トゲナシトゲアリ「ナタリー × 日本工学院かまた祭」で見せたい“レベルアップしたいつも通り”の姿

テレビアニメ「ガールズバンドクライ」と連動するリアルバンド・トゲナシトゲアリが11月3日に東京・蒲田の日本工学院専門学校 日本工学院アリーナで行われる「ナタリー × 日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”」に出演する。

このライブは創立78年を迎えた日本工学院専門学校の学園祭「かまた祭」の一環として、ナタリーと日本工学院がタッグを組んで企画したもの。「音楽業界を目指す学生や『かまた祭』に集うエンタテインメントに関心のある10代~20代に向けて夢や希望を与えるような公演を作りたい」というコンセプトのもと、ナタリーは蒲田の隣町・神奈川県川崎市を舞台にした「ガールズバンドクライ」と連動するリアルバンド・トゲナシトゲアリにオファーをした。

トゲナシトゲアリが学園祭ライブに出演するのはこれが初。音楽ナタリーではメンバーの理名(Vo)、夕莉(G)、朱李(B)に「かまた祭」への意気込みはもちろん、若者たちに聴いてもらいたいトゲトゲのオススメ曲や、9月に行われた東京・日本武道館でのワンマンライブについて語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 入江達也

公演情報

ナタリー × 日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”

ナタリー × 日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”

2025年11月3日(月・祝)東京都 日本工学院専門学校 日本工学院アリーナ
OPEN 14:30 / START 15:30 / END 17:00(予定)

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いろんな意味でアツかった武道館公演

──まずは先日の日本武道館公演「トゲナシトゲアリ LIVE in 日本武道館 “奏檄の叫”」について聞かせてください(参照:トゲナシトゲアリが夢の日本武道館公演「アニメを超えちゃったね」)。初の武道館はいかがでしたか?

理名(Vo) いろんな意味でアツかったよね。熱かったし、暑かったし(笑)。

朱李(B) あっという間だった。

理名 体感的には、今までのワンマンで一番早く終わったかもしれない。

夕莉(G) 演出面でも新たな試みがあって、いろんな要素をギュッと詰め込んだライブだったなという印象です。

左から朱李(B)、理名(Vo)、夕莉(G)。

左から朱李(B)、理名(Vo)、夕莉(G)。

理名 会場が大きい分、関わるスタッフさんの多さも目に見えてわかるんです。ステージセットなども細かいところまで気を配ってくださっているのをすごく感じて……そういう環境になんとなく慣れてきてしまっていた部分も正直あったんですけど、「当たり前じゃないんだよな」って改めて気付かされた1日でした。

朱李 前日リハのときも、スタッフの皆さんが急ピッチで仕込みをしている中でも温かく迎え入れてくださって。いろんな人たちの気持ちが集まってできているライブなんだなと痛感しましたし、「自分1人で戦ってるわけじゃないんだ」と感じられてすごく心強かったです。

夕莉 私は今回、初めてと言っていいぐらいに緊張しなかったんです。もともと緊張しやすい性格なので、今まではどのライブでも「失敗したらどうしよう」と不安を抱えて臨んでいたんですけど、あるときスタッフの方に「武道館に来る人たちはみんな味方だよ」と言っていただいて、「確かに!」と。「ライブというのは評価される場なんだ」と構えていたところにその言葉をいただいたことで、「私たちを観たいと思って集まってくれる人たちのために、まずは自分が楽しんでパフォーマンスをしたい」と思えるようになったんです。なのであまり緊張することなく、「早く演奏したい!」という気持ちで臨めました。

朱李 私もそのスタッフさんの言葉には本当に救われました。「ここで失敗したら全部がダメになってしまう」くらいの重圧を感じていた中で、その言葉をいただけて。本番は本当にリラックスして出ることができましたし、この先も「そういう気持ちでいれば大丈夫なんだ」と思えたのはすごく大きな一歩でした。

──しかも武道館はステージの後ろにもお客さんがいる状態でした。

理名 どこを見回してもお客さんがいてくれるので、「こんなにたくさんの人たちがトゲトゲを好きでいてくれてるんだ」と可視化されたような感覚もあって、それがすごくうれしかったです。改めて「がんばろう!」と思えました。

──理名さんは武道館公演の前に、「歴代のトゲトゲライブでトップ3に入る公演にしたい」と控えめにおっしゃっていました(参照:トゲナシトゲアリは進み続ける、憧れの日本武道館ライブに気合い十分)。終えた今の手応えとしてはいかがですか?

理名 (無言で誇らしげに人差し指を突き立てる)

夕莉 おお、ナンバー1(笑)。

理名 ナンバー1ですよ、これは。すべての部門において1位というか……自分自身の出来としてもそうだし、お客さんの熱量、印象深さ……“全項目がナンバー1”っていう感じです!

理名(Vo)

理名(Vo)

憧れられるように魅了したい

──そんな武道館を経て、11月3日には学園祭ライブ「ナタリー × 日本工学院かまた祭 School Festival LIVE “トゲナシトゲアリ”」が控えています。学園祭でのライブというものにはどんなイメージがありますか?

朱李 キラキラしてるイメージですね。

理名 青春!って感じ。

夕莉 自分たちが学園祭ライブに出るのは初めてですし、お客さんの層もきっといつもと違う感じになると思うので、どんなふうに盛り上がってくれるのかすごく楽しみです。

──学生時代に学祭でライブをした経験はありますか?

夕莉 高校生のときに軽音部で文化祭のライブに出たことがあります。今の私たちが普段やっているライブとはまた違った熱気があったな、と今思うと感じます。学生ならではのノリがあるというか。

朱李 私の学校は学祭自体がなかったので、まったくどんな世界なのかわからないです(笑)。バンドはずっとやりたかったんですけど、そもそも軽音楽部がない学校だったので。

理名 私もそうです。未知の世界というか(笑)、“文化祭でやるライブ”というものに触れた経験が一度もなくて。

朱李 高校生のときに「文化祭でライブをしたいのにできない」みたいなことを親に言ったら、「いつかデビューしたときに学祭ライブに呼ばれればいいんだよ」と言われていたんです。今回その通りになって、ちょっとエモいなと思っています(笑)。

──ちなみにアマチュア時代は、音楽に対するモチベーションはどんなところにありましたか?

夕莉 やっぱり憧れが原動力だった気がします。中学生のときに、高校の学園祭ライブを観たことがきっかけでギターを始めたんですけど、「そこからどうやって上達していこうか」という中で「弾いてみた」文化を知って。「この人たちみたいに弾きたい」という思いでがんばっていました。たぶん、SNSへの投稿をせずに部活の中でギターをやっているだけだったら、ここまで「うまくなりたい」というモチベーションを保てなかったんじゃないかなと思います。

夕莉(G)

夕莉(G)

理名 私も同じ感じですね。といっても、私の場合は「歌ってみた」の活動を始めて3カ月ぐらいのタイミングでトゲトゲのオーディションに参加することになったので、“モチベーションを保つ”というほどの期間があったわけでもないんですが。やっぱり同世代の歌い手さんたちの存在がすごく大きくて、「あの子みたいになりたい」という思いでずっとやっていました。

朱李 私は「憧れもあり、負けず嫌いもあり」という感じで。中学校の吹奏楽部時代はパートリーダーを任されたり、コンクールの選抜にも選ばれたりして、けっこうエリート組だったんです(笑)。でも、その後音楽の専門学校へ進学したら周りにうまい人たちがたくさんいて、それがすごく悔しくて。その中で「私が一番になるんだ!」という気持ちでいたことが今につながっている気がします。すごくベースのうまい人を見かけると今でも悔しくなりますし、負けず嫌いでのし上がり中です!

朱李(B)

朱李(B)

理名 この活動を始めたばかりの頃に玉井さん(agehasprings代表の玉井健二。トゲナシトゲアリのプロデュースを務める)から言われて、すごく印象に残っている言葉があって。「君たちが憧れてきた人たちのように、これからは君たちが憧れられる側になるんだよ」っていう……ちゃんと憧れてもらえるように、今回のライブで学生の皆さんを魅了したいなと(笑)。

朱李 ヘタしたら理名のほうが年下だけどね。

理名 ヘタしなくても年下だと思う(笑)。

演奏を録音する時点ですごく病むんです

──アマチュアミュージシャンの参考になるようなお話も聞きたいんですが、例えば音楽を続ける中で何かつまずいた経験などはありますか?

夕莉 ずっとつまずいてる(笑)。

理名 わかる! 私も歌い手を始めてから今日まで、ずっとつまずいてます(笑)。

夕莉 趣味でやってきたものが仕事になったことで、「お金をいただいている以上はいい音楽を届けなければいけない」という責任感が生じるので、苦手なことや避けてきたものに……。

理名 ぶち当たらないといけない(笑)。

夕莉 そう(笑)。この2年間ぐらいは本当に、新曲を出すたびに毎回毎回乗り越えなきゃいけない壁に直面し続けています。“自分との戦い”という意識があるので、メンタルの強さで立ち向かってきてはいたんですが、それだけではどうにもならないこともある。そういうときに、周りにスキルのある人や経験を積んでいる人がいてくれたらラッキーなんですけど、そうじゃない場合は似たような境遇の仲間と支え合うのがいいのかなと思います。同じ苦しみを味わっている人と気持ちを共有する。

──ただ、アマチュアの場合は「自分にはこれができない」と自覚するのがまず難しいですよね。

夕莉 確かにそうですね。そこはやっぱりSNSを活用するのがいいかなと思います。ほかの人と同じ曲を弾いていても“いいね”の数が違ったりして、自分の力量を数字で見られるので。それは怖いことでもあるけど、自分を知るにはすごくいいツールだと思います。

朱李 SNSに出す前の段階の、演奏を録音する時点ですごく病むんですよ。

夕莉 わかる! そうだ、そこだ!

朱李 普通に練習しているだけだと自分の演奏を客観的に見る機会ってなかなかないんですけど、録音することでどうしても真剣に向き合わざるを得なくなるので。苦しいですけど、すごく大事なことだなと思います。

夕莉 けっこう絶望するよね(笑)。自分ではちゃんと弾けてると思ってたところが、客観的に聴いてみると全然弾けてなかったり。

朱李 うんうん。つらい……!

左から朱李(B)、理名(Vo)、夕莉(G)。

左から朱李(B)、理名(Vo)、夕莉(G)。

──あと、「1曲通して弾ききることは意外にめちゃくちゃ難しいんだ」ということを思い知りますよね。

理名夕莉朱李 そうそうそうー!

夕莉 部分的にできるようになっても、それを最初から最後まで通すのはまた別の難しさがあるんですよね。録音してみないと意外に気付けない。

理名 ボーカルは、後半はとにかくバテます(笑)。あとはやっぱり、誰もが最初につまずくポイントは高音だと思うんですよ。

夕莉 (しみじみと)わかる……!

理名 夕莉が「空の箱」で実感したように(笑)、“高音が出るかどうか”はボーカルとしては一番わかりやすいので。私もレコーディングで高い音がうまく歌えなくて、涙をポロリしてしまうこともよくあります。

夕莉 「歌えなくて泣いちゃったんだよね」って言ってるのを聞いて、理名でも歌えない曲があるんだ?と思った。

朱李 絶望するよね。

理名 全然あるんですよ。でも、歌というものは1日やそこらで簡単に変わるものじゃないし、1個ずつ課題をクリアしながら自分に合うものを見つけていくしかないのかなと思います。一生ついて回るものだと思うので、焦らず着実に。

──そうやって壁にぶつかったときに、くじけず次へ向かえる人が“向いている”ということなんでしょうね。

理名夕莉朱李 本当にそうです!