Zilqy「Vacant Throne」インタビュー|世界を目指すグローバル女性メタルバンド誕生

今年9月に突如として発表された、「日本発Global All Female Metal Band」を標榜する4人組女性メタルバンドZilqy(ジルキー)のデビュー。元AldiousのギタリストToki(G)、LOVEBITESのメンバーであったMiho(B)を擁する新バンドの始動は、メタル / ラウドロックファンに好意的かつ熱狂的に受け止められた。

そんな彼女たちの1st EP「Vacant Throne」が11月5日にリリースされた。先行配信中の「Carry On」を含む全5曲入りの本作は、メンバーが一切の妥協をすることなく時間をかけて作り上げた入魂の1枚。世界に打って出る4人にとって試金石とも言える作品だ。音楽ナタリーではZilqyのデビューを記念してメンバーにインタビュー。結成の経緯から、未来のビジョンまでたっぷり語ってもらった。

取材・文 / 冬将軍

Anna、Toki、Miho、KanoがZilqyで証明していきたいこと

──始動発表早々、メタル好きやラウドロック好きからの反響がすごいですね(参照:元Aldious・Tokiや元LOVEBITES・Miho擁する新バンドZilqy(ジルキー)デビュー)。

Miho(B) とてもありがたいことに、多くの方に期待を寄せていただいていて、想像以上でした。

──そんな期待に応える、Zilqyの活動に対する意気込みをお一人ずつお願いします!

Anna(Vo) 自分は今までメタルやラウドロックはあまり歌ったことはなかったんですけど、実は思春期のルーツにあるようなジャンルなんです。なので、自分が音楽を好きになったきっかけに帰還できているような気持ちですね。自分は暑苦しい人間だと思うので、そのパッションを発信していけたらいいなと思っています!

Toki(G) 私はギターを弾き始めた頃から日本各地はもちろん、世界中でギターを弾きたいという夢があるんです。ギターを始めた頃にドイツのフェス「Wacken Open Air」の映像を観て、すごい人数の観客がメタルバンドのライブで盛り上がってる様子に衝撃を受けました。あのステージに立ちたいという憧れがありますね。前のバンドではコロナ禍の影響で、なかなか海外でのライブが叶わなかったこともあって。その夢を叶えたい野望を胸に、海外でも日本でもギターを弾きたいと思っています。

Toki(G)

Toki(G)

Kano(Dr) Kanoはこういうヘビーな音楽がめっちゃ好きなんですけど、自分がやりたいと思っても、日本のガールズバンドでこういうジャンルをストレートにやってるバンドが全然いないなと思っていたんです。だから誘われたときは「キターッ!」と思いました。サポートではいろいろやってはきたんですが、オリジナルでもそういう音楽ができるんだと思いましたし、ヘビーなサウンドを日本で、しかもガールズバンドがしっかりできるんだぞ!というのを自分たちが証明していきたいです。

Miho 前のバンドを辞めてから約4年、ようやくこのバンドの結成を発表できました。これまではトラディショナルなメタルをやってきたんですけど、私はニューメタルも大好きで。そういう音楽性のバンドもいつかやりたいという気持ちがありましたし、バンドを辞めてしばらくはセッションやサポートで活動してきましたが、やっぱりバンドをやりたいなと。準備に時間がかかりましたけど、本当に素晴らしいメンバーがそろいまして、この4人での活動が本当に楽しみです。

Tokiの熱い思いがきっかけで

──そもそもZilqyはどういった経緯で結成されたんですか?

Toki 私が世界へ向けてギターが弾きたい、「日本のガールズバンドはこれだけすごいんだ!」と見せていきたいと思いを巡らせていた中で、沖縄のライブハウスでMihoちゃんと一緒にセッションする機会があって。Mihoちゃんとは昔から知り合いでしたが、一緒のステージに立ったことはなかったんですよ。私はプレイもそうですけど、パフォーマンスを重要視してて。女性だからこそ、動きを派手に大きく見せたいという思いがあるんです。沖縄でMihoちゃんのステージングを横で見ていたらカッコよくて見惚れちゃって、私が海外へ出ていけるようなバンドを組むなら、Mihoちゃんと一緒にやりたいと思いました。それで声をかけたらOKをもらい、そこからは2人で「英語の歌詞を歌えるボーカルがいいよね」って、ボーカルをすごい探したよね。

Miho 私も彼女にずっと惚れ込んでいるので、本当に光栄でした。しっかり考えさせてもらって、バンドを始動させよう、ということになりました。そこからいろんな人を紹介してもらって。

Toki そうしたら、MihoちゃんがAnnaの歌を見つけて。

Miho Instagramで見つけました。

Anna すごいよね! シンデレラストーリー!

Miho 見つけてすぐTokiに「この子、すごくいいけど、どう思う?」って伝えたら、「いいじゃん!」と。たまたまインスタのフォロワーに共通の知り合いがいて、Annaに連絡を取ったところ、「ぜひ会ってみたいです」という返事をもらってZilqyが始まりました。

Toki 私とMihoちゃんが、Annaちゃんの歌声や人柄に惹かれて「入ってください」とお願いしました。彼女は自分の人生を歩んでいる中で悩んだと思うけど、初めてやるジャンルの音楽に飛び込んでくれたことにすごく感謝してます。

Anna 新しい一歩を踏み出すことはすごく怖かったんですけど、メンバーやチームの皆さん含めて、とにかく一緒にいてめっちゃ楽しかった。一緒に制作したり、ごはんに行ったりしていく中で、「めっちゃ楽しい!」と思って加入を決めましたね。7カ月くらい待たせたっけ?

Anna(Vo)

Anna(Vo)

Miho 初めて会ったのは昨年の7月で、決まったのが今年2月だからそれくらいですね。まだ本決まりじゃない状況でデモを録ったり、ちょっとずつ進めていきました。それと並行してドラムを探しまして。インスタで気になった子に連絡してみたりしたけど、ピンと来なかったり、そもそも会えなかったり……。そういう中で音楽関係の飲み会で知り合ったマニピュレーターさんに「いい子がいるよ」とKanoを紹介していただいて、ライブを観に行ったんです。そうしたら「この子しかいない! この子としかやりたくない!」と思うくらい惚れてしまって。

Toki 私もKanoちゃんがサポートで入ってるライブを観に行こうとしたんですけど、たまたまその日だけKanoちゃんじゃない別の方が叩く日だった!……ということにライブハウスに向かう途中で気付きました(笑)。

Kano あはははは!

Anna ドラムを叩いてるときの笑顔が超いいなって。最初に、彼女が叩いてるライブ映像をみんなで観たんですよ。

Toki 65インチのテレビで見た。

Kano え、怖っ!(笑)

Miho 本当にいいメンバーが集まりました。Tokiと2人で音楽性も決まってない状態で、メンバーを集めていくところからスタートして。前のバンドとは違うことをやりたいとは考えていたものの、Annaと出会って、Kanoと出会って、「この4人ならどんな音楽ができるだろう?」と考えていきました。

4人で意見をぶつけ合い、納得しながら作り上げた1st EP

──メンバーがそろってから、バンドの方向性が定まったと。

Miho はい。みんなで意見を出し合って、持ち寄ったパーツをはめていきました。

Toki だからこそ、今の形になるまで時間はすごくかかりました。1曲作るのに数カ月かかったり。

Miho メンバーとスタッフが集まって。メロディを持ち寄って、みんな目をつぶって「どれがいいか手を挙げて」みたいなこともやりました。

Anna それがまさかのEPのリード曲「Carry On」になり。

Miho 最初にできた曲が「Carry On」なんですが、おかげでみんなの気持ちがわかった。どんな音楽がやりたいのか、それぞれの思いが詰まった曲になりました。

Toki この曲を作っている途中でKanoちゃんと出会い、そこからKanoちゃんの意見やドラムのフレーズが入って、よりパワーアップしていきました。

──1人がイニシアチブを握っているわけでなく、平等に4人のアイデアによって作っていったのですね。

Anna 意見がぶつかったとしても妥協するのではなく、ちゃんと中間地点を見つけられた。EPに収録されているのは、そうやって作った5曲です。みんなしっかり制作に関わってますね。

Toki 私も今までやってきたバンドとは違う、パワーアップした自分の姿を見せたい気持ちが強かったし、みんなそれぞれに思いが強かった。「なんでもいいよ」「お任せします」というメンバーは1人もいなかった。だからこそ意見がぶつかったり、難航したこともあったんですけど、それもバンドにとって有意義な時間で楽しかったです。

Miho 歌詞もAnnaがすごくいいものを書いてくれたんですけど、それでもレコーディング中に「ちょっとここを変えよう」ということがいっぱいあって。本当によりいいものができあがった。

Anna 「Carry On」がZilqyとして初めてレコーディングした曲だったんですが、メンバーとチーム全員がスタジオに来てくれて。総勢10人くらい。すごくうれしかった!

Toki 私だったら緊張しちゃうけど(笑)。

Kano スタジオでみんなギチギチになって(笑)。

Anna ブースで歌っていると、キャッキャしてる向こう側の声が聞こえるんですよ。発音の意見も各々が言ってくれたりして。おかげで今までのレコーディングの中で、一番パワフルな歌が録れましたね。

Miho Annaのテイクやハモリへのこだわりがすごくて。正直「えっ!? こんなにトラックいるの?」と思いつつ、お菓子を食べながら見守ってました(笑)。でもできあがったものを聴いたときには、素晴らしいなって。

Miho(B)

Miho(B)

Anna 歌を録ってる最中に、大きな買い物してたもんね。

Miho 作業環境をアップデートするために新しいMacを買いました。この歌のトラック数には今のPCは耐えられないと思って。

一同 アハハハハハ!

──各々がじっくりこだわったレコーディングだったと。

Toki はい。本当に満足いくまで一緒に練ってくれる環境だったので、楽しかったですね。

Miho 「Carry On」は何回録ったっけ? 最初にアレンジを固めて録ったんだけど、途中でまるっと変わって。私は5回くらい録り直したかな。

Toki 1回全部録って、「もしかして、こっちのギターのほうがいい音じゃね?」と思って違うギターでも録り。それが録り終わったらアレンジが変わって、また録り直して……みたいなことがけっこうありましたね。でも楽しかったです。自分のプレイもそうだし、曲が成長していくのがわかってうれしかったです。

Miho そこにKanoちゃんのドラムが入って。「そうきたら、こっちも変わるでしょう」と思うくらい、すごいドラムだった。

Kano 今まではサポートばかりで、自分のバンドを全然やってこなかったんです。サポートだと、すでにアレンジができあがった曲をそのままコピーすることがほとんどだから、「自分のバンドなんだ」と思ったらうれしくて。自分が叩くことを想定してフレーズを考えたら、やっぱり自分のよさが一番出たし、叩いていて楽しい。曲もめっちゃカッコよくなったなあと思います。

Kano(Dr)

Kano(Dr)

──各々がフレーズを考えて、アレンジを含めて全体を整えていくという手法ですね。

Miho メンバーのほか、Toshi-Fjさん、Kuboty(ex. TOTALFAT)さんやMackyというメタル系のギタリストだったり、ドラムだったらGaku(Crystal Lake)さんなど、みんなでチームとして、ああでもないこうでもない言いながら作っていきました。

Anna EPは皆さんからの意見やインスピレーションがあってできた作品です。歌詞のアイデアもメンバーが出してくれることもあったし。仮歌を録る前に歌詞を見せて意見をもらったりもして。いいチームで、本当に恵まれてるなと思います。