所属事務所が同じ、さらに以前は所属レーベルも同じだった氣志團とフジファブリック。普段から交流のある先輩・後輩の間柄とあり、この日のライブは随所にお互いへのリスペクトを感じさせるものとなった。
ライブは先攻のフジファブリックのステージからスタート。強烈なバックライトに照らされ、舞台上のみならず会場全体が白い光に包まれる中、「STAR」のイントロに続き山内総一郎(Vo, G)が伸びやかで真っ直ぐな歌声を響かせると、観客からは早くも歓声が沸く。さらに2曲目「スワン」では、金澤ダイスケ(Key)の弾むようなキーボードと加藤慎一(B)の動きのあるベースラインが、場内に高揚感を生む。フジファブリックらしいダンサブルなナンバーの連投で、AXは即座に彼らの色に染め上げられた。
この日は、サポートの刄田綴色(Dr / 東京事変)を含むメンバー全員が紺色のブレザーに灰色のパンツという制服姿で登場したフジファブリック。山内にいたっては黒ブチのメガネまでかけており、「僕たち、氣志團の皆さんの後輩キャラということで、今日はブレザーなんか着ちゃったりして」と照れくさそうにその意図を告白。ファンから喝采を浴びていた。
続くパートでは、金澤の跳ねるシンセのバッキングと加藤のグルーヴィなベースで高速ビートを奏でる「Splash!!」、山内の切ない歌声が耳に残るバラード「ECHO」と、多彩な楽曲を披露し、バンドの多面性を感じさせる。
また、山内が「僕らと氣志團の皆さんのつながりは、氣志團の3人が志村くんのバイト先の先輩だったことです」と改めて両バンドの関係性を説明するMCに続き、「去年やった『フジフジ富士Q』に出てくれはって、「ダンス2000」と「茜色の夕日」をやってくれたんですけど、それが本当に素晴らしくてなんとか僕らも恩返しできないかとずっと思ってた」と話す。「だから今日は内緒なんですけど、カバーをやろうと思って!」と明かすと、観客も声援でそれに応えた。
「こんなひ弱な僕たちがどうやって氣志團さんの曲をやろうかと……人数も少ないし……だからいろんなKISSESに相談して決めました」というエピソードに続いて鳴らされたのは、2003年にリリースされたアルバム「BOY'S COLOR」の収録曲「一番星」だ。フジファブリックはこの曲を、序盤はミドルテンポで演奏し始め、中盤からBPMを上げきらびやかなダンスナンバーに変貌させる。確かな演奏力を持つ4人ならではのアレンジで、双方のバンドのファンを楽しませた。
そして「君は炎天下」では刄田の刻むマーチのリズムに乗って金澤がシンセでバグパイプのような音色を奏で、ハイハットを使ったカウントから鳴らされた「アンダルシア」ではチップチューンのようなシンセの響きが楽しげな雰囲気を生む。フジファブリックは、その力強い演奏でオーディエンスに笑顔をプレゼントし、自分たちもうれしそうな表情を浮かべて満足げにステージを下りていった。
次の氣志團のライブは、オープニングナレーションからSE「BE MY BABY」で開始。「ゴッド・スピード・ユー!」では西園寺瞳(G)と星グランマニエ(G)が交互に耳をつんざくギターフレーズを弾き、「キラキラ!」では綾小路翔(Vo)と早乙女光(Dance & Scream)が着用していた白手袋をフロアに投げ入れる。氣志團のメンバーはこの日も始めからハイテンションで、派手なステージングをみせていった。
最初のMCで「会いたかったぜー!」と叫ぶも、返ってきた歓声を聞いて「思ったよりも反響がなかったぜ!」と話す團長。「これで今日の状態がわかったぜ!」と半ば自虐的なコメントを口にしつつ、「俺たちのいいところは、あきらめない」ところだと説明。「今日ここに集まった全員と、両思いになってみせるぜ!」と決め台詞を口にし、KISSESから拍手を浴びた。
白鳥雪之丞(Dr)の甲高い声によるカウントから始まった「Baby Baby Baby」に続き、「恋人」ではキュートなサウンドにぴったりのかわいらしい振り付けで、会場全体が一体になり踊る。また「♪スキ? キライ?」の掛け合いで團長と光がキスを交わし、さらにアウトロで光が段ボールでできた“メカドッグ”に乗り登場するなど、バラエティ豊かな演出でフジファブリックファンをも笑わせる。
そして團長が「メジャーデビュー10周年を迎えて、せっかくのアニバーサリーイヤーに何ができるかなと考えて始めたのが、この対バンシリーズです」とライブの主旨を説明する。加えて対バン相手について、すごいメンツばっかりだと言い、「俺達が『かわいいなー』って言ってた奴らが、いつの間にか怖い奴らになってる! 今日のフジファブリックのことですよ!!」と独特の表現で後輩の成長を讃えていた。また、現在全国ツアー中にもかかわらず、この対バンのために東京に戻ってきてくれたフジファブリックに対し「彼らの忙しさをわかってるので……感謝です」と言い、深々と頭を下げると、オーディエンスからはあたたかい拍手が起こった。
後半は怒濤の“ヤンクロック”ナンバーを立て続けに演奏した氣志團。「俺達には土曜日しかない」では、この対バンシリーズを経てさまざまな要素が取り入れられた振り付けを力いっぱい披露。さらに「行こうぜ、Periodの向こうへ」という決めゼリフに続いて、黒子2人に支えられた團長による“シンバルキック”が炸裂すると、大きな笑いが会場を包み、それを合図に「One Night Carnival」が始まる。
恒例となったブレイク後のMCでは、当然フジファブリックのメンバーが餌食に。会場にいる全員がサビを歌ってくれないと「総くんの家のポストにひどく弱った鳩を2羽入れるぞ! 今日も総くんは家に帰ってポストを開けるだろう、そうしたら『なんやねん! 鳩や!』ってびっくりするだろう」と山内のモノマネをしつつトークを進める。「鳩が死んでしまったらひどく繊細な総くんはもう音楽ができなくなるだろう、あの魔法のようなギターが弾けなくなる、コードも3つぐらいしかわからなくなる、その影響でダイちゃんもストレートパーマになっちゃう!」と金澤の髪型もネタにしつつ、「10年前にリリースした『One Night Carnival』にはちゃんと志村正彦のバックコーラスも入ってるんだぞ!」とフジファブリックファンにアピール。最終的に、「銀河」の特徴的なフレーズ「♪タッタッタッ タラッタラッタッタッ」も織り交ぜた大きな合唱が響きわたった。
アンコールの声を受け、まずは氣志團の6人がステージに現れる。團長が、アンコールへのお礼を述べつつ「元々の縁は正彦と俺達が同じライブハウス兼スタジオで働いていて」と言い、志村の面接をしたのが当時店長を務めていたトミーだったこと、フジファブリックの表記が全部カタカナになったのは團長の提案によるものだったこと、同じレーベルに所属することになったのは氣志團のライブを観にきていた当時のレーベルスタッフがたまたまステージに上がった志村に惚れ込んだのがきっかけだったことなど、親交の深かった間柄ならではのエピソードを口にする。さらに「正彦がどっか行っちゃったから今のうちにつぶしておこうかと思ったら全然そんなことできないぐらい(ビッグ)になってて(笑)」とフジファブリックに再び賛辞を贈り、「せっかくなんで一緒にやろうと思います」とメンバーを呼び込んだ。
ステージ上にずらっと揃った10人は全員、マンガ家の久保ミツロウによる似顔絵をあしらったTシャツ姿。山内は開口一番「鳩はやめてください!」と團長に訴えるも、「今回はだいじょうぶ、みんな歌ってくれたから。“今回”は!」との返事に苦笑する。続けて團長は「ちなみに言っとくけどダイちゃんの実家押さえてるからね!」と、なぜか金澤の実父と非常に仲が良いという事実を明かし、観客を笑わせた。
そして演奏されたのは「若者のすべて」ならぬ團長がボーカルをとる「“三人の若者と六人のおじさんのすべて”」。先輩と後輩の絆を感じさせる熱いプレイに、フロアからはこの日一番の歓声と拍手が沸き起こる。ステージ上の10人は誰もが楽しげな顔で、3時間を超える対バンを名残り惜しむかのように演奏していた。
氣志團 Presents 極東ロックンロール・ハイスクール
~おれがあいつであいつがおれで~ 氣志團 vs DJ OZMA
2011年12月21日(水)東京都 Zepp Tokyo
OPEN 18:00 / START 19:00
12.21お台場決戦!生中継「氣志團 vs DJ OZMA」
氣志團メイジャーデビュー10周年特番 ~おれがあいつであいつがおれで~
WOWOW 2011年12月21日(水)19:00~
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