
映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第21回 [バックナンバー]
自分の家のトイレにも行けなくなった「シャイニング」
どうしてくれるんですかナタリーさん
2025年6月26日 19:30 4
これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・
第21回のお題は、ホラー映画の名作として名高い「
文
とにかく怖いものが無理なんです
こんにちは、ミルクボーイ駒場です。今回鑑賞したのは、1980年公開の「シャイニング」です。事前情報はまったくなかったのですが、めちゃくちゃ有名なサスペンスホラー作品ということです。「シャイニング」を観るにあたり映画ナタリーさんから「駒場さんはホラーが苦手だと聞いていますが、有名な作品なのでパロディなどで見たことあるようなシーンなどがあり、もしかしたら観てもらえるかもしれません」ということを言われました。
そうなんです、僕はホラーがめちゃくちゃ苦手なんです。とにかくお化けが怖いんです。軽めのお化け屋敷とかも無理ですし、なんならテレビで流れるホラー映画のCMですら怖くて目をふさぎます。CMなので急に始まるので腹も立ちます。昔から怖い話とかも大嫌いで、小学生の頃の夏休み、普段観れない「ポンキッキーズ」が観れてテンション上がるのに、「学校のコワイうわさ 花子さんがきた!!」という怖いアニメのコーナーがあって、そこだけ本当にやめてほしいと思っていました。怖い話を聞くとそれが脳からまったく消えず、むしろそれを勝手に誇張して記憶してしまいます。今でも花子さんの怖い話とかは脳にこびりついてしまっているので、ロケ先が古めの学校とかで、どうしてもトイレに行きたくなったときなどはめちゃくちゃドキドキしながら正直9割くらいで用を切り上げ、戻るときはスタッフさんがいるところの手前までめっちゃダッシュで戻って、直前から歩いて何事もなかったかのように合流したりしています。もう40歳目前なのに。大人になったら怖くなくなると思ってたらそんなことはなさそうです。たぶん、じいさんになっても怖がってると思います。
自分たちの番組で怖い話を聞く企画がありましたが、30分間本気で耳を塞いでいたこともありました。MCですが関係ないです。怖いものは怖い。“怖いけど聞きたい”とかの“怖いもの見たさ”とかの感覚もまったくなく、脳にこびりつくのがわかってるので、本当に怖い話を体に入れたくないんです。高校時代、友達の家に泊まり「リング」をみんなで観るみたいなノリになり、その当時はまだ「怖いねんー」とか言える感じではなく「まぁまぁええよ」くらいの感じで見栄を張っていました。でもいざ始まったら怖すぎて、ほぼ薄目で観ていました。最後の貞子が出てくるところはみんなが画面に集中しているのをいいことに完全に目を瞑って観ませんでした。「貞子めっちゃやばかったなぁ!」とか話は合わせましたが、実際観てはいません。この先も観ることはないと思います。とにかく怖いものが無理なんです。
そんな僕ですが、ナタリーさんも「観れるかと思います」と言ってくれていたので「シャイニング」を観ました。
怖くなくなる日が来るのかな
結論から言うと、めちゃくちゃ怖かったです。
そして脳に完全にこびりつきました。どうしてくれるんですかナタリーさん……。
お化けがドンとか、幽霊がドンとかの話ではないですが、全体的に流れる不穏な空気がずっと奇妙でした。別に映像がどんよりしてるとか全体的に暗いとかではないのになんか奇妙。意図的なのかわかりませんがオープニングに流れる出演者のテロップの文字が、初期のワープロで打ったような字体で、映画でこんなシンプルな字体ある? 仮で文字入れてそのまま忘れてた?っていうくらい無機質でそれも奇妙。そして主人公、奥さん、ほかの人物も顔がみんな奇妙。あとカメラの目線もずっと奇妙。子供が遊ぶ乗り物の後ろから追いかけるところなんて、「何か起こるなら今や」と心構えしているタイミングを3回くらいスルーされて何も起こらないとか。「頼むからそろそろ何か起こってくれ、じゃないとこっちのメンタルもたへんで」とも思ってしまういやらしさ。奇妙でした。あとタイプライター側からの目線、あんなの見たことありません。奇妙すぎました。
奇妙な空気感に奇妙な音楽、定期的に入ってくる気持ち悪い画、中盤からは今どの世界なのかわからなくなる奇妙さも加わり、より奇妙の深みに。
ジョジョ以外で、こんなにも奇妙という言葉がしっくりくるのはほかにないと思います。
そして奇妙の一辺倒ではなく、後半からラストにかけてまではちゃんと“恐怖”も与えられ続け、“奇妙”に“恐怖”が合わさり“妙怖(みょうふ)”とでも言いましょうか、いや言わんときましょうか。でもそれくらいしんどくなります。それなのに、最後の最後のシーンはストンと終わられて、「あれ?」と思っているとじっくり見れば見るほどまた奇妙に。ラストに奇妙の極みが待っていました。
鑑賞後、いろんなところに力が入りすぎてめちゃくちゃ疲れました。怖かった。
今回の「そんなこと言うてた?」ですが、怖くて特に思うこともなかったのですが、強いて言うなら主人公が作家してるって言ってました? もうそんなレベルです。最初のほうで言ってなかった気がしました。まぁ途中でタイプライターで何か書いていたのでそういう職かとわかりますが、最初に一言「物書きをしていてね」など言ってくれてもいいじゃないですか。怖いのは十分怖いので、せめて情報だけでも整えてほしかったです。(編集部注:主人公は作家志望ではあるものの、職業としては舞台となるホテルの管理人)
「シャイニング」を観たせいで、今またすべての怖い話とかの記憶がよみがえってきて、自分の家でも夜トイレに行くのが嫌になってます。ロケ先のトイレから戻るダッシュもより速くなりそうです。ホラー映画好きの方に、楽しみ方をぜひ聞いてみたいですね。怖くなくなる日が来るのかな。でも、まだまだいろんな作品を鑑賞したいと思います!
編集部から一言
1年前、この連載で「夏なのでホラー映画を観てもらいたい」と提案したんですが「ホラーが苦手なので」とNGを食らい、それでもいろんな映画を観てもらう連載としてはホラーを避けるのも難しいなと思っていました。そこで知り合いから「ホラーは苦手だけど、初めて『シャイニング』を観てみたら知ってる場面が多くてちょっと笑った」みたいな話を聞き、確かに今はキンタロー。さんもジャック・ニコルソンのモノマネをしてるし、思い出して笑っちゃうこともあるかも……と軽い気持ちで駒場さんに観てもらったらこんなに怖がられるとは! さすがに申し訳なかったです! でも原稿はあまりにも面白かったので、これを悪いテレビマンが読んで、駒場さんにホラー系仕事をオファーしてしまわないか心配です。
「シャイニング」(1980年製作)
バックナンバー
松本 @matsushin1978
駒場さんがいろんな映画を見る連載、更新されました。怖いのNGだと言ってる駒場さんに「でも『シャイニング』ならパロディとかで知ってる場面多いし、キンタロー。さんのモノマネのあれ思い出して笑えるかも!」と勧めたら予想以上に怖がりで全然ダメでした!申し訳ない!(でも超おもしろかった) https://t.co/qIj7QRWfuU