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細野ゼミ 6コマ目(前編) [バックナンバー]

細野晴臣とロック

ロックとロックンロールは何が違うの? 歴史的背景からその変遷を探る

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活動50周年を経た今なお、日本のみならず海外でも熱烈な支持を集め、改めてその音楽が注目されている細野晴臣。音楽ナタリーでは、彼が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する連載企画「細野ゼミ」を展開中だ。

ゼミ生として参加しているのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人。前中後編の3部構成の第6回では、参加者全員に深い関わりを持つロックをピックアップする。前編ではロックンロール誕生にまつわる話題、ロックンロールからロックに変容した背景などについて語ってもらった。

取材 / 加藤一陽 / 望月哲 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

ロックンロールはどこから生まれた?

──今回のテーマはロックンロールです。「ロックとロックンロールは異なるもの?」みたいなところも含めてお話を伺っていければと思います。

細野晴臣 この話長くなるけどいい?

ハマ・オカモト すごく聞きたいです!

細野 まずロックンロールとロカビリーってどう違うのか聞きたい?

安部勇磨 聞きたいです。

ハマ ロックンロールに比べて、ロカビリーはもうちょっとカントリー派生なんじゃないですかね?

細野 おっ! 鋭いね。

ハマ よかったー。「出てけ!」って言われるかなと思った(笑)。枝葉が分かれるところでいえば、ロックンロールは、ロカビリーとかのリズム発展形っぽい印象です。ぼんやりと、それくらいの印象ですけど。

細野 厳密にはわかんないんだけど、1950年代初期に“ロックンロール”という音楽が生まれた。ロックンロールには名付け親がいるんだよね。それがアラン・フリードというラジオDJ。彼は黒人音楽が大好きで、ラジオでリズム&ブルースとか、そういう曲ばかり流していた。彼が最初にロックンロールと呼んだのは、たぶんチャック・ベリーの曲だったんじゃないかな。チャック・ベリーってちょっとリズム&ブルースっぽくないでしょ? 

ハマ 確かに。

細野 それでロックンロールって名前を付けたんだけど、ロックンロールというのは、もともとリズム&ブルースの連中の隠語だったわけ。

ハマ安部 へえ。

細野 セクシーな隠語。

ハマ イカした感じなんですね。

ロカビリーのビリーって何?

細野 片やロカビリーは、サン・レコードというエルヴィス・プレスリーを輩出したアメリカ中西部の有名なレーベルが関係してくる。

ハマ 鶏のマークの。

細野 そう。スモールレーベルだけどプレスリーで大ヒットして。そのレーベルは、もともとカントリーベースで。ちなみに、ロカビリーのビリーってなーんだ? じゃあ、はい(ハマを指す)。

ハマ え!? 今日はいつにも増してゼミっぽいですね(笑)。うーん、なんだろう……?

安部 ビリーさんという人がいた、とか?

細野 ビリーっていうのは人の名前じゃないんだよね。2人は、ヒルビリーっていう音楽はなんとなく知ってるかな?

ハマ はい。

細野 ヒルビリーっていうのは、ある場所や、そこに住む人たちの総称だったんだよ。

安部 ナッシュビルとかそういうところですか?

細野 じゃない。アパラチア山脈とかあのあたり。

安部 えっ! そんな壮大な話になるんですか(笑)。

細野 そこにはスコットランドやアイリッシュ系の移民が閉じこもっていた。彼らは、あまりほか地域の人たちと接しない排他的な人たちだったんだ。

ハマ “村”って感じですね。

細野 そうそう。アングロサクソン系の人たちからは蔑視されてたんだよ。だからヒルビリーっていう言葉は彼らが演奏していた音楽から来てる。アイリッシュ系の民謡をバンジョーで弾いたり、それがマウンテンミュージックと呼ばれるようになった。ブルーグラスはマウンテンミュージックって言われてたんだよ。

ハマ へえー! 初めて聞きました。マウンテンミュージック。

細野 それがメンフィスあたりの人たちに届いて。さっき話したサン・レコードのサム・フィリップスっていう人がそういう音楽を好きでね。それでロックンロールに刺激されて、ロカビリー(Rock-A-Billy)という名称を使うようになったんじゃないかな。

ハマ ちょっと遅れてロックンロールに影響を受けたんですね。

ロックンロールスター不在の時代

細野 ロカビリーの歌手は白人が多かったんだよ。ジョニー・キャッシュとかカントリー系の人が多くて。それでいくつかのヒット曲が生まれたんだけど、ロックンロールもロカビリーも50年代末期には廃れてしまった。

ハマ いわゆる今でいう“ロック”に発展していったということですか?

細野 うん、ロックの時代がその次に来るけど、その前に1回終わっちゃったんだよね。いろんな原因があって。スターたちがみんな死んじゃったんだよ。

ハマ あー、なるほど……。エディ・コクランとかも亡くなってますもんね。

細野 そうそう、自動車事故で。死因は事故が多かった。それでロックンロールのスターたちが死んじゃって。

ハマ そっか、演者がいなくなっちゃったんですね。

細野 しかもチャック・ベリーは小児性愛で捕まった。

安部 えっ! チャック・ベリーってそんなことがあったんですか。

ハマ ワルだもんね。でも、ある意味チャック・ベリーって、ロックンロールミュージシャンの中で、唯一生き残った存在と言ってもいいかもしれないですね。それって刑務所に入っていたことも影響してるんですかね。

細野 それもあるかもしれない。

安部 なるほどなー。

細野 The Beatlesとか、みんなチャック・ベリーのレパートリーをカバーしてる。だからロックンロールの元祖と言われているんだよ。

ハマ 確かにロックンロールって言われると、チャック・ベリーの姿がパっと思い浮かびますよね。

細野 そうだね。一番ロックンロールっぽいよ。同時代のレイ・チャールズとかはイージーリスニングみたいな音楽もやっていたから。それはメジャーレーベルに移籍して、そういう音を作らされていたからなんだけど。

ハマ ポピュラーミュージックみたいな感じで。

細野 チャック・ベリーはずっとチェス・レコードってレーベルでやってたんだけど、チェスって、そういう音楽の塊だから。

ハマ 黒人音楽の名門ですね。

細野 サン・レコードもマイナーだし、マイナーなレーベルを中心に尖った音楽が盛り上がっていた。

ハマ なるほど。今となってはロックンロールって誰でも知っていますけど、決して大手メジャーレーベルが流行らせたわけではなく、インディ界隈から盛り上がっていったわけですね。

細野 大手は動きが遅いんだよ。

ハマ そうですよね(笑)。大手がやり始めた頃には、もうみんな飽きてるっていう。

細野 しかも、なんか大人っぽくアレンジしちゃうから。

ハマ 勢いがなくなっちゃう。

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