「愛がきこえる」では耳の聞こえない父シャオマー(小馬)と、ろう者のコミュニティで暮らす7歳の娘ムームー(木木)の絆が描かれる。支え合って生きる父娘の日々が、5年前に出ていったムームーの母の来訪によって軋み始めることから物語は展開していく。チャン・イーシンがシャオマー、これが映画デビュー作のリー・ルオアン(李珞桉)がムームーを演じた。
シャー・モーは2021年にろう者をテーマにした短編番組を手がけ、その反響の大きさを受けて、3年にわたって取材を重ね本作を完成させた。制作にあたっては手話の正確さを大切にしたそうで「手話は本当に複雑で、方言もあるし、同じ中国でも南方と北方では手話が異なります。私が特に気にしたのは、ろう者の観客が作品を観たときの第一印象です。安易にまねたような手話でそれらしく見せることはしたくなかった。耳の聞こえる観客の方にはそれで通じても、ろう者の方々から『この手話は不自然だ』と言われたら、私の仕事はまったく不十分だったということになります」と語る。またろう者の出演者やエキストラたちもロケ地・重慶でキャスティングしたことから、本編の手話は標準手話をベースにしつつ、重慶や南方寄りのニュアンスを持つものになっているという。
撮影前にはチャン・イーシンが自ら強く望み、シャー・モーとともにろう者のコミュニティや麻雀店へ行くなど交流を行った。シャー・モーは「イーシンさんは、シャオマーが本当に実在しているように見えなければならないと考えたようです」と述べる。また「手話が正確であってほしい」とろう者たち自身から望まれているという話をチャン・イーシンに伝えたことに応えるように「(チャン・イーシンが)準備期間の多くを手話の習得に費やしてくれた」と振り返った。
またシャー・モーは「イーシンさんには、挑戦という気持ちと不安の両方があったのではないかと思います。シャオマーという役は私たちの日常生活からはどうしても距離がありますから、うまくいかなければ批判を受けかねないという不安もあったはず」「彼は、引き受けたからには期待の300%で応えるというタイプの俳優です。監督として私があまり細かく指示を出す必要もなく、私が求める以上のものを必ず提示してくれました」とも語る。
俳優としてのチャン・イーシンの魅力については「内面のエネルギー、俳優としての純粋な才能、そして表現の技術、そのすべてを兼ね備えている方だと思います。アイドルとしての輝きがあまりにも強いために、俳優としての資質が見落とされがちな面もあるかもしれないけど、これまでの出演作でも彼は常に高いレベルで役をまっとうしていました。その積み重ねがあったからこそ、私は今回の主人公として彼を選ぶ強い動機を得ることができました」とキャスティング理由も明かす。
本作の鍵となるのは親子愛。シャー・モーは「障害のある人と社会の関係を描くことは、ある意味でこの映画の表層だと思っています。その内側にあるものは、揺るぎない親子の絆が不確実な世界に対してどのように立ち向かっていくのか、という問いです」と核心に触れる。またクライマックスの法廷シーンを挙げて「法廷の傍聴席に座るエキストラのろう者の方たちまでも、その場の空気にすっかりのみ込まれていた。特にチャン・イーシンさんの演技がその空間全体に感情の熱を生み出し、私たちはそこに満ちる空気をただ撮ることに集中していればよかった。演じているというより、(その場の俳優の)誰もが本物の感情をさらけ出していたように感じました」と回想している。
「愛がきこえる」は全国で上映中。
中国映画「愛がきこえる」予告編
関連記事
シャー・モーの映画作品
リンク
タグ
お山の猫 @oyamanoneko
あんなキラキラ✨のご本業と、未だ結びつかないけど、300%は納得。 https://t.co/dr26FujRL2