ASIAN KUNG-FU GENERATION特集|結成30周年に「MUSIC inn Fujieda」で鳴らす“いい音”、この時代に歌うべきこと

1996年に結成され、今年30周年迎えるASIAN KUNG-FU GENERATION。結成以来、彼らが活動休止もメンバーチェンジもなく、ロックバンドとして第一線をひた走り続けていることは、多くのリスナーが知るところだろう。そんなアジカンがこの春、2つの作品をリリースする。第1弾が後藤正文(Vo, G)が創設者となり静岡県藤枝市に設立した音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」でレコーディングが行われた「フジエダ EP」。第2弾が4月3日に先行配信され、5月27日にニューシングルとしてリリースが決定している、テレビアニメ「Dr.STONE SCIENCE FUTURE」最終シーズン第3クールオープニングテーマ「スキンズ」だ。

4月4、5日に東京・有明アリーナでの周年ライブ「ASIAN KUNG-FU GENERATION 30th Anniversary Special Concert "Thirty Revolutions"」を控える中、音楽ナタリーではメンバーにインタビュー。この時代に、どんな音を鳴らし、何を歌おうとしているのか。4人に聞いた。

取材・文 / 金子厚武撮影 / 笹原清明

この男は本当にやりきった

──ナタリーでは「『MUSIC inn Fujieda』ができるまで~ゴッチのスタジオ設立奮闘記~」 として、約1年半に渡って連載を行いました。ゴッチさん以外のメンバーの皆さんは、スタジオの設立過程をどのように見ていた、もしくは関わっていたのでしょうか?

喜多建介(G, Vo) 静岡でスタジオを作りたいっていう話はけっこう前から聞いてて。一昨年の我々のツアーでクラウドファンディングの宣伝をしたり、寄付金を募ったりしつつ、「何か手伝えることあるかな?」みたいな話はメンバー間でもずっとしてました。スタジオには去年の暮れに初めて行ったんですけど、これまでの過程はSNSやnoteで見てたので、すごく感動的でしたよ。この男は本当にやりきったんだなと。

喜多建介(G, Vo)

喜多建介(G, Vo)

後藤正文(Vo, G) ありがとうございます。俺だけでやったわけじゃないけど。

喜多 そうだね。アジカンのファンの方もはじめ、いろんな人の思いが乗ったスタジオだなと思って。

後藤 みんなでやるとこんなにすごいことになるんだ、というのがわかるよね。

伊地知潔(Dr) クラファンが始まったときにゴッチに「僕たちもクラファン参加しようか?」と伝えたら、「いや、イベントとか、ほかで関わってくれたほうがうれしい」って言うから僕はクラファンには参加しなかったんです。そうしたら、最近ゴッチがいろんなところで、「潔だけまだ何もしてくれてない」と言ってて(笑)。今後何を協力しようかなって、考えてる段階なんですけど。

伊地知潔(Dr)

伊地知潔(Dr)

後藤 建さんは林檎酢会員として毎月1000円の寄付をしてくれてます。鮪(谷口鮪 / KANA-BOON)はもうちょっと大口だけど、建さんは1000円。

喜多 金額言わないで(笑)。

──(笑)。潔さんはすでにName the Night(伊地知が所属する別バンド)のレコーディングを予約したそうですね。

伊地知 はい。スタジオの布教活動はやりたいと思ってます。実際にレコーディングをして、どれだけ素晴らしいスタジオかというのは実感してるので。特にドラムを録る環境としては、あの金額であそこまでのクオリティを出せるスタジオは都内には本当にないので、これは素晴らしいなと。いろんな人に今勧めてますね。

山田貴洋(B, Vo) 自分たちは20年以上前にメジャーレーベルから作品を出すことになり、メジャーのスタジオでのレコーディングを経験して、今はプリプロができる自分たちのスタジオもある。すごくありがたいことだけど、それは誰しもが経験できることじゃない。ゴッチはそのことがずっと頭の片隅にあったから、スタジオを設立したと思うんです。実際にスタジオを作るというのは並大抵のことではなかったでしょうけど、いざスタジオに行ってみるとすごくジーンと来たし、素敵なスタジオだなと思いました。

山田貴洋(B, Vo)

山田貴洋(B, Vo)

──歴史ある土蔵を改装したスタジオで、決して広々としたスペースがあるわけじゃないけど、天井が高くて、隅々まで工夫を施した、素敵なスタジオですよね。

山田 ドラムを録ったときに、「これは音がいいな」と素直に感じたので、ミュージシャンの方は本当に使ってみてほしいです。まだ正式オープン前だから、これから徐々に味わいが出てくると思うし、たくさんの人が使いたがるスタジオになるんだろうなと(※取材は2月下旬に実施)。

音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」の様子。(撮影:臼杵成晃)

音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」の様子。(撮影:臼杵成晃)

音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」コントロールルームの様子。(撮影:臼杵成晃)

音楽スタジオ「MUSIC inn Fujieda」コントロールルームの様子。(撮影:臼杵成晃)

アジカンが証明した“いい音”

──そんなスタジオでの最初のレコーディングをアジカンで行って、「フジエダ EP」という作品になりました。スタジオの運営側でもあるゴッチさんからすると、「アジカンに使ってもらった」ということにもなるわけですよね。

後藤 誘致ですね。本当に。満額払っていただいて、経営的にとても助かりました。テストレコーディングは誰かがやらなきゃいけないことではあったんですけど、みんなのおかげでいい音が録れることが証明できて、エンジニア一同ホッとしました。

後藤正文(Vo, G)

後藤正文(Vo, G)

──ゴッチさんがずっとこだわっていたのがドラムの音。改めて、潔さんはどう感じましたか?

伊地知 ドラムは太鼓に直接立てるオンマイクと、スタジオ自体が鳴ってる音を録るルームマイクがあって、それがうまく混ざるとめちゃくちゃいい音になるんです。中でもルームの音がものすごく大事で。ただ響けばいいわけではなく、高音ばっかり響くとシャカシャカうるさい音になってしまうし、低音が回ってしまうと、ローがすごく強いサウンドになっちゃう。それがあのスタジオだと、木と梁の影響もあるんでしょうけど、すごくいい、温かい鳴りで。古賀(健一 / レコーディングエンジニア)くんがそういう音になることを想定しながら、マイクとかも先にセットしてくれました。天井の梁にもマイクが付いてるんですよ。

──見えない部分にも工夫があるわけですよね。

伊地知 どういうふうに音が反射するかをちゃんと計算して設計してることが、このEPを録ったときによくわかりました。ここにローがあるから、と壁にマイクを向けたりするのは古賀くんじゃないとできない。なので、これからスタジオを使ういろんな方に情報共有するために、取扱説明書みたいなのがあるといいのかなと思いました。

──喜多さんと山田さんはスタジオを使ってみてどう感じましたか?

喜多 アットホームな雰囲気で、すごく気持ちよくやれたというのが正直な感想です。ギターは基本的にはブースの中にアンプを入れて、曲によって扉の開け閉めをしたくらいですけど、やっぱり木の材質が関係してるのか、ギターもすごくいい音で録れるスタジオだなと思いました。

──BOSSのコンパクトエフェクターが使い放題というのもいいですよね。

喜多 実際に今回のEPではBOSSをけっこう使ったんですよ。自分が持ってないものをいろいろ試して、ギターシンセサイザーを「ナンプラー日和」で使ったり。

山田 ベースはいつもの感じでキャビネットを爆音で鳴らすと音漏れしちゃうので、ただアンプで鳴らしてローの成分を録るだけじゃない、いろんな発想で録り方を工夫しましたね。ペダルもいろいろ試せるし、いろんな可能性があるスタジオなんじゃないかな。

後藤 とにかくいい音で録れたので安心しましたけど、来てくれたみんなが過ごしやすそうで、それもすごくいいなと。静岡と東京だと時間の流れ方がちょっと違うような気がするし、集まってる人たちも面白い人たち、ポップな人たちしかいないから、場がよくなってるというかね。昔、山中湖とかで合宿したことがあって、それはそれですごく集中できるけど、音楽以外に逃げ場がない環境でもあるんですよ。藤枝はもう少しリラックスできる。気晴らしで散歩できるところもたくさんあるし、お茶を飲みに行ってもいいし。自然の中にある合宿スタジオとはまた違った角度でいいなと思いましたね。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

ASIAN KUNG-FU GENERATION

──皆さんもスタジオの周りを散策されましたか?

喜多 蓮華寺池公園に行ったり、おいしいお蕎麦屋さんを聞いて、そこに行きました。

後藤 「八兵衛」ね。岸田(繁 / くるり)くんも唸ってた。

伊地知 僕は後藤家の原付を借りまして。

後藤 俺のお父さんから原付をもらって、スタジオに寄付しました。

伊地知 それで1時間くらい走り回ったんですけど、スタジオから10分くらいのところに「さわやか」(静岡のローカルハンバーグレストランとして有名。藤枝築地店)があるんですよ。そこはあまり並ばずに入れるのでオススメですね。