映画「
フランス映画「パリタクシー」をリメイクした本作は、タクシー運転手の宇佐美浩二が、85歳の高野すみれを乗せたことから始まるヒューマンドラマ。東京・柴又から神奈川・葉山へと向かいながらすみれの思い出の地を巡るうち、彼女の壮絶な過去が明らかになっていく。倍賞がすみれ、木村が浩二に扮した。
倍賞は「私にとって、生涯忘れられない作品だと思っています」とコメント。「山田監督の『男はつらいよ』シリーズでは“さくら”という役でしたが、今回は“すみれ”という名前に変わりまして。高級バッグを持ったり、メイクをしたり、マニキュアを塗ったり……そういう役をあまりやったことがないので最初は戸惑いました」と振り返り、撮影現場でネイルの手直しをしていたとき、暗がりで作業する倍賞とスタッフに木村がそっとスマホのライトを差し出したことがあったそうで、「あのときは本当にありがとう」と感謝する。木村は照れくさそうに会釈しつつ、上映後の会場の空気に触れながら「皆さんが良き理解者に見えます」と観客に語りかけた。
本作をもって、山田の監督作70本目の出演を果たした倍賞。そんな山田組の現場を「学校のよう」と表現し、「お芝居の勉強ではなく、人間としてどう生きていくか。作品を通してそれを考える。私にとって人間としての学びの場です」と、長年の信頼と敬意を込めた言葉を贈る。一方、木村は映画「武士の一分」以来、実に19年ぶりに山田と組んだ。「(山田組は)豊かさを教えてくださる。人の気持ちがちゃんと乗っかっていて、スタッフの皆さんも『うれしい』という空気があって。そういう現場で芝居をさせていただけるのは、すごくありがたいことでした」としみじみ口にする。
2人の言葉を受け、山田は「映画を作るっていうのは、とても複雑なもの。主演俳優、サポートする俳優、大勢のエキストラ、そしてスタッフ……その全員がワーワー言いながら作り上げていくのが映画。つらいこともあるけど、それも含めて『楽しかった』と思いながらクランクアップできるのが僕の理想」と語り、今回の現場に思いを馳せて「ああ、楽しかったと感じております」と顔をほころばせた。
迫田が演じたのは、すみれの結婚相手で、彼女の人生に不穏な影を落としていく男・小川。すみれに対する厳しい言動について「大好きだからこそ、ああいう行動を取ってしまう」「すべての理由は“好きだから”。それを忘れないように演じました」と説明する。山田から「もっと二枚目で。色気を出して」と演出されたことが難しかったとも明かした。
また浩二の妻役で出演した優香は、劇中で木村が見せる“アイマスク姿”に触れ、「裏設定があったんですよね?」と説明を促す。木村が「夜勤明けの人が昼間に眠るとき、カーテンを閉めていても眠りにくいだろうなと思って。そんなとき、妻が使っていたアイマスクが部屋にあって、それを目に乗せて眠る。そこに彼女の存在を感じて、安心して眠れるんじゃないかと思った」と細やかな設定を補足すると、観客から感心の声が漏れる。娘役の中島は、初参加の山田組を振り返り、「呼吸の仕方からご指導いただきました」と努力の跡をうかがわせた。
最後に山田は、映画に込めた願いを語る。「本作に出てくるタクシーの運転手も、懸命に暮らしている庶民の1人。そんな人たちが幸せになれる国であってほしい、エールを送りたい、という気持ちが僕の中に切実にあって、この映画を作りました」と力強く述べ、改めて観客に感謝を伝えた。
「TOKYOタクシー」は11月21日より全国でロードショー。
映画ナタリー @eiga_natalie
「TOKYOタクシー」は…
倍賞千恵子「生涯忘れられない作品」
木村拓哉「豊かさを教えてくれる現場」
完成披露レポート(写真11枚📸)
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山田洋次、迫田孝也、優香、中島瑠菜も登壇
#TOKYOタクシー