このライブは2002年9月にリリースされた曽我部のソロデビューアルバム「曽我部恵一」の発売20周年を記念して行われたもの。アルバムの収録曲が曲順通りに弾き語りで演奏された。
曽我部恵一 コメント
「20年後の世界」
いつもライブ映像を撮ってくれている誌村くんが楽屋で、「今月、ファーストからちょうど20年ですよ」と言う。ぼくは「へえ!そうなんだ~」と返した。でも、本当のことを言うと、20周年ということに特に感慨はなかったのだけど。
「全曲、やりましょうよ」彼はそう言うのだった。リハを終えて、今日のセットリストも既に決まっている。「いやいや」と笑ってごまかすが、彼はもう一度言う。全曲やりましょうよ、と。今日を逃したらソカさんもうやらないでしょう、と。ぼくは「え~~」なんてヘラヘラ笑っていたが、まあ彼が主張することももっともで、ぼくはこの先このアルバムを全曲通して歌うなんてことはしないだろうな、と思った。
このアルバムは自分に初めて家族ができたそのドキュメンタリーでもあった。バンドを一時解散し、結婚して子どもが生まれ、夫として父親として家族の一員として歩み始めた自分のささやかな記録であった。そしてその結婚生活はいつの間にか終わっていて、当時夢見ていた人生の色合いもぼくの中ですっかり褪色してしまった。でもそこにはまだ甘い残り香が漂っていて、その場所にぼくは戻りたいと思っていなかった。振り返って眺めてみたいとも。そんなふうな心当たりが、たしかに自分にあった。
「やろっか」とぼくは言って、楽屋で大急ぎで練習し始めた。もう何年も思い出してもいない曲が、たくさんあった。自分がひとりで音楽をやってみようと決意して、初めて取り組んだのがここに収められた曲たちで、いろんなスタイルを試行錯誤しながら結局はシンプルな世界観に落ち着いたのだった。現在と違って、一曲を形にするのがひと苦労だったことなどを、練習していて思い出した。
照れ臭いような、びびってるような感じで、このライブは始まる。辿り着いたのが、とても穏やかな場所だったので、やって良かったと思った。誌村くんがアルバムの発売日をひと月間違えていたのが判明するのは、それからしばらく経ってからである。
曽我部恵一 @sokabekeiichi
おはようございます。
ファーストアルバム再演ライブ、予想を超えるたくさんの方に見ていただき、驚き感謝しています。
数十人のお客さんの前でプレイした親密な時間がこうして広がって行くこと、とても不思議です。
https://t.co/OqXIQX4UVS https://t.co/efYtdw6kLK