しんちゃん&チャパティ愛が止まらない!ぼる塾インタビュー | 「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」に登場するツッコミの天才とは

インドを舞台にしんのすけたちが歌って踊って大冒険を繰り広げる「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」のBlu-ray / DVDが、2026年2月25日に発売される。

本作では、しんのすけをはじめとするカスカベ防衛隊がダンスコンテストに出場するためにインドを訪れることから物語が展開。邪悪な力に導かれたボーちゃんが【暴君(ボーくん)】となり、世界を揺るがす力を手に入れるさまが描かれる。ゲスト声優は賀来賢人、バイきんぐの小峠英二と西村瑞樹。2025年8月8日に公開された。

映画ナタリーでは芸能界きっての「クレヨンしんちゃん」ファンであり、メンバー全員が“しんちゃん第1世代”である、ぼる塾の4人(きりやはるか、酒寄希望、あんり、田辺智加)にインタビューを実施。予定時間をオーバーする怒涛の勢いで語られたのは、作品愛はもちろんのこと、お笑い芸人ならではの視点で分析した「笑いの技術」、親目線で感じる「野原夫妻の偉大さ」、そしてなぜか白熱した「チャパティ論争」などなど……。笑いあり、涙あり、そして脱線ありな、愛と混沌のロングインタビューをお届け。

取材・文 / 岡本大介撮影 / 村井希衣

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」Blu-ray / DVD CM公開中

私たちのお笑いの教科書はしんちゃんだった

──本日はよろしくお願いします。きりやさんには以前、「映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝」の際にもソロでインタビューさせていただきましたが、今回はぼる塾の皆さんがそろってということで、さらに濃厚な「しんちゃん愛」を伺えればと思います。

きりやはるか よろしくお願いします! 今日はみんなで来られてうれしいです。

──まずは皆さんと「クレヨンしんちゃん」との関わりについて教えてください。世代的には、物心がついた頃にはすでにアニメが放送されていたネイティブ世代ですよね?

酒寄希望 そうですね。私は両親が「クレヨンしんちゃん」大好きで、物心ついたときにはすでに家に原作マンガがあるという、言わば英才教育を受けて育ちました(笑)。テレビアニメも観てましたけど、特に映画に関しては毎年必ず父と観に行くのが恒例行事でした。小学校、中学校、高校、大学、就職してからもずっと。反抗期のときでさえ、しんちゃんの映画だけは父と一緒に行ってましたから。

──反抗期でもですか? すごいですね。

酒寄 普段はあんまり口をきかなくても、映画の帰り道だけは「あそこ面白かったね」って盛り上がれるんです。今は私が親になったのでなかなか行けていないですけど、私にとってしんちゃんは、父との絆そのものですね。

メンバーカラーの衣装で取材に臨んだぼる塾。左からきりやはるか、酒寄希望、あんり、田辺智加

メンバーカラーの衣装で取材に臨んだぼる塾。左からきりやはるか、酒寄希望、あんり、田辺智加

あんり 私は兄が2人いるので、気付けば家ではずっと「クレヨンしんちゃん」が流れていました。なので、私が人生で初めて触れた「お笑い」は、間違いなくしんちゃんだと思います。しんのすけのおふざけをマネして、大人に怒られながら「あ、ここまではやっていいんだ」とか、「これはダメなんだ」とか、お笑いのさじ加減を学んだ気がしますね。

──ツッコミのイメージが強いあんりさんですが、昔はボケまくっていたんですね。

あんり そうですよ。とにかく笑いを取りたい子供だったんです。それで言うと、自分のキャラクター分析もしんちゃんで学びましたね。「しんのすけみたいにボケても反応が薄いけど、ネネちゃんみたいにちょっと強気で仕切る感じでいくと、友達の反応がいいな」とか(笑)。子供ながらにそんなことを考えていて、自分のキャラクターを確立していきましたね。

──処世術にもなっていたんですね。きりやさんはいかがですか?

きりや 私は以前にもお話ししたかもしれませんけど、姉がよくテレビアニメや映画のDVDを借りてきてくれて、それでハマりました。子供心に今でもすごく覚えているのが、しんちゃんと風間くんが喧嘩しちゃって、お互いに「ぷいっ」ってやるんですけど、それがエスカレートして「ぷいぷい合戦」になるお話があって、それがかわいくって面白くて、めっちゃ印象に残っていますね。

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット。ダンスを披露するカスカベ防衛隊 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2025

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット。ダンスを披露するカスカベ防衛隊 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2025

田辺智加 私はメンバー内では年長なので、10歳くらいのときにアニメが始まったんですけど、弟への影響がすごくて。気付いたら弟のしゃべり方が完全にしんちゃんになってたんですよ。「どうなるのよ?」って心配していたら、弟の友達もみんなしんちゃんになってて(笑)。

あんり わかる。みんな絶対に一度は通るよね。今思うとけっこう下ネタも多かったけど、それが逆に「やりたい」って思わせるというか(笑)。

田辺 そうそう。それを見て「すごい影響力だな」って思ってました。最近また原作を読み返してるんですけど、時代に合わせてアップデートされている部分もあって、やっぱりすごい作品だなって思います。あと、テレビアニメに一度「スイーツ女王」っていうキャラが出てきたことがあって、「私に似てるな」って思っていたんですけど、実際にモデルは私だったみたいで(笑)。

──え? そうだったんですね。

田辺 テレビの企画でシンエイ動画さんにお邪魔する機会があって、そこで思いきって聞いてみたら、ふんわりと「意識はしています」って(笑)。ずっと観てきた世界に自分が登場できたのは感動でした。

芸人目線で徹底解剖!あんりが震えた「3ジャンルの天才ツッコミ」

──では、「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」について伺います。インドを舞台に歌とダンスが満載のエンタメ大作でしたが、ご覧になっていかがでしたか?

きりや もう最高でした! 歌もダンスも一度見たら忘れられないし、思わず踊り出したくなっちゃうくらい。私は酒寄さんと一緒に映画館で観たんですけど、楽しすぎてずっと2人で揺れてました(笑)。

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット

あんり 私は田辺さんと観に行ったんですよ。実はしんちゃん映画は久しぶりだったんですけど、この映画は勉強になりすぎました。

──“勉強”ですか?

あんり 今回、私は職業病なのか、どうしても「ツッコミ目線」で観ちゃったんです。その結果、しんちゃんの世界には「3ジャンルの天才ツッコミ」がいることに気付いたんですよね。私、今日のためにメモしてきたんですけど……(と、メモ帳を取り出す)。

──ガチですね(笑)。ぜひ解説をお願いします。

あんり まず1人目は「引きのツッコミ」の天才、みさえです。列車の中で、ネネちゃんが「景色がキレイなところで写真撮ってママに送ってほしいな!」って言うシーンがあるじゃないですか。そこでしんのすけが「オラもキレイなおねいさんと写真撮ってかーちゃんに送っていい?」ってボケるんです。それに対して、みさえは「送らんでいい」ってツッコむんですけど、このとき、みさえは背中を向けてるんですよ!

あんり

あんり

酒寄 確かに。

あんり 正面を向いて「送らんでいい」って言うんじゃなくて、背中で語ることで「もう相手にしてないよ、引いてるよ」っていうニュアンスを出してるんです。カメラアングルも含めて天才だなって。この「引き」があるからこそ、しんのすけのボケがより際立つんですよね。

きりや なるほど。2人目は?

あんり 「知識のツッコミ」、風間くんです。カレー屋さんでしんのすけが「チャパティチャパティ~チャパティチャパティチャパティ」ってリズムよくボケてるときに、風間くんが「それはカバディだろ」ってツッコむんですよ。カバディってインド発祥のスポーツじゃないですか。ちゃんとインドに合わせたボケをするしんのすけもすごいけど、それを即座に拾える風間くんの知識量もすごくて、とても5歳児とは思えない(笑)。

きりや 風間くんがいないと、しんちゃんのボケが成立しないことって多いよね。

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット。ネネちゃん(左)と、あんりが「知識のツッコミ」の天才とたたえた風間くん(右)

「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」場面カット。ネネちゃん(左)と、あんりが「知識のツッコミ」の天才とたたえた風間くん(右)

あんり そう! 「マサオくん! 元々ダメだゾ!」っていうボケに「ダメで元々だろ。それを言うなら」って返す語彙力とか、本当に信頼関係がないとできないし。そして3人目が、「テクニックのツッコミ」、ひろしです。列車の中で、しんのすけが席に戻ってきたときに「おかえリーマンショ~ック!」って言ったシーン、覚えてます?

田辺 言ってた!

あんり あれ、本来なら「ただいま」と言うべきところで「おかえり」と言ってるのと、「リーマンショック」というワードボケの2つが重なってるんです。これってツッコむのがめちゃくちゃ難しいんですよ。先にどっちを処理すればいいんだ?ってなるじゃないですか。でもひろしはまず「恐ろしいこと言うなよ~」って返すんです。

きりや 「ただいまだろ」ではなく。

あんり そう! 先に「リーマンショック」のほうを処理して、そのあとで「ただいまだろ?」って言ってて。お客さんの耳に残る強いワードのほうを優先してツッコむという、これはベテラン芸人並みの高等テクニックですよ。

酒寄 野原一家、おそるべしだね。

あんり こんな2人に囲まれて育てば、そりゃしんちゃんのお笑いスキルも爆上がりするよね(笑)。私も思わず「あ、これパクろう」って思いましたから。

一同 (笑)

──田辺さんはどんなシーンが印象的でしたか?

田辺 私はやっぱりボーちゃんですね。そもそもこんなにたくさんしゃべってるボーちゃんを観たのは初めてだったのでビックリして。

きりや わかる。ここまでしゃべったのは初めてだと思う。

田辺 正直、これまでボーちゃんってそこまで気になったことはなかったんですけど、今回の映画を観てすごく気になっちゃって、酒寄さんに「ボーちゃんが気になる」って言ったんです。そしたら「映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃」を薦められて観てみたら、ボーちゃんがすごくいい味を出していて、ツボに入ったんですよ。これまで気付かなかったんですけど、「私ってボーちゃんのことが好きなんだな」って再認識しました。あと、これは感覚的な話なんですけど、映画の色使いもすごく好きでしたね。最近のアニメってデジタルでパキッとしてるのが多いと思うんですけど、しんちゃん映画はどこか懐かしい、平成のままのポップな色使いが残っていて、それがインドの極彩色と合わさってすごいパワーになってるんです。この「絵ヂカラ」だけでご飯3杯いけます(笑)。

田辺智加

田辺智加

親になってわかる「野原夫妻のすごさ」と、変わらぬ「ひろし愛」

──酒寄さんはみさえと同じく子育て中の親でもあります。親目線でご覧になって、いかがでしたか?

酒寄 もうね、みさえが偉すぎます。自分の子供だけじゃなくてカスカベ防衛隊のみんなを連れてインドまで行くなんて、確実に胃に穴が開きますよ(笑)。

あんり 確かにそれはすごい。

酒寄 私なんて、息子1人を熱海に連れて行くだけでも大変だったのに(笑)。

田辺 それがインドだからね。

酒寄 そう。しかも、しんちゃんとはぐれてしまって一番不安なはずなのに、マサオくんやネネちゃんのことを平等に心配してあげていて。再会したときに、しんちゃんよりも先にマサオくんを抱きしめるシーンがあるんですけど、あそこはもう泣きました。「あぁ、お母さんだな」って。自分の不安を押し殺して、預かっている子供たちを安心させようとする姿に、親としては尊敬しかないですね。もちろん、ひろしも父親としてかっこよかったですし。

酒寄希望

酒寄希望

きりや いやもう、今回のひろしも最高でしたよ!

あんり はるちゃんは昔からひろしが大好きだもんね。

きりや もう完全に理想のタイプなので。今回も、操縦できるかもわからない飛行機に乗り込んで「俺だって、まだ眠ってる能力を120%目覚めさせてやる!」って叫ぶところ、むちゃくちゃすぎて笑っちゃうんですけど、でも家族のために必死な姿が本当にかっこよくて。

あんり あそこで「Danger Zone」が流れるのもズルいよね(笑)。しかも歌詞もうろ覚えで適当に歌ってるのがまたひろしらしい。

きりや そうそう! カスカベ防衛隊のみんなも一緒になって「ハーイウェーイ トゥーザー デンジャーゾーン!」って歌ってて、あのシーンはずっと笑ってました。やっぱりひろしは、決めるところは決める男なんです。

──きりやさんは以前「しんちゃんに憧れる」とおっしゃっていましたが、今回のしんちゃんはいかがでしたか?

きりやはるか

きりやはるか

きりや あいかわらずかっこよかったです。インドでひとりぼっちになってもすぐに現地の人と仲良くなったりと、たくましいですよね。ボーちゃんがだんだんと変わっていっても、しんちゃんはずっと変わらずに接していて、どんなボーちゃんになっても友達でいたいと思っているところとか、めっちゃ感動しました。うまく言えないですけど、しんちゃんは強い芯を持っていて、決してブレないところがいつも最高だなって思います。