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映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第27回 [バックナンバー]

映画は感動や興奮だけでないことを知った「グリーンブック」

映画としてはハッピーエンド、だけど……

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第27回のお題は2019年のアカデミー賞受賞作「グリーンブック」。実話をもとにしており、アメリカに根強く残る人種問題も扱っているという、この連載では取り上げていなかったタイプの作品だ。もちろんコメディ要素や感動要素もある作品だが、駒場の目にはどう映ったのか。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

「クレヨンしんちゃん」は映画より日常回が好き

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは「グリーンブック」という作品です。観ているとき、映像とか音楽とかの感じから「昔の映画だろう」と思っていたのですが、観終わって調べると2019年3月日本公開だということに驚きました。けっこう最近の作品でした。

2019年と言えば僕らが「M-1グランプリ」で優勝した年でして、朝からバイト、終われば夕方からファミレスに集まってネタ合わせ、という日々だったので当時のニュースやトレンドがまったく追えていませんでした。2019年の出来事で言えば「元号が平成から令和に変わった」以外本当にあまり記憶がないです。全体通してそんなレベルの記憶なので、もともと映画に疎い僕にしたらあの年の映画情報はいつも以上に入ってきてなかったです。(「観てなかった」というだけのことを言うために「M-1」優勝の話を持ち出す必要あったか?と言われたら、やめてくださいよ~としか言えません、すみません)

そんな訳で、グリーンブックの事前情報はもちろんなく、俳優さんも監督さんの名前も聞いたことのない方ばかりでした。ただ冒頭で、この作品は事実をもとにしているという注釈があり、僕は事実をもとにしている話はとても好きなので興味深く観始めることができました。

なんでしょう、歳をとればとるほど、事実をもとにした話が好きになってきた気がします。昔は事実をもとにしてるかどうかとかはそんなに気にならず、どちらでもよかったです。どっちかと言えば事実をもとにしていない作り物のほうが面白いだろうと思っていたくらいです。でも年齢が上がるにつれて事実をもとにした話が好きになっていきました。ドキュメンタリーとかも昔はあまり観ませんでしたが今はドキュメンタリー大好きです。なぜそうなるのかと考えると、歳をとるごとに自分もいろんなことを経験して、いろんな人の立場に立って考えられるようになり、その状態でドキュメンタリーの世界の中に自分が入ってみて、自分ならこう思うとかこう動くとかを考えると楽しくなるからなのかなと思います。フィクションでもそれは考えられますが、ノンフィクションのほうが考えがいと緊張感がありますもんね。それで言うと、僕は「クレヨンしんちゃん」とかでも、映画より日常の回が好きなんです。しんちゃんの映画ももちろんいいと思うんですが、あの世界の中ではどちらかと言うと映画はフィクションで、日常を描いてる通常回のほうがノンフィクションです。まぁ「クレヨンしんちゃん」なんて、おしり丸出しにして高速で左右に動いている時点で突き抜けたフィクションではあるのですが、通常回のほうがしんちゃんの世界での日常なので違和感がなく観られます。

「グリーンブック」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「グリーンブック」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータイメージ) [高画質で見る]

理解できてないところが多々あって恥ずかしくなりました

そしてグリーンブックに話を戻しますが、事実をもとにしすぎていました。とんでもない事実を突き付けられた気がしました。昔のアメリカの差別問題が軸でストーリーが進んでいくのですが、思ってたより事実でした。でも本当はもっと事実なこともあるかもしれなくて、映画に描かれてるのはまだ入り口に過ぎないのかもしれないとか思うと複雑な気持ちになりましたし、逆にこの部分はちょっと事実と違う、みたいな意見もあるのかなぁとかも思いましたが、まぁ事実なんでしょう。差別問題についてもっと深く知識があればまた見方は変わってくるのかもしれないですが特に知識がない僕でもその異様さはわかる映画でした。面白かったとかハラハラしたとかそういうジャンルではないですが、観終わったあと「考えさせられて、勉強になる」映画でした。映画としてはハッピーエンドではありますがトータルの話はハッピーではない、そんなふうに思いました。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですがけっこう全部です。観終わったあと、いつものように自分に対する答え合わせとしてレビューなどを見たのですが、「そんなこと言うてた?」だらけで驚きました。序盤のコップを捨てた意味(編集部注:主人公の1人・トニーは黒人に対して差別意識はないと言いつつも、黒人の配管工から渡されたコップを捨てるシーンがある) とか、観ていたはずなのにそれが記憶にストックされていなかった、本当に情けないです。そのくせホットドッグ早食いは何か意味があるのかと覚えていましたが別に意味はなさそうで、それに関するレビューも特に書かれておらず。事実をもとにした話が好きだとあんなに言っておきながら、理解できてないところが多々あって恥ずかしくなりました。「クレヨンしんちゃん」の話をしている場合ではなかったです。たぶん、ほかにもそんなこと言うてた?なことがたくさんあるんだろうなと思います。何度も観て新たな発見を楽しむ映画なんだろうなと思いました。

映画は感動とか興奮を与えてもらうだけでなく、勉強にもなるということを教えてもらいました。これからもいろんな作品を観て勉強していこうと思います!

編集部から一言

駒場さんが難しい映画が苦手ということもあり、この連載ではエンタメ系を観てもらうことが多いのですが、そろそろこういうのも……と思い、アメリカの人種問題を扱う「グリーンブック」を鑑賞してもらいました。「映画は感動とか興奮を与えてもらうだけでなく、勉強にもなるということを教えてもらいました」という相変わらず素直すぎるコメントに感動しました。わからないことが恥ずかしいと言いつつもちゃんと全部観て前向きなコメントをくれるのは本当にありがたいです。
余談ですが駒場さん、先日の「M-1グランプリ2025」での初の審査員、お疲れ様でした。「めちゃめちゃええっすね」から入る全肯定コメントは芸人にとって救いだったのではないかと思います。そして「駒場さんの人柄が出ている審査員コメントを聞いて映画ナタリーの連載を思い出した」とSNSで書いている人も何人か見かけました。

「グリーンブック」(2018年製作)

「グリーンブック」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータイメージ)

「グリーンブック」場面写真(写真提供:Universal Pictures / Photofest / ゼータイメージ) [高画質で見る]

舞台は人種差別が残る1962年のアメリカ南部。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めていたトニー・リップは、ガサツで無学だが、腕っぷしとはったりで家族からは頼りにされていた。そんなトニーがある日、ひょんなことから黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーが行う演奏ツアーに運転手兼ボディガードとして雇われる。正反対な2人が旅の中で理解を深めていく、実話をもとにしたロードムービーだ。タイトルの「グリーンブック」とは、黒人旅行者にサービスを提供する宿泊施設、ガソリンスタンドなどが記されたガイドブックのこと。ヴィゴ・モーテンセンがトニー、マハーシャラ・アリがシャーリーを演じた。監督を務めたのは「メリーに首ったけ」のピーター・ファレリー。2019年の第91回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、助演男優賞を獲得した。

駒場孝

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。

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映画ナタリー @eiga_natalie

【コラム】ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第27回

アメリカの人種問題を扱う「グリーンブック」を鑑賞
映画としてはハッピーエンド、だけど自分の知識のなさを痛感

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