このさいたまスーパーアリーナ公演は、2020年3月に全国ツアー「サバイブホームランツアー」の一環として開催予定だった公演。新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年6月の振替公演も再延期が決定し、2021年4月10、11日にタイトルを「ブレイクホームランツアー」と改めて開催された。ここでは4月10日公演の模様をレポートする。
椎木知仁(G, Vo)、山本大樹(B, Cho)、山田淳(Dr)がステージに登場し、いつものように拳をぶつけ合う。「『ブレイクホームランツアー』さいたまスーパーアリーナ1日目、新潟県上越My Hair is Bad始めます! ドキドキしようぜ!」という椎木の高らかな挨拶から、バンドはオープニングナンバー「アフターアワー」の演奏へ。序盤から熱量の高いパフォーマンスを繰り広げて一気にオーディンエンスのテンションを引き上げた。3人は熱量を保ったまま「熱狂を終え」「ドラマみたいだ」をプレイし、観客はバンドの勢いに呼応するように力強くハンズアップした。MCでは椎木が本公演が延期になった経緯を説明し、来場者に感謝を伝える。続けて「ロックバンドがどれだけ優しくて、どれだけ危なくて、どれだけ不安定で、どれだけ儚いか、きちんと全部見せられたらいいなと思っています」と意気込んだ。
安定感のあるどっしりとしたビートに情感たっぷりの歌声が重なる「君が海」でライブは再開。椎木による弾き語りで始まる「卒業」からは、先刻の彼の言葉をなぞるように儚さや優しさ、不安定さが感じられるようなミディアムバラードが奏でられるブロックへ。「オリンピック中止」「ソーシャルディスタンス」など時事的なワードが歌詞に並ぶ、昨年12月にリリースされた配信シングル「love」の収録曲「予感」では、椎木がエモーショナルな歌声を響かせて観客を魅了。そしてバンドは柔らかな歌い出しが印象的な「幻」を披露し、場内をより一層しっとりと切ない雰囲気で包み込んだ。
中盤ではメンバーがユルく言葉を交わし、場内はリラックスムードに。山本から誕生日プレゼントとしてロボット掃除機のルンバをもらったという椎木は、ルンバに“ウナちゃん”と名前を付けてかわいがっていることを明かして観客の笑いを誘った。そしてバンドが人気曲「真赤」を演奏すると、MCの際とは一転して会場の空気がピンと張り詰める。会場中が真赤なライトで照らされた中、3人はアグレッシブなパフォーマンスを披露した。ダークな世界観の「ワーカーインザダークネス」では、3人が一際歪んだサウンドを轟かせて客席の熱気を上昇させる。椎木が語りかけるように歌い、観客を圧倒したのは「フロムナウオン」。彼はアドリブで「歳をとって、いろんなことを知ったらもう戻れないと思ってるでしょ? いつだって戻れる。あの少年を、あの少女を叩き起こせ。また何度だって戻れる。それが自由だ。俺らはフリー」と言葉を紡ぎ、現在の思いやバンドのモードをファンに伝えた。
椎木が「このバンド史上、もっとも最低な春。この4分間だけ2020年の5月に戻れますように」と述べたあとに奏でられたのは、「love」と対になる最新シングル「life」の収録曲「白春夢」。3人は続けて「love」の収録曲「味方」をプレイしてバンドの最新のモードを打ち出した。椎木は「13年前にバンドを組んだ日にはさいたまスーパーアリーナでワンマンできる日が来るとは思っていなかったです。皆さんのおかげであり、チームのおかげであり、支えてくれる人のおかげであり、そして僕らのおかげであり、いろんなものがつながって、2021年4月10日にこういう空気の中でこういう音が出せて本当によかったと思ってます。誰かがちょっとでも前向きになったり喜んでくれたりする瞬間があるのであれば本当にやってた甲斐があったなと思うし、そういうバンドでいたい。なんか真面目になっちゃったね。その……元気出してほしいなっ!ってこと。みんな元気で、できるだけ幸せでいてください」と語った。そしてバンドはストレートなバンドサウンドの「告白」「夏が過ぎてく」を晴れやかな表情で届けてステージをあとにした。
アンコールでは椎木が「この春が終わる前に」と前置きをして、この時期にぴったりな「惜春」を披露。間奏では椎木が「忘れない1日になりますように」と観客に優しく語りかけた。続けて3人はピースフルな「いつか結婚しても」で場内をあたたかなムードで満たし、最後にショートチューン「クリサンセマム」をパワフルに演奏してライブを終えた。
My Hair is Bad「ブレイクホームランツアー」2021年4月10日 さいたまスーパーアリーナセットリスト
01. アフターアワー
02. 熱狂を終え
03. ドラマみたいだ
04. 虜
05. 君が海
06. 18歳よ
07. 卒業
08. 予感
09. 幻
10. グッド・バッド・バイ
11. 真赤
12. ワーカーインザダークネス
13. 戦争を知らない大人たち
14. ディアウェンディ
15. フロムナウオン
16. 芝居
17. 白春夢
18. 味方
19. 宿り
20. 告白
21. 夏が過ぎてく
<アンコール>
22. 惜春
23. いつか結婚しても
24. クリサンセマム
※記事初出時、本文中の曲名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
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【ライブレポート公開⚾️ナタリー】
自由なMy Hair is Badがロックバンドの魅力を見せつけた1年越したまアリ公演(写真32枚) https://t.co/WNy9r0vMoj