映画「
インターナショナル・コンペティション部門に正式出品された「旅と日々」。上映に先駆けて行われた記者会見で三宅は、1作の中で夏と冬を描くことについて「1本の映画の中で別の季節を感じることによって、観客が新しい経験をできるのではないかと思いました。さまざまな天気の移り変わりを映画を通して感じること、それが“映画を観ること”につながればいいなと考えました」と述懐する。また「つげ義春さんは非常に純粋な形でマンガ表現を切り拓いている方で、いわゆる伝統的な物語構造に縛られずにマンガと向き合い続けている」と前置き、今作は自身にとって「映画そのものの本質的な部分を探求できる、そういう挑戦だった」と語った。
「つげ義春作品からインスピレーションは得た?」という質問には、シム・ウンギョンが「つげ義春さんのマンガはもともと知っていましたが、今回の映画の話をもらってからちゃんと読むことができました。人と人の間にある不思議な絆について描いていて、とてもハマりました。念願の三宅監督と仕事をできたことがとてもうれしいです」と回答。河合も「つげさんの原作のムードを三宅さんが映画として捉えようとしているのが面白かったです。私も三宅さんと仕事をしたかったのでうれしかったです」と話した。
また、脚本家が韓国人という設定にした経緯を尋ねられると、三宅は「シム・ウンギョンさんと仕事をしたいということから考えました。彼女という異邦人の目を通して自分の国を描く。それはキャメラを通じて世界を捉えようとする、そのこととすごく似ていると感じます。彼女が素晴らしい俳優であることを知ってほしいです」と伝える。
続いて、三宅たちは満席となった上映会場へ向かう。まず三宅が「私たちの映画を観に来てくれた皆さんに感謝します。ランチ後の上映は眠くなるものですが、ご安心ください。次々と移り変わる映像とシーンの連なりで、皆さんの目も耳も、その他すべての感覚を心地よく目覚めさせます。映画をお楽しみください。ボンボヤージュ!」と挨拶。シム・ウンギョンは「今日ここで映画を観ることを楽しみにしていました」、河合は「世界のどの国の人でも共有できる感覚がある映画」と会場へ語りかける。そして本編上映後、観客のスタンディングオベーションは5分以上続いた。
上映後のQ&Aでは三宅が「13年前に来て以来、ここロカルノに戻って来たいと思っていた」と深い思いを口にする。シム・ウンギョンは「今作では今までと違うアプローチをしました。役になるというよりも、そのまま(作品の中を)生きるということを意識しました」と述べ、河合は「その人物のバックボーンよりも、目の前にある風景や見知らぬ人に対してどのように反応するかという、“今この瞬間”をすごく意識しました」と説明した。
「人と人との関わりが、とても深いところでされている作品だと感じた」という感想に対して、三宅は「お互いの名前も名乗り合わないような、旅から帰ったらもしかすると忘れてしまうかもしれないような短い出会いを描こうと思いました。他者への不寛容や恐れが広がる世界で、他者同士がどんな時間を過ごせるのか。物語を描くことで世界の別の可能性を作りたいと考えていたし、映画監督としてはそういったテーマをどのようにフレームに収めて撮っていくのかということも重要だと感じています」と言葉を紡いだ。
三宅は本編前半と後半で意識した点にも触れ、「前半は初期映画が持っていた記録性について考えていました。後半にいくにつれ、古典的なアメリカ映画や、それに影響を受けた日本映画をベースに作りたいと。結果、観た人から“新しい古典映画”と言ってもらえるものになりました」と述べている。
「旅と日々」は、11月7日より東京・TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国でロードショー。
※高田万作の高は、はしご高が正式表記
映画「旅と日々」30秒予告
三宅唱の映画作品
リンク
関連商品
keills @bxnutk9464
三宅唱、シム・ウンギョン、河合優実がロカルノ国際映画祭で「旅と日々」を語る
「旅と日々」は、11月7日より東京・TOHOシネマズ シャンテ、テアトル新宿ほか全国でロードショー。
https://t.co/lwtofe3SlE