「旅と日々」三宅唱が映画から得る“驚き”に言及、サンセバスチャン映画祭のQ&Aに登場

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映画「旅と日々」が、スペインで行われている第73回サンセバスチャン国際映画祭のサバルテギ・タバカレラ部門に出品。現地時間9月25日の上映時に行われたQ&Aに、監督の三宅唱が登壇した。

第73回サンセバスチャン国際映画祭のQ&Aに登壇した三宅唱

第73回サンセバスチャン国際映画祭のQ&Aに登壇した三宅唱

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つげ義春のマンガ「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」をもとにした「旅と日々」は、うだつの上がらない脚本家・李(イ)が、旅先のおんぼろ宿で“べん造”と名乗る宿主と出会い、人生と向き合う物語。シム・ウンギョンが李、堤真一がべん造を演じ、河合優実、髙田万作もキャストに名を連ねた。

「旅と日々」ティザービジュアル

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多様で驚くべき映画や、新しいアングル・フォーマットに挑戦する映画を上映するサバルテギ・タバカレラ部門。約230席のタバカレラセンターには老若男女の映画ファンが詰めかけ、三宅を温かい拍手で迎えた。三宅は映画化において難しかった点を聞かれると「つげ義春さんはマンガ表現の本質を追求している人であり、新しいマンガの魅力を発見しようとする作家です」と切り出し、「僕自身にとっての挑戦は、映画における“本質”を捉えること、新しい可能性を見つけることでした」と振り返る。

第73回サンセバスチャン国際映画祭のQ&Aに登壇した三宅唱(中央)

第73回サンセバスチャン国際映画祭のQ&Aに登壇した三宅唱(中央) [拡大]

続けて「こんなに美しい驚きがあるとは思わなかった」という観客から「作品を作る中で想像していたこと、自分を驚かせたこと」について質問が。三宅は「日常を生きていると、最初は驚いたこともすぐに慣れてしまう。それは死ではないけれど、“生きている”という感覚もしない状態のように思います。そんな中で、映画を観ることは“もう一度驚く”体験だと感じています」と吐露。「ただ、意味もなく理解不能なショットをつなげるだけでは驚きにはならない。物語をきちんと語りながら、予想と少し違うショットへとつなげていく。ショットが切り替わるたびに納得もあるし、同時に驚きもある。そこが重要です」と制作に込めた意図を伝えた。

劇中での2つのストーリーをつなぐ構造について問われた三宅は、「この映画は“旅”を題材にすると同時に、“映画そのもの”を題材にする作品でもある」と言及。「まるで初めて映画館に入って映画を観たときのように、言葉で説明できない“驚き”を生み出したい。例えるなら、夢を見ているときに“これは夢だ”と夢の中で気付くような感覚。起きてから“夢だった”とわかるのではなく、夢の中で一度目覚めるような体験に近い」と繊細な表現を意識したことも打ち明ける。

「旅と日々」場面写真。左から堤真一演じるべん造、シム・ウンギョン演じる李

「旅と日々」場面写真。左から堤真一演じるべん造、シム・ウンギョン演じる李 [拡大]

イベントでは、小津安二郎の作品との類似点について尋ねられる場面も。三宅はまず「小津の映画は自分にとって非常に大切ですが、“空いているショット”をまねしているわけではありません」と回答し、小津から受け継ぎたいと思っていることが“キャメラが登場人物をどう見つめるか”だと説明する。「幸せなときも悲しいときも、キャメラとの距離がまったく変わらない。これは簡単にできることではない」と彼から受けた影響にも触れた。なお終了後には三宅にサインを求める観客や、「美しい映画だった!」「本当に素晴らしい」などの感想を届ける人々の姿も見られた。

「旅と日々」は、11月7日より東京・TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国でロードショー。

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©2025『旅と日々』製作委員会

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