電大初ツアー、凄腕プレイと楽しい“おしゃべり”で存在感提示

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7月6日、東京・新代田FEVERで電大の1stツアー「DD00」のファイナル公演が開催。満員の観客を前に全16曲を演奏し、熟練した演奏テクニックとゆるゆるのトークでフロアを惹きつけた。

写真は電大1stツアーのファイナル公演となった、7月6日の新代田FEVERライブの様子。

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川西幸一(Dr, Vo)

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手島いさむ(G, Vo)

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EBI(B, Vo)

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場内の照明が暗転すると同時に、ステージを照らすライトがフラッシュのように明滅するのを受けメンバーが上手から登場。フロアのあちこちから沸く歓声を背に、EBI(B, Vo)が忘れ物をしたらしくいったん袖に下がるハプニングを挟みつつ、ツアーファイナルは熱狂の中スタートした。

1曲目は1stミニアルバム「Δ結線」より「炎のモーニングコール」。EBIのシャウトや川西幸一(Dr, Vo)の「トーキョー!」という煽りが、場内の興奮に火をつける。続く「黒い炎」は、原曲ではホーンの音色だったメロディを手島いさむ(G, Vo)のギターで置き換えるなど、工夫を凝らしたアレンジに。スリーピースバンドならではのダイナミズムで、ぐいぐいと会場の空気を牽引していく。

かと思えば、電大のライブのもう1つの魅力であるMCが炸裂する。テッシーが挨拶もそこそこに「みんなで息し過ぎ!(笑)若干酸素が薄いよ」とこの日の観客の興奮ぶりに言及したのを皮切りに、とめどもない“おしゃべり”がスタートする。「全国廻ってきたけれど、僕が率先してしゃべり出すはめになるんです」とテッシーが言うと、川西が「電大の頭脳、テッシーです!」「電大の感性、EBIです!」とメンバー紹介。するとテッシーが「電大のわんぱく小僧、川西さんです」とフォローを入れるなど、仲の良さを感じさせるトークで笑わせる。

そんな楽しいMCコーナーが影響したのか、続く「白くぬりつぶせ」ではテッシーが「オレ(始まり)だよね?」とメンバーに訊いてしまうほど。しかし演奏はさすがの盤石ぶりで、4曲目「ロック幸せ」はバンドアレンジを施して原曲の持つ打ち込みのテクノポップ感とは全く違う表情を見せつける。さらに「豪快男児」では歌い出しを担当する川西の力強いボーカルが、オーディエンスを魅了する。楽曲ごとにさまざまな魅力を提示する、メンバーのスキルフルな一面が感じられるひとときとなった。

そして再び“おしゃべり”タイムが始まる。「この(全国ツアー)12本、各地でしゃべり倒してきたんで今日もそうなると思います!」と川西が言ったかと思えば、ベースを肩から降ろしているEBIを見てテッシーが「すごい汗かいてるね!」と無邪気に話しかける。それを受けたEBIは「こっち(ステージ)は照明があるから暑いんだよー」と話すと、川西が前日のライブの反省を踏まえ、ステージ上に扇風機を用意したと告白。そのようなメンバーのとめどもないおしゃべりに、ファンは一喜一憂していく。

さらに話はツアーの四方山話に及び、テッシーの車で全国を巡回したという話、その際にテッシーが道路の縁石に乗り上げて車のエアロパーツが取れてしまったというエピソード、川西とテッシーが昔組んでいたバンド・ストリッパーでツアーに出たときの話など、話題はあっちこっちに飛び火する。しまいに、EBIが次の曲に入ろうとベースでフレーズを弾き始めるもテッシーがまた新しい話題を始めてしまい、「いいよ好きなだけ話しなよ! 今日で最後なんだから!」と苦笑する始末だ。

続くブロックでは、MCとは趣を変えしっとりしたテッシーのボーカルが響く「デーゲーム」、EBIがアコースティックギターで軽やかなカッティングを鳴らす「水の戯れ ~ランチャのテーマ~」を演奏。「ランチャ」では、フロアを中央で2つに分け、コーラス部分を輪唱させる。「せっかく録音してるから」(テッシー)という思いつきからだったが、オーディエンスの協力により見事な輪唱がFEVERを包み、一体感を生んだ。

「ランチャ」の間中、ずっとシェイカーを振っていたため右手がだるくなってしまったテッシーを川西が茶化す、というくだりを挟み、電大というバンド名の由来を披露。さらにバンドメンバーの3人のみならず、PA担当のツッシー(対馬智司)も広島電機大学出身であり、Oマネージャに至っては“でんちゅう”(田園調布中)出身だというオヤジギャグで、会場を沸かせる。

また、当初は「Electric University」というバンド名だったのが、奥田民生の「電大に決まってるやろー!」という一言で正式なバンド名が決定したというエピソードを明かし、「奥田さんはときどき現れてヒントをくれる。『歌詞は全部広島弁なんじゃろ?』と言われ、川西さんがそれに影響されて作った曲を今からやります」と次の曲である「By The Way」を紹介した。そして続く「野生の証明」はマイナーコード進行がドープな雰囲気を生み出し、メインボーカルをとるEBIの張りのある声がシリアスな空気で場内を満たす。

さらに、昨年開催されたユニコーンのアリーナツアーでキー曲となった「メダカの格好」を演奏。原曲は4つ打ちのリズムとシンセベース、そして阿部義晴のマウスワウが強烈な印象を与える打ち込みのナンバーだが、電大バージョンではシンコペーションの効いたギターフレーズが前面に出たハードロックなアレンジに。また2009年にリリースした“怪曲”「半世紀少年」は、川西の叩く8ビートのリズムとEBIがつま弾くルート音のベースの上で、テッシーがさまざまなロックの名曲のフレーズを奏でる遊び心あふれる仕上がりに。この日はユニコーン「ケダモノの嵐」、DEEP PURPLE「Highway Star」などのフレーズをちりばめ、ファンを楽しませた。

そしてこの日何度目かのMCコーナーに突入する。テッシーが「何言ったらいいのかわからん」とつぶやくと、すかさずEBIが「もしかして泣きそうなんですか?」と茶々を入れる。それを受け川西が電大マフラータオルを差し出すも、汗でびっちゃびちゃになっており使い物にならないという落ちに。また、先日3人で手相芸人こと島田秀平に手相を見てもらったという話を披露し、テッシーが一番エロい、EBIは神秘十字線が3つもあった、川西は手相もすごい、など3人がさまざまに感想を述べる。

熟練のプレイと楽しい“おしゃべり”で進行したライブも、いよいよ佳境に。1991年にリリースされたEBIのソロアルバム「musse」の収録曲「哀しみのGarden」をしっとりと演奏すると、フロアから熱狂的な歓声が起こる。さらに「ユニコーンのツアーではずっと吊られて演奏してたから、足下がなんかヘンな感じ」(テッシー)という「手島いさむ物語」では、ダイナミックなリズムと奔放なギターソロで観客を魅了する。そしてライブの最後は、ミニアルバム「Δ結線」のリード曲「風天」を演奏。電大というバンドの魅力を凝縮したような3人のユニゾンボーカルとストレートなロックンロールサウンドがFEVERを包み込み、本編は終わりを告げた。

アンコールの声に導かれステージに再度姿を見せたメンバーは、「Electric University」Tシャツにお召しかえした姿。「アンコールありがとうございました。……しゃべって終わるんで(笑)」という川西のふざけた言葉に軽めのブーイングが起こりつつ、再び軽妙なトークが始まる。人間ドックを受けた川西は「全部健康だったんだけど聴力だけ手書きで『難聴』って書かれた、ABCDじゃなくて『難聴』って(笑)」、テッシーは「前頭葉が若干萎縮し始めている、その代わり海馬とか小脳とかは人より大きいので、想像力は衰え始めてるけど記憶力とかは抜群!」と年齢に見合った健康に関する話題で笑わせる。

さらに「報告しなければならないことが」と口にしたテッシーに対し、川西から「結婚でもするの?」と茶々が入るも、アルバム制作とそれを携えた2ndツアーの開催が発表されると、観客から大きな拍手が起こった。それを受けEBIが「この2人のおっさんと廻るのたいへんなんだよー」と困ったような表情を見せると、テッシーから「君もたいがいおっさんだからね」と冷静なツッコミが入る。さらに次作のタイトル案として「幻魔大戦」「FEVER FEVER FEVER」など自由な提案を挟みつつ、次の楽曲「payday」を披露。これはテッシーが2011年にリリースしたソロアルバム収録曲の電大バージョンで、弾むようなリズムが耳に残るゴキゲンなロックンロールナンバーだ。そして最後に「Δ結線」収録曲の「ビッグアーチ」を演奏し、記念すべき1stツアーを笑顔で締めくくった。

なお電大の2ndツアー「DD01」のチケットは、現在オフィシャルサイトにて先行予約を受付中。1stツアーに参加できず涙をのんだファンは、ぜひこの機会を利用しておこう。

電大全国ツアー「DD00」2012年7月6日@東京・新代田FEVERセットリスト

01. 炎のモーニングコール
02. 黒い炎
03. 白くぬりつぶせ
04. ロック幸せ
05. 豪快男児
06. デーゲーム
07. 水の戯れ ~ランチャのテーマ~
08. By The Way
09. 野生の証明
10. メダカの格好
11. 半世紀少年
12. 哀しみのGarden
13. 手島いさむ物語
14. 風天
<アンコール>
15. payday
16. ビッグアーチ

※記事初出時、本文の一部に誤字がありました。訂正してお詫びいたします。

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