映画「
「TOKYOタクシー」はタクシー運転手の宇佐美浩二と、85歳の高野すみれが織りなす物語。ある日、浩二はすみれを東京・柴又から神奈川・葉山にある高齢者施設まで送ることになる。人生の終盤を迎えたすみれは、思い出の場所に寄り道。次第に心を許した彼女は、初対面の浩二に自身の壮絶な人生を語り始めるのだった。倍賞がすみれ、木村が浩二を演じた。
「安心して乗ってまいりました」とほほえむ倍賞に、木村は「懐かしかったですね。劇中ではすみれさん(倍賞)が後部座席に座っていたので、今日は助手席に座っていただくとまた雰囲気が違って」とうなずく。指定の位置に見事ぴったり停めた木村だが、「実は優ちゃんから『木村さん、できるならバックで(駐車)お願いします!』と言われたんですけど……ぶっつけ本番だったので前からにしました」と本番直前のやり取りを明かして笑いを誘った。
倍賞と木村は、スタジオジブリ作品「ハウルの動く城」で声優として共演経験があるが、実写での本格的な共演は初めて。倍賞は「『ハウル』のときは一緒にアフレコできる日を1日だけ作っていただいたんですけど、結局あまりお話できなかったんです。今回は毎日毎日一緒に撮影ができて、いろんなお話をさせてもらいました」と振り返る。そして木村の印象について「真面目で勉強家。いつも何かしら考えてらして。本当に優しいですし、今回の共演で知ることができました」と述べ、敬意のこもったまなざしを向ける。木村も「自分にとって倍賞さんは“観る”側の存在だったので……その倍賞さんと、山田組の現場でお会いできるというのは、格別の思いがありました」と噛み締めるように語った。
若き日のすみれを演じた蒼井は、2018年の映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」以来の山田組。「今までは緊張が先に立って、これでよかったんだろうかって思うことが多かったんですが、今回は“楽しもう”と決めて臨みました」と語り、「先輩方の胸を借りて、とにかく楽しむことを目標にしていたので、終わるのが本当に寂しくて……来年あたり、このメンバーでセルフリメイクしたいくらいです(笑)」と現場への愛着をにじませた。同じ役を演じたため、倍賞は「実際の共演シーンはなかった」と残念そうに述べつつ「安心して歳を取れました」と笑顔を見せ、蒼井も「倍賞さんが待っていてくださるという安心感があったので、思い切って演じることができました」と重ねた。
山田は撮影の日々を懐かしむように、「倍賞さんと木村さんの芝居を見るのがとにかく楽しみでした。僕の書いた脚本のセリフを発して演技をしてくれる。それだけでいい気分になっちゃう」と声を弾ませる。また「昔から映画界では『脚本がうまくいって、キャスティングが成功したら、もう映画は8割方成功している』と言われますけど」と切り出し、今回はまさにそうだったと本作への自信をのぞかせた。
木村は「以前、山田監督の作品に参加させていただいたときは時代劇でしたが、今回は現代劇だったので、実際にいそうな人物たちを描いていて。でも最新の撮影テクノロジーも使っていて、プログラミングに時間がかかったりすることもあったんです」と裏話を話し始める。「あるときテクノロジー的な部分で待ち時間が発生したとき、監督が『僕は芝居を撮りに来てるんだよ!』とおっしゃって。タクシーの中で待機していた僕と倍賞さんはピッと背筋が伸びたのを覚えてます」と語ると、倍賞も「あのとき思わずハイタッチしましたよね」と笑い、山田は「そんなこと言ったかなあ」ととぼけるふりをして会場を和ませた。
「TOKYOタクシー」は11月21日より全国でロードショー。なお映画ナタリーではこのあと、完成披露試写会の舞台挨拶の模様もレポートする。
さやっぺ @sayatklove
木村拓哉が倍賞千恵子を乗せてエスコート運転、「TOKYOタクシー」公開前イベント
「実は優ちゃんから『木村さん、できるならバックで(駐車)お願いします!』と言われたんですけど…ぶっつけ本番だったので前からにしました」と本番直前のやり取りを明かして笑いを誘った。 https://t.co/ybO1F8DfZ4