西寺郷太が日本のポピュラーミュージックの名曲を毎回1曲選び、アーティスト目線でソングライティングやアレンジについて解説する連載「西寺郷太のPOP FOCUS」。
第15回では西寺と公私ともに親交のある
文
きっかけは錦織一清と井ノ原快彦
A.B.C-Zとの仕事はその後、濃密なものに発展してゆきます。錦織さんが原案および演出を手がけた「A New Musical『JAM TOWN』」という舞台がKAAT 神奈川芸術劇場で、2016年1月13日から30日まで行われまして。僕が音楽を担当することになり、とっつーと仲よくなったのは、そのための準備に2年かけていた頃でした。その間とっつーもずっと「めちゃくちゃ楽しみです!」と言ってくれてたんですが、ちょうど「JAM TOWN」が上演されている期間に、A.B.C-Zも出演した舞台「JOHNNYS' World」の日程がまるまる重なっていて……。そのうえ、最終日27日の翌日から別の舞台の稽古がスタートすると聞いたので無理かなと正直思っていたんですよね。でも、「JOHNNYS' World」の最終日が昼公演で終わるということで、当日夜の「JAM TOWN」に、仕事のあった
「いつも応援される側のアイドルが応援する側に回る」、「応援屋」というタイトルとコンセプトを考えたのは錦織さんでした。その言葉を聞いた瞬間、僕がひらめいて「『OH & YEAH!!』って英語表記にしたらどうです?」と返したら、錦織さんが「いいねー!! ジャニーさんもそういうの大好きなんだよー!」とニコッと微笑まれて。初めての脚本ということで、さまざまな体験をさせてもらいました。この舞台の稽古中、振付、音響も含め超一流のスタッフの方々からいろいろなアドバイスをいただいたことは、今も忘れられない体験です。A.B.C-Zのメンバーに心から感謝しています。
コロナ禍で見たジャニーズの底力
先日、その舞台を原案に「
日本音楽史上にきらめくジーニアスが集結
2015年にリリースされたA.B.C-ZのCDデビュー曲「Moonlight walker」は松井五郎さんが作詞、馬飼野康二さんが作曲、アレンジが船山さんという最強集団によって作られている“ジャニーズ芸術”の極致。個人的には2010年代にリリースされた地球上のすべての楽曲の中でトップクラスに愛してやまない名曲です。松井さん、馬飼野さん、船山さん、いずれ劣らぬ“日本音楽史上にきらめくジーニアス”であり、少年隊にも楽曲提供をしていたチーム。そして、ダンスや衣装、タイトルも含め、スパイ映画的サスペンスの香りも漂うマイケル・ジャクソン風味も特徴なんです。「Moonwalker」は、マイケルのキャッチフレーズでもあるので。それでいてジャニーさん好みのマイアミサウンド的なパーカッシブでリズミックな魅力もある! 鋭く独自性のあるダンスパフォーマンス! 並べていくと僕が好きになる理由しかない(笑)。
ラテンなブレイクから始まる短くもインパクトのあるイントロ、いきなりのサビ頭。合間に入るとっつーと河合くんによるセリフ「What's your name?」は、メンバーに直接聞いたところによると現場で「何か引っ掛かりが欲しい」と生まれたアイデアだそう。「What's your name?」と言えば、「Moonlight walker」と同じく馬飼野さんが作曲をされ、以前この連載第3回「まいったネ今夜」で取り上げた天才ソングライター・宮下智さんが作詞された少年隊の名曲。そのワードのセレクトに事務所の伝統の継承者・A.B.C-Zに対する期待を強く感じました。「船山アレンジの真骨頂ここにあり」という間奏のスリリングで流麗なストリングスと、アタックの強いホーンのフレーズ! アウトロもまるで1本の大作映画を観たかのような余韻を残す重厚感に満ちた響き。いかにコンピュータのプログラミングのみで生まれる、シンプルで素晴らしい音楽が現代にあったとしても、この20世紀を制した巨人たちによる匠の集大成と言うべき楽曲のスケールを知ると、演奏者のスキルや制作予算も含めて通常の概念では太刀打ちできるわけがないとひれ伏してしまいますね。経験値が勝負ですから、なかなか僕のような40代では職業作曲家、アレンジャーとしてこれだけ膨大な予算をかけた豪華絢爛なレコーディングの数をこなせないんですよね。
A.B.C-Zには大人っぽい曲が似合う
A.B.C-Zのシングルでは盟友・
A.B.C-Zの特徴は、5人の歌声の強い個性。SMAPにも同じように感じたんですけど、ファンではなく一般の人が聴いても、声を判別しやすいグループであることは武器だと思います。橋本くんはグループの土台になる甘いリードボーカルで、“俺様キャラクター”なのかと思いきや、めちゃくちゃ周囲に気を遣うタイプで打ち上げなどでの姿を見て驚きました。
西寺郷太(ニシデラゴウタ)
1973年生まれ、NONA REEVESのボーカリストとして活躍する一方、他アーティストのプロデュースや楽曲提供も多数行っている。7月には2ndソロアルバム「Funkvision」をリリースした。文筆家としても活躍し、著書は「新しい『マイケル・ジャクソン』の教科書」「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い」「プリンス論」「伝わるノートマジック」「始めるノートメソッド」など。近年では1980年代音楽の伝承者としてテレビやラジオ番組などさまざまなメディアに出演している。
しまおまほ
1978年東京生まれの作家、イラストレーター。多摩美術大学在学中の1997年にマンガ「女子高生ゴリコ」で作家デビューを果たす。以降「タビリオン」「ぼんやり小町」「
※記事初出時より、一部変更を表現しました。
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