マイベストトラック2024 Vol.2 [バックナンバー]
シンガーソングライター編
アイナ・ジ・エンド、岸本ゆめの、澤部渡(スカート)、寺尾紗穂、友成空、槇原敬之が選ぶ2024年の3曲
2025年1月28日 19:00 40
寺尾紗穂
高山燦基「壜」
余白があり、詩情を表現する術に長けている。バンドのアンサンブルは完成されているのだが、それを一つずつ剥がしていったときに、歌に強さが備わっていくような気もして、次作が楽しみ。「終わることない話をしよう まだ日々はつづく」と歌うこの曲は、喪失を乗り越えようとする人にぜひ届いてほしい1曲。
SADFRANK「肌色」
声の危うさが強みとなっている。弾き語りもクセになる魅力があるが、音源の完成度も高い。「朝日も夕焼けも 見分けがつかなくなって どれくらい経ったのだろう」というたよりない浮遊感と死の気配、かすかな優しさと希望。加藤さんの声が、ナイフで切り付けられた傷のようにも、さびしいナイフそのもののようにも思われた。
Delkhii「Human」
モンゴルの民族楽器や歌の奏法を織り交ぜながらフォーク、ポップス、エスノエレクトロニカなど横断的なあり方を模索し、幅広い曲想でクラブシーンでも活躍するモンゴルのユニットDelkhiiの3枚目のアルバム。弦楽器トフシュールと口琴を用いた声が前面にでて風格がある「Human」はアルバムのタイトル曲。ロック調の「Uukhai」は、国境を越え声を合わせて歌いたくなる1曲だ。
<プロフィール>
寺尾紗穂(テラオサホ)
2007年にアルバム「御身」でデビュー。NHKのドキュメンタリー「Dear にっぽん」のテーマ曲に選ばれた「魔法みたいに」は教育芸術社の教科書「高校生の音楽1」に掲載された。最新作は2024年発表のアルバム「しゅー・しゃいん」。同作は2022年発表の「余白のメロディ」に続いて「ミュージック・マガジン」年間ベストの日本のロック部門の10枚に選出された。
友成空
星野源「光の跡」
原口沙輔「イガク」
HALLEY「From Dusk Till Dawn」
2024年は、自分の楽曲が初めてさまざまなチャートに登場した特別な年だったので、例年以上に流行に敏感になりながら音楽を聴いていました。だからこそ、今年の僕はJ-POPを「情報収集」のような感覚で聴いてしまって、以前のように心から音楽を「感じる」ことが難しい瞬間もありました。そんな中で、今回挙げた3曲は、2024年の僕に「やっぱり音楽は自由で、心から楽しめるものだ」と改めて気付かせてくれた楽曲たちです。
「光の跡」は、星野源さんの作品の中で一番のお気に入りになった曲です。この世界で生きていたいと思わせてくれるような歌詞を紡ぐ星野さんを、心から尊敬しています。
「イガク」は、数年前からその才能に半ば嫉妬しつつも追いかけていた原口沙輔さんの作品で、久々に「新しい音楽」の衝撃を受けました。自由でありながら、極めて緻密に作り込まれたサウンドが、音楽の面白さを再認識させてくれました。
「From Dusk Till Dawn」は、ブラックミュージックの文脈を感じる日本のポップバンド・HALLEYの1stアルバム表題曲です。彼らの音楽が大好きで、ライブにも足を運んでいます。この曲は、世界に認められるべき傑作だと思います。
<プロフィール>
友成空(トモナリソラ)
小学4年生の頃から独学で楽曲制作を行い、2021年3月に5曲入り音源「18」でシンガーソングライターとしての活動を本格的に開始。2023年12月にcutting edgeからメジャーデビューした。2024年1月に発表された「鬼ノ宴」はストリーミングでの総再生数1億回以上を記録している。
- 友成空(TOMONARI SORA)Official Web Site
- 友成空 (TOMONARI SORA) (@tomonarisora) | Instagram
- 友成空 (TOMONARI SORA) (@TomonariSora) | X
槇原敬之
岡村和義「サメと人魚」
2024年の僕的ナンバーワンソングでした。2020年からずっと色々な音楽を聴いて過ごしてきて、素晴らしい音楽、特に新しいアーティストたちの曲には、そのクオリティに驚かされるばかりだったのですが、ラジオから流れてきた瞬間に、「ああ、僕の好きな音楽って、こういう音楽だったよな」ってはっきりと思えたのがこの曲でした。深海に引き摺り込まれていきそうな耽美な世界、堪りません!
松任谷由実「心のまま」
ここ数年、色々なコンサートを拝見させていただきました。その中で一番インパクトが強かったのが、松任谷由実さんのアリーナツアー「The Journey」でした。
ユーミンがなぜ、シンガーソングライターとしてあの大きな舞台で歌っているのかというのを、(勝手にですが)テレパシックに感じることができて、改めて、自分も同じシンガーソングライターという仕事をしていることに、誇りを持てた瞬間でした。
そのコンサートのセットリストをとにかくよく聴いたので、今年よく聴いた曲の1つに挙げさせていただきました。
研ナオコ「糸」
12月の夜、車でたまたま、この曲が入った「今日からあなたと… Starting today, with you」という55周年を記念して作られたアルバムを聴く機会がありました。中島みゆきさんの「糸」という歌は、色々な歌手の方がカバーするほど愛されている曲ではあるのですが、研ナオコさんの歌声で綴られるこの歌に思わず涙し、「歌ってテクニックだけでは推し量れないんだな」と感じたとともに、アレンジ・Mixともにとても素晴らしく、街の景色が違って見えるほどでした。「糸」という歌の良さも改めて感じることができました。
年の瀬だったので再生回数は少ないですが、これはぜひ、2024年の僕の思い出の1曲として挙げさせていただきたいです。
<プロフィール>
槇原敬之(マキハラノリユキ)
1990年にデビューし、1991年に3rdシングル「どんなときも。」がミリオンセラーを記録。その後も「冬がはじまるよ」「もう恋なんてしない」「僕が一番欲しかったもの」など数々のヒット曲を発表してきた。SMAPの「世界に一つだけの花」など、他アーティストへの楽曲提供も多数手がけている。
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