「40までにしたい10のこと」風間俊介・庄司浩平インタビュー|“優しい人しか出てこない物語”の舞台裏とは?お互いへの質問コーナーも

2025年7月期にテレ東系で放送されたドラマ「40までにしたい10のこと」のBlu-ray / DVD BOXが、2026年1月28日に発売される。

累計発行部数100万部超え、BLアワード2024総合コミック部門で1位を獲得したマミタによる同名マンガをもとにした本作の主人公は、40歳目前の冴えない男・十条雀。人生の節目にふと感じた焦りから“40までにしたい10のことリスト”を作成し、そのリストを部下の田中慶司に偶然見られたことで物語が展開していくオフィスラブストーリーだ。主演の風間俊介が雀、庄司浩平が慶司に扮し、平子祐希(アルコ&ピース)、平井亜門、高山璃子、ワタナベケイスケ、三石琴乃(声の出演)らも参加した。

映画ナタリーでは、ソフトの発売を記念し、風間と庄司にそれぞれインタビューを実施。物語の構造の豊かさや、撮影の裏話、SNSでのキャスト同士のやり取りについて振り返ってもらったほか、お互いへの質問にも答えてもらった。

取材 / 尾崎南(風間俊介)、脇菜々香(庄司浩平)文 / 脇菜々香撮影 / 梁瀬玉実(風間)、ツダヒロキ(庄司)

主演・風間俊介 インタビュー

「ドキドキしてりゃ勝手にかわいくなるだろ」と思っていました

──ドラマ「40までにしたい10のこと」では、人生の節目にふと感じた焦りから“40までにしたい10のことリスト”を作成するアラフォー男性・十条雀を演じられました。まずは、オファーを受けられた理由をお伺いしたいです。原作や脚本に惹かれたのでしょうか?

そうですね。私は「初恋、ざらり」というドラマでプロデューサーの祖父江(里奈)さんと監督の池田(千尋)さんとご一緒しておりまして。つらい環境でも温かいもの、大切なものをすごく丁寧に扱う作品だったと思うんですね。今回の原作を読んだときに「優しかったらいいな」と思ったので、この方たちとだったらデリケートに扱いたいものを過保護にしすぎずに優しく、大切に作れると思えたのが出演を決めた理由の1つです。

風間俊介

風間俊介

──祖父江プロデューサーと池田監督への信頼が大きかったんですね。

あと「BLをやるんだ!」という感覚じゃなくて、1人の人間が恋をする物語として作ることができる確信もありました。多くの人に「風間さんがBLに?」「挑戦ですね」と言われたのですが、「(どの作品も)挑戦ですよ、毎回!」と思っていました。

──作品では、庄司浩平さん演じる田中慶司との恋愛だけではなく、仕事のチームでピンチを乗り越えたり、雀が自分の人生について考える場面もたくさんあったのが印象的でした。本作の物語をどのように捉えていましたか?

ドラマ「40までにしたい10のこと」場面写真。左から風間俊介演じる十条雀、庄司浩平演じる田中慶司

ドラマ「40までにしたい10のこと」場面写真。左から風間俊介演じる十条雀、庄司浩平演じる田中慶司

「初恋、ざらり」のときにも感じたのですが、僕が不在というか、慶司と離れている回がすごく効いていたなと思います。逆に、同期の黒木(啓介 / 演:平子祐希)の家に行く回には慶司がほぼ出てこないんですよね。2人の話なんだけど、お互いに恋愛以外のところで何をやっているかが、キャラクターの豊かさにすごく影響を与えていると思うんです。好きな相手が、自分には優しくしてくれるけれど、店員さんに横柄な態度を取るのを見た瞬間に冷めることってあるじゃないですか。恋愛の楽しい時期って、相手は自分にすごくいいものを与えてくれるけど、自分以外に何を与えてるかも大事なことだと思うんですよね。僕の出張回は仕事の面も描いているし、恋愛がうまくいっていなかった茜ちゃん(演:高山璃子)に慶司が寄り添うシーンも好きで。あんなに大変なことが起きていたのにほかの人に優しくできるなんて「やっぱりこの人にするべきだよ!」と思える構造がめちゃくちゃいいなと思いました。

──確かに、視聴者がキャラクターの人物像をすごく理解しやすい作りでした。

皆さんが、キャラクターそれぞれを好きになってくれたと思うんですよね。

──放送時、雀に対しては「かわいい」という感想も多かった印象なのですが、かわいい部分は意識されていたんですか?

はい。ただ、各所で「私かわいくなります」と冗談っぽく言ってはいたんですけれど、“かわいいをやる”気はさらさらなくて。逆算的なことなんですが、恋愛をして好きな人を見ているときって、たぶんみんなかわいくなっているんですよね。だから、ちゃんと好きな気持ちと恋のときめきを携えることができたら、勝手にかわいくなると思っていました。つまり“かわいくなる宣言”は「ちゃんと恋します」っていう宣言であって、「こうやったらかわいいでしょ?」という発想はほぼなかったです。……“ほぼ”と言ったのは、ないわけではないということ。(雀の部屋にいるぬいぐるみの)すず子(声:三石琴乃)と絡むシーンはかわいく持つことも考えていたけど、慶司とのシーンは「ドキドキしてりゃ勝手にかわいくなるだろ」と思っていました。

すず子を見つめる風間俊介

すず子を見つめる風間俊介

──なるほど。ちなみにすず子を持つときのかわいさはどのように習得されたんですか?

(立ち上がって、すず子を持ち上げながら)雀なら、1回必ず目を見つめる、とかですね。

庄司浩平は、語彙力にあふれているインテリジェンスな人

──放送時、SNSがかなり盛り上がっていたのも印象的でした。反響はどのように受け止めていましたか?

SNSを始めたのが遅いのでよくわからないんですけど、「すごいトレンド入りするじゃん」と思っていました(笑)。それももちろんすごいなと思いましたし、同時期に撮っていた別作品の現場でも声を掛けてもらうことがありました。今まで話せていなかった現場のスタッフさんに「金曜の夜をめちゃくちゃ楽しみにしてます」と言ってもらえたりして。

風間俊介

風間俊介

──庄司さんとのSNSのやり取りも話題になっていたと思うんですが、風間さんから見て庄司さんはどんな方なんですか?

とにかく頭がよくてセンスがいい。語彙力にあふれているインテリジェンスな人です。SNSでも、「〇〇します」とか「僕はこう思いました」と投稿したところに絡んできてくれる人ってなかなかいないので「あっ、これがSNSか!」と思いました。

──クランクアップ時の映像やメイキング特番からも、すごく仲のいい現場だったことが伝わりました。座長として心掛けていたことはあったのでしょうか。

僕のずるいところなんですけど、自分が主演という役割をさせてもらうとき、ありがたいと思いながらも「主演なんていないんですわ」という考え方でいます。ベタな言い方をすると「全員主役でいい」と思っていて。ある種傲慢かもしれませんが、今回もそういう考えをみんなが汲んで仲間兼リーダーにしてくれたと感じています。

風間俊介

風間俊介

──みんなでリーダーに付いて行くというよりは、みんなで意見を出し合えるような関係だったんですね。

スポーツで言うキャプテンのようなポジショニングをさせてくれたのが一番ありがたかったですね。サスペンスや憎愛をテーマにしたドラマだったらバチバチした関係性も大事なのですが、今回は本当に悪い人が出てこない物語。仲のいい空気は、放っておいても画面に乗るので、本作を優しい物語だと思ってくださる方がいるのなら、一生懸命作ったことプラス、現場のみんながすごく仲良かったからというのもあると思います。

──特番で、風間さんが演出について「こういうふうにやるのはどうですか?」と声を掛けていらっしゃったのを見ましたが、これはいつも意識されてることなんですか?

どの作品でも大なり小なりあります。「初恋、ざらり」のときも感じたのは、すごく丁寧に脚本が作られていても、いざ現場で演じると「これは誤解を生む」と思うことも多々あるということ。池田監督はご自身の考えも必ず伝えてくれますが、「それぞれ台本に違うイメージを持っている」ことを大前提に考えてくれる方なので、「俺はこう思った」「じゃあこうしようか」とお互いの意見を話し合えるんです。だから僕が演出案を出してるというよりは、「俳優部としてはこうやりたいです」「監督としてはそれをこう撮りたいから、位置はこっちでもできますか?」と、できること / できないことを調整していく感じです。でもそれは、池田監督がそれを言わせてくれる現場だからだと思います。

──今回ソフトが発売されるということで、いろんなシーンを何回も観られるようになります。雀と慶司の共演シーンで、特に何度も観てほしいシーンはありますか?

少し手前味噌にはなりますけど、この作品は全話いいので、どこをチョイスしていただいても大丈夫です! まず手元に置きたいと思ってくれていることがありがたいなと思います。昨今、観ようと思えばほかの手段でも繰り返し観ることはできると思うんですけど、このBlu-ray / DVDを買ってくれる方たちは、“手元に置く”ということを大事にしてくれたんですよね。あえて物理をチョイスしてくれたということは、雀のように自分が好きなものを部屋の中に置いて、「私はこれが好き」と認識しようとしてくれているんだと思うので、それがうれしいです。なので、ドン引きするレベルでメイキング映像を入れておきました(笑)。これは裏話なのですが、特典映像はソフトの記録容量のギリギリまで攻めたらしいです(笑)。

ドラマ「40までにしたい10のこと」場面写真

ドラマ「40までにしたい10のこと」場面写真

庄司くん、また背は伸びましたか?

──では最後に、庄司さんから事前にいただいた風間さんへの質問をお伝えします。1つ目が「いつになったら鉄板焼きに連れて行ってくれますか?」。もう1つが「いつディズニーに連れて行ってくれますか?」とのことでした。

「折を見て」ですね。鉄板焼きも行きたいですし、ディズニーも行きたい。その2つは叶えられていないですけど、ちょいちょいランチとかはしてますよ。

──風間さんから庄司さんへの質問もいただいていいですか?

また背は伸びましたか?っていうのと、(8話の)家具店のシーンで見つけたブラキオサウルスぐらいとんでもなく大きいライト、どうする?と聞いておいてください。あと(3話の)シーパラ(八景島シーパラダイス)にあった大きなコウテイペンギンのぬいぐるみも。ちなみにライトは、雀が慶司に枕が壊れたことを話して「枕って壊れることあるんすね」と言われるシーンに一部が映っていて、カメラが回っていないときに「これ庄司くんの部屋にもさ……」「いらないですよ」っていうくだりがありました(笑)。言ってくれればいつでも俺が買うよ。

風間俊介

風間俊介