。明日からがんばりましょう」と観客にメッセージを伝えた。この日一番の拍手を浴びたONE OK ROCKはラストに「The Pilot </3」をストリングス隊とともにプレイ。メンバーたちは互いに視線を合わせながら演奏を続け、最後はギターのフィードバックノイズが響き渡る中、ステージをあとにした。
アンコールを求める拍手と大合唱に応え、再びステージへ登場したONE OK ROCKは「Stand Out Fit In」「+Matter」を立て続けに披露。ジャンプやクラップを誘い、観客を心地よく揺さぶる。そしてフィナーレを飾ったのはバンドと7万人による「We are」の大合唱。打ち上がった無数の花火とともに、2時間半に及んだステージは華やかに幕を閉じた。
セットリスト
「ONE OK ROCK DETOX JAPAN TOUR 2025」2025年8月30日 日産スタジアム
01. Puppets Can't Control You
02. Save Yourself
03. Make It Out Alive
04. Cry out
05. NASTY
06. Living Dolls
07. Party's Over
08. Tiny Pieces
09. This Can't Be Us
10. All Mine
11. Renegades
12. Instrumental
13. C.U.R.I.O.S.I.T.Y. feat. Paledusk and CHICO CARLITO
14. One by One
15. The Beginning
16. Delusion:All
17. Dystopia
18. Tropical Therapy
19. The Pilot </3
<アンコール>
20. Stand Out Fit In
21. +Matter
22. We are
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