「ビー・バップ・ハイスクール」が、2025年12月14日に公開40周年を迎えた。清水宏次朗演じる加藤浩志(ヒロシ)、仲村トオル演じる中間徹(トオル)の2人が喧嘩や恋に明け暮れる毎日が描かれ、1作目のヒットを機にシリーズ化。全6作品が製作された。40周年記念としてシリーズ全6作の4KレストアBlu-rayの発売が決定したほか、記念イベントの開催などで盛り上がりを見せている。
映画ナタリーでは、ロケ地である静岡県静岡市の清水駅前銀座商店街で12月に行われた40周年記念イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」のオープニングセレモニーに参加した直後の仲村へインタビューを実施。デビュー作での過酷なアクション、監督・那須博之との思い出、さらに若さゆえに背負い込んでいたという使命感と過信について語ってもらった。
取材・文 / 一角二朗撮影 / 菊池茂夫
40年前は40年後のことなんて考えていなかった
──先ほど清水駅前銀座商店街で、「ビー・バップ・ハイスクール」40周年イベントのオープニングセレモニーに登壇されました。商店街が埋め尽くされるものすごい人出でしたが、改めてどんなお気持ちか、お聞かせください。
「さよなら丸の内TOEI」(2025年6月開催)で上映してくださったときの挨拶でも、先ほどのセレモニーでも言いましたが、あんなめちゃくちゃな撮影をさせてくれた清水の方々をはじめ、大勢の方がこの映画を愛してくださって、改めて感謝しかありません。しかも、40年経っても大勢の方が集まってくださるなんて、感無量ですね。
──40年前には考え付きませんでしたか。
それはもう、40年前は40年後のことなんてまったく考えていなかったですから(笑)。
──オーディションに合格して、1作目の撮影に入る前から、すぐアクション(技斗)を担当していた高瀬将嗣さんの高瀬道場へ通われたそうですね。
ええ。1本目のクランクイン前はほぼ毎日通っていました。
──高瀬さんから「朝道場の窓を開けると駐車場に車が停まっていて、そこで仲村さんが寝て待っていた」という話を聞いたことがあります。
あったかもしれませんね(笑)。ただ、それは自分の運転で移動するようになってからなので、3作目以降だと思います。「あぶない刑事」の頃から自分で運転して車でどこにでも行くようになっていたので……。ともかく、2本目の「高校与太郎哀歌」、3本目「高校与太郎行進曲」に入っても、手順の多いアクションシーンの前になると、道場へ行って練習していましたね。
──高瀬さんは、トオルを演じる仲村さんにはパンチを中心、ヒロシを演じる清水宏次朗さんにはキックを中心とする技斗を付けようと考えていたそうですが、そういったお話はされていたんですか?
いや、そこまで具体的な話は、当時はされていなかったと思います。僕は本当に撮影の経験がまるでなかったので、高瀬さんからは技術的な指導がほとんどでした。脚の上げ方だったり、「相手に本当に当てることなく殴ったように見せるには」というようなアクションの基本的なことをひたすら教えてもらいました。
手錠が切れた……小沢仁志とのアイコンタクト
──「ビーバップ」のアクションはプロレスの技が出てくることも多いんですが、そういったレッスンは?
いや、していなかったと思います。
──それこそ1作目のクライマックス、土砂降りの中でのトオルとヘビ次(小沢仁志)の対決は、最後に見事なバックドロップで決着するわけですが……。ワンカットワンカットが長回しで、ずっと戦い続ける白熱のシーンでした。
1作目は、先ほどお話しした「さよなら丸の内TOEI」で上映されたときに、40年ぶりに最初から最後まできちんと観たんです。なので、あれだけ長回しをしていた記憶もなかったんですよ。途中でヒロシがアウトしていって、トオルとヘビ次の1対1になるという展開だったことも、そこで思い出したくらいでした。それで、2人の戦いになって、ヘビ次に手錠をかけられますよね。
──ええ、それで距離を取れないようにして、ゴロゴロと坂を転がっていく。
そう、その転がっているうちに、予定より早めに手錠が切れてしまったんですよ。瞬間的に「あっ」と思ったんですけど、同時に小沢さんもこちらにアイコンタクトで「おい、どうする? 続けるか? やるか?」と訴えてきたんです。ほんの0.1秒とかそれくらいのことで、もちろん口には出していないんですけれど、「いきましょう!」というコンセンサスが取れて、そのままアクションを続けたことを思い出しました。
──確か、このシーンの撮影は2日にわたっていて、初日は暗くてうまく撮れなかったとか……。
そうですね。テストのときから大雨を降らしていたんですが、どんどん日が暮れていって、暗すぎて大丈夫かなぁ……くらいは当時の僕でも思いましたが、翌日、もう1回となって……。のちにラッシュ(撮影直後の映像素材)を観たら、1日目の撮影で撮ったテイクは「ああ、夜だなあ……」と(笑)。もちろん、僕と小沢さんの姿も映っていたんですけど、暗かったですね。
──それは、撮影中に誰か何か言わなかったんでしょうかね……。
那須(博之)監督の迫力と粘りを見たら、なかなか言い出せなかったんじゃないかと、今となっては思います(笑)。カメラマンの森(勝)さんも、照明の野口(素胖)さんも、最大限のことをしてくださって、祈るような気持ちで撮っていたんじゃないでしょうか。
50回に1回しか起こらない奇跡があるなら、50回やれ!
──やはり、この映画「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズを語るうえでは那須博之監督という存在を忘れるわけにはいかないと思うのですが、改めてどのような方だったんでしょうか。
この比喩もよく言うんですけど、卵からかえったヒヨコが最初に見たものを母親だと思うように、僕にとって初めての作品で、最初は「映画監督とはこの人だ」と思って生まれてきたわけです。だから、当時はそんなに気付いていませんでしたが、今振り返ると本当に持久力と瞬発力のすごい方だったなあ、と感じますね。
──持久力というのは、何度もテストや本番の回数を重ねていくということですか?
ある意味、人を追い詰めて力を出させるというんでしょうか。「50回に1回しか起こらない奇跡があるんだとしたら、50回やりゃいいんだよ!」というタイプの方でした。何作目だったか、何回くらい言ったかは忘れてしまいましたが、現場でオッケーが出たときに、僕から「もう1回やりたいです」と申し出たことがあるんです。
──それは、ご自分の演技に納得できなくて、ということでしょうか。
そうです。そうしたら那須監督が「じゃあもう1回やろう!」と、ちょっとうれしそうにテイクを重ねてくれたんです。撮影が終わったあとに監督が「役者がああ言ってくれるとありがたいんだ。スタッフからするといろんな事情や状況で『オッケー』としなきゃならないときがあるんだよ。だけど、ギリギリオッケーくらいだと、こちらから『もう1回』と言い出しづらいことがある。けれど、役者が『もう1回やらせてくれ』って言ってくれれば、我々ももう1回チャレンジできる。それはスタッフにとってうれしいことなんだ」というようなことをおっしゃったんです。
──那須監督が作品に懸ける思いのわかるエピソードですね。
ただ、今考えると「カントク、もう1回どころかもう10回みたいなことをしょっちゅう言ってましたよね?」という感じがしますけど(笑)。
突如撮影され、編集で消えた幻の乱闘シーン
──もう1つ、瞬発力というところで、那須監督はとにかくアイデアにあふれていて、考えたことは実行に移すタイプの方だと聞いたことがあります。撮影中、急に内容が変更になるということはあったんでしょうか。
記憶に残っているのは、2作目「高校与太郎哀歌」のクライマックスです。今日子(中山美穂)を助けるために、ボンタン狩りをしていた城東の不良たちが集まっているアジトにヒロシとトオルが乗り込むシーンがありますよね? そこで2人が土下座をするけれど、本当は詫びるために来たわけじゃねえよ、という。
──はい。ポセイドンというドライブインに入り、そこから乱闘が始まるシーンですね。
実は、あのポセイドンのシーンの前に城東の見張り役が立っていて、ヒロシとトオルが彼らと一戦交える、というシーンがあったんです。
──それ、台本には……?
書かれていませんでした。突然、那須監督が言い出したんです。たぶん僕か清水さんが「土下座する前に喧嘩していたらおかしくありませんか?」と監督に言ったんです。そうしたら監督は「その意外性がいいんだよ!」とおっしゃって。
──何かアイデアが浮かんだんでしょうか?
おそらく、そうなんでしょうね。それで急きょ高瀬さんがアクションを付けて、2人と城東の4~5人が戦うシーンを撮影したんです。ところが、クランクアップ後の0号試写(関係者が観る完成前の試写)を観たら、そのシーンが丸々ないんですよ。なので「監督、あの乱闘シーンなかったですけど」と言ったら、「そりゃあ、あんなのあったらおかしいよ!」って(笑)。
──ええ!? 自分で言い出したのに。
あとから思えば、那須監督は東京大学出身じゃないですか。監督は子供の頃からずっと優秀だったから、「突然こんなことを言い出したら、人からおかしいと思われないかな」という不安や恐怖を感じたことがなかったんじゃないか、と思うんです(笑)。だから物怖じせずに、突飛なアイデアをどんどん出していけたんじゃないでしょうか。
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映画には電車から人を蹴り落とす自由すらあるんだ


