園子温「ひそひそ星」上映で25年前の自分に対し「“彼”の純粋な衝動をリスペクト」

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第16回東京フィルメックスが11月21日より開幕し、オープニング作品の「ひそひそ星」が同日に、東京・TOHOシネマズ 日劇にて上映された。

「ひそひそ星」Q&Aイベントの様子。左から園子温、神楽坂恵。

「ひそひそ星」Q&Aイベントの様子。左から園子温、神楽坂恵。

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モノクロームの映像を中心に構成された「ひそひそ星」は、園子温が監督・脚本・製作を担当した自主映画。1990年に手がけた脚本と絵コンテをもとにするSF作品で、滅びゆく運命にある人間たちに日用品などの荷物を届けるアンドロイド女性の旅路をつづる。女性型ヒューマノイド、鈴木洋子“マシーンナンバー722”を神楽坂恵が演じ、ほか出演者には遠藤賢司、森康子らが並ぶ。

「ひそひそ星」の歩んだ軌跡を感慨深げに語る園子温。

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上映後にはQ&Aが行われ、園と神楽坂が登壇。制作の動機を聞かれた園は「この作品の脚本と絵コンテを仕上げた頃、僕は自主映画を制作していたんです。でもそのときは予算的に都合がつかなくて途中で断念したんですね」とコメント。その代わりに制作したのが「部屋 THE ROOM」であることに触れつつ、「25年前の僕、もう“彼”と言ってもいいと思うんですけど、その彼が純粋に映画を作ろうとする衝動に対してリスペクトを忘れないようにした」と制作時の思いを振り返る。

神楽坂恵

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園の妻でもあり、主演のほかにプロデューサーも務めた神楽坂は「引っ越しのたびに、本作の脚本と絵コンテをずっと見てるんです」と述べ、「いつか撮影できればと願っていましたし、その作品に出演できて本当にうれしいです」と声を弾ませる。その声を聞いた園は「絵コンテの厚みがすごくて。引っ越すたびにすごい量のダンボールを運んでいました」と語り、はにかんだ。

イベントでは観客からの質問も受け付けられ、1997年に公開された園の監督作「桂子ですけど」と本作との類似を指摘する意見が。その問いに対して園は「『桂子ですけど』は、その当時実現できなかった本作のリファレンスなんです。作れないことが悔しくてあの作品が生まれたんです」と告白する。続けて「その当時僕は“日常”が撮りたかった。日常とは繰り返しであり、永遠的なものであり、宇宙的なものであると思っているんですね。だから(「ひそひそ星」の舞台である)宇宙船も、(「桂子ですけど」の舞台である)高円寺も変わらないと考えています」と制作の根底にある思想を明かす。

その後もロケ地である福島への思い、ロケ地で出会った人々に出演を依頼した理由、ロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフから受けた影響など多岐にわたるトピックを語っていく園。劇中に登場するミドリガメに関して指摘がおよぶと、「よく気づきましたね」と満面で答え、「あれは『ラブ&ピース』に登場する亀ちゃんなんですけど、もう園組の一員ですよ」と冗談交じりに語り、会場の笑いを誘った。

なおイベントでは「ひそひそ星」が2016年5月に東京・新宿シネマカリテにて公開されることが発表された。

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