優里

優里が年間総合1位を獲得!Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン

一気にスターダムを駆け上がったニューカマーから、さらなる躍進を遂げたポップスターまで

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J-POPを代表するユニットに成長したYOASOBI

YOASOBI

YOASOBI

──YOASOBIはトップ10に3曲入りました。この3曲に限らず、年間を通じてコンスタントに楽曲がウィークリーチャートにランクインしていた印象があります。

 そういえば、僕の2021年一発目の取材がYOASOBIだったんです。「今年の抱負は?」って聞いたら「2020年は『夜に駆ける』に手を引っ張ってもらった年だったと思うので、紅白に出たと言っても、今はまだ僕らのことまでは知ってもらえていない。僕らがどういう考えを持ってYOASOBIをやっているかも含めて、Ayaseもikuraも、そしてYOASOBIというこのユニットのことも、もっと知ってほしい」とAyaseさんが言っていて。これは本当に有言実行ですね。2020年は「夜に駆ける」はもちろん大ヒットしていたけれども、まだまだネット発みたいなイメージも強かった。それに対し、2021年はまさにJ-POPの人気者になった感じがしますね。

松島 年間のトップ100で見ると、11曲入ってるんですよ。要は約10%がYOASOBIってすごいですよね。

 12月1日に2枚目のCD作品「THE BOOK 2」がリリースされて、その直後の4、5日に日本武道館公演がありましたよね(参照:YOASOBIが2つの夢叶えた日本武道館ワンマン「この空間には愛しかない」)。YouTubeから始まって絶え間なく楽曲を発表し続けて、オンラインライブもやり、2年経ってようやくファンと対面できたっていうストーリーがすごく面白い。これは2019年以前にはなかった動きだと思います。

Kei 出演する予定だった夏フェスが急遽中止になったので初めての有観客ライブが日本武道館になったんですよね(参照:「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021」急遽開催中止、地元医師会の要請を受け)。今年の「NHK紅白歌合戦」にも出ますけど、確か「怪物」ってまだテレビでパフォーマンスしてないんですよ。もしこの曲が披露されたらまた年明けにチャートで伸びるだろうなと思っています。

松島 テレビで何を歌唱するかって、今非常に重要なポイントなんですよね。例えばヒゲダンの「Cry Baby」はリリースされてから2カ月くらいテレビでのパフォーマンスはそれほどなくて、アルバム「Editorial」リリースの1カ月前の夏になってようやくやるようになったんですね。優里やYOASOBIも同じで、テレビでパフォーマンスする曲をけっこう変えていて。どのタイミングで話題性を最大化するかというのはおそらくプランニングとしてあるんじゃないかと思います。

 なるほど。

Kei 「Cry Baby」はテレビ朝日系「関ジャム 完全燃SHOW」やYouTubeチャンネルの「しらスタ」による音楽分析も大きなサポートになっていたのかなと思っていて。そういう音楽分析というものが1つの潮流になった印象があります。

松島 紹介されると大きいですよね。今日名前が挙がってる曲のほとんど「しらスタ」で取り上げているんじゃないかな(笑)。

 「しらスタ」ってチャンネル登録者数155万いるんですね。YouTubeってミュージックビデオを観る場所として音楽リスナーにずっと使われてきましたが、ここ2、3年でYouTubeでの音楽の聴かれ方が変わってきていて。なんと言っても「THE FIRST TAKE」という企画性の強い音楽チャンネルがパフォーマンスを見せる場としてとても大きなメディアに成長した。そして「しらスタ」のような歌い方解説チャンネルがあり、先日現代ビジネスで記事を書いたんですけど、「みのミュージック」みたいな批評動画チャンネルもある。テレビの音楽番組的なエコシステムがYouTube内に形成されてきている。統一感があって登録者数も多いチャンネルがメディアとして台頭することでテレビの音楽番組が担っていた役割と同じものを担い始めている気がします。

松島 本当にその通りですよね。「THE FIRST TAKE」はチャンネル登録者数が545万人いますけど、それよりも登録数が多い日本のアーティストって米津玄師だけで、「しらスタ」よりもチャンネル登録者数が多いアーティストも30組くらいしかいないんですよ。自分のチャンネルで公開するコンテンツもありつつ、「しらスタ」に取り上げてもらってより広く多くの人にリーチできるというのは素晴らしい状況ですね。

さらなる躍進を遂げたグローバルスーパーポップスターBTS

──BTSも今年を振り返るうえで外せないですね。

BTS

BTS

 下半期だけのポイントで見たら、BTSはさらに上位になっていた可能性がありますよね。

Kei 私が集計する限り「Butter」は28万ポイントを突破していて、ほかを圧倒しています。BTSはストリーミングのような接触指標が強いんですが、ストリーミングの中でLINE MUSICがよく行う再生キャンペーンが終わっても再生回数が下がらないんですよ。普通はキャンペーンが終わると下がるんですけど、とても稀有な例で、そういうところからもBTSはファンダムがしっかり形成されライト層も獲得していることがわかります。

 BTSは今年ブレイクというわけではまったくないですが、それにしても「Dynamite」以前のBTSと以降のBTSでは何か違いますよね。もともと破格でしたがさらにグローバルなポップスターとしての領域に立っている感じがすごくする。BTSだけの別格感みたいなものがチャートにもすごく出ていると思う。

松島 6月にベストアルバム「BTS, THE BEST」をリリースしましたけど、これって同業種の外国人に説明できないプロダクトなんですよ。

──どういうことですか?

松島 これを出したタイミングで「Butter」もリリースされていましたが、アルバムには入っていません。それでも100万枚は売れます。これだったら外国人も「日本はまだまだCDセールスすごいね」ってわかってもらえるんですけど、この先が理解不能で、「BTS, THE BEST」が出たらLINE MUSIC、Apple Music、Spotifyのチャートの上位にこの「BTS, THE BEST」に入ってる曲がランクインしてくるんですね。でもそれらの曲はずっと前からストリーミングサービスで聴けるんですよ。ずっと聴ける曲なんだけどベスト盤が出たということでまた聴かれてランキングに入ってくるという。これってプレイリストカルチャーが根付いてる海外音楽マーケッターに説明しても理解してもらえないんですよね。「それただのプレイリストじゃん」って(笑)。だからいい意味で日本っぽさがあって、フィジカルが売れるしベスト盤が出たというニュースを見た人がストリーミングで聴いてそっちのランキングにも入るっていう。本当にコアな人も聴いてるし、ライト層も巻き込んで、日本中のみんなが聴いているということだと思います。

 「BTS, THE BEST」にはback numberとのコラボ曲「Film out」も収録されてますよね(参照:BTS日本リリース作品まとめた「BTS, THE BEST」発売、新曲「Film out」や「Dynamite」も収録)。グローバルな目線で去年からのBTSを追いかけていると、「Dynamite」があって「Butter」があって「Permission to Dance」のような英語詞のディスコポップの曲がメインにあって、その一方で「BE」という韓国語曲も含むミニアルバムがリリースされていて、それとまったく違う文脈の日本語曲として「Film out」もあるというふうに見える。back numberのことを知らないアメリカやヨーロッパのBTSのファンからはこれってどう受け取られているんでしょうね。

Kei BTSは当時海外のレコード会社と日本のレコード会社が違って、「BTS, THE BEST」はユニバーサル ミュージック ジャパンからリリースされているので、やはりこのアルバムは日本向けの作品という位置付けなんじゃないかなと思いますね。

 それこそTOMORROW X TOGETHERによる幾田りらさんのフィーチャリングもそうですけど(参照:TOMORROW X TOGETHER新作リード曲のフィーチャリングゲストはYOASOBI幾田りら)、K-POPにフックアップされてJ-POPがグローバル的な知名度を獲得するっていう力学が働いているのが興味深い。back numberはきっと海外ファン増えただろうなって思います。

TOMORROW X TOGETHER

TOMORROW X TOGETHER

松島 BTSファンには確実に認知してもらえますよね。

Kei これって去年の9月にアメリカのBillboardがグローバルチャートをローンチしたのがすごく大きいと思うんですよ。グローバルチャートは1年経って報告書があげられてますけど、K-POPは初登場週に一気に上位にくるという結果が出ています。そうするとback numberのようにBTSに楽曲を提供していると「あの曲を作っているのは誰だ?」ということで認知されますよね。実際にグローバルチャートでも「水平線」が100位以内に入ってますから。その流れでもう1つ言うと、YOASOBIが「夜に駆ける」や「群青」などの英語詞バージョンを出しているのも完全にこのチャートを意識してますよね。英語詞も合算されるので、その計算方法をわかったうえでグローバルチャートでも結果を残して知名度を上げていく戦略なんだと思います。

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下半期リリースで大健闘したback number

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柴 那典 @shiba710

音楽ナタリーにて取材受けました、

arne代表の松島功さん、ブログ「イマオト」のKeiさんと、「Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン」というテーマで座談会に参加しております。 https://t.co/nYJtbzN1nn

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