2023年に行われた「IDOL3.0 PROJECT」オーディションのファイナリスト17人によって結成されたガールズグループ・Rain Tree。彼女たちはFINALISTという名義で下積みを重ねたのち、秋元康が総合プロデュースを手がける新グループとして今年1月に念願のメジャーデビューを果たした。
1stデジタルシングル「I L U」と2ndデジタルシングル「つまり」のリリース、ライブイベントへの出演を重ねながら、Rain Treeは急速に成長。夏には「Rain Tree真夏のフリーライブ~君と過ごす初めての夏~」と題した全6回のフリーライブを完走し、最終日に目標の観客動員700人を達成した。
そんな彼女たちの最新曲である3rdデジタルシングル「好きだよとどっちが先に言うのか?」は、“卒業を前にして互いに思い合いながらも好きだよと告白できない2人のもどかしさ”を描いたさわやかな青春ラブソング。デビューイヤーを締めくくるにふさわしい1曲だ。軽やかなピアノが印象的なイントロ、恋の駆け引きと切なさを繊細に描き出した歌詞、「好きだよと どっちが先に言うのか?」というフレーズに合わせて手の動きで“好き”を表現する振付など、Rain Treeらしいピュアな世界観が広がっている。
この曲を歌唱する“メインメンバー”は、歌、ダンス、自己表現を審査基準としたセレクションシステムにより選ばれた綾瀬ことり、市原紬希、遠藤莉乃、鈴野みお、永瀬真梨、新野楓果、橋本真希の7人。今回は夏のフリーライブのパフォーマンスをもとに、歌唱メンバーのセレクションが行われた。約2カ月におよぶ審査を乗り越えた彼女たちにとって、新曲は努力と絆の証でもある。インタビューでは、そのセレクション期間での葛藤や成長、そして3rdシングルに込めた思いを語ってもらった。
取材・文 / 川崎龍也撮影 / 佐々木康太
この夏の活動はとても大きな経験になった
──Rain Treeは10月8日に結成1周年を迎えました。まずはこれまでの1年を振り返って、皆さんがどう感じているのかを聞かせてください。
綾瀬ことり あっという間の1年でした。気付いたら1年が経っていて、少し怖いくらい。でも、1年間誰も欠けることなく活動を続けられたことが、本当にうれしいです。FINALISTとして活動していた頃はデビューできるかもわからなくて、誰が辞めてもおかしくないような状況だったと思うんです。でも、そこから全員でがんばってきて、今も一緒にいられる。お休みしているメンバーもいますが、卒業などなくここまで来られたことがとにかくよかったなと思います。
遠藤莉乃 私も同じく、1年がすごく早かったです。1stデジタルシングル「I L U」の頃から制作期間中は「もっと練習したい!」という気持ちでいっぱいで、いつも時間が足りないなと思っていました。ステージに立つときも、メンバーと話し合うときも時間がすぐに過ぎていって。その中で成長を感じる部分もありましたが、「もっとできたんじゃないか」と思うこともたくさんありました。結成時に立てた目標を全部叶えられたかと言うと、まだまだ足りない部分もあるのでそこは悔しいですね。その気持ちはきっとメンバーみんな同じだと思うので、2年目は悔しさをバネにしていきたいです。掲げた目標を「叶わなかったけどいいや」で終わらせず、ちゃんと叶えられるアイドルになりたいと、より強く思うようになりました。
──この1年は常に動き続けていた印象があります。
遠藤 そうですね。3rdデジタルシングルのセレクション期間が始まるのも思っていたより早くて。2ndデジタルシングル「つまり」のリリースイベントのタイミングで、3rdの話を聞いたときは驚きました。うれしいことですし、ずっと走り続けていたなという印象です。
新野楓果 本当にずっと走り続けていたね。初めてのことばかりで、いろんなステージに立たせていただいたりいろんなお仕事を経験させていただいたりする中、FINALISTの頃には味わえなかった喜びがたくさんありました。当時はステージで歌って踊る機会がなかなかなくて、悔しさや悲しさを感じることも多かったんです。だから、アイドルとしてデビューして、みんなでステージに立てていることが本当にうれしいです。「ステージに立てることは当たり前じゃない」と感じながら活動しているので、1回1回のステージを大事にしてがんばってこられたと思います。1年前に比べて、みんなで心から楽しんでパフォーマンスできるようになったのは、大きな成長だと感じます。
──特に夏の季節はフェスへの出演などで多くの経験を積まれたと思います。「TOKYO IDOL FESTIVAL」のステージにはFINALIST時代にも一度立っていますが、今年はRain Treeとして初出演しました。
新野 FINALISTのときはSMILE GARDENにオープニングアクトとして出演させていただいたんですが、今年はRain Treeとして、正式にデビューした形で同じステージに立つことができました。出演の話を聞いたときは、みんなで「やったー!」って大喜びしました(笑)。TIFに3日間出演させていただけたこともうれしかったですし、ありがたいなと思いました。夏のフリーライブでも動員の目標を達成できましたし、いい形で夏を締めくくれました(参照:Rain Tree、フリーライブで目標の700人動員達成!来年に1stワンマンライブ開催)。この夏の活動はグループにとって、とても大きな経験になったと思います。
3rdデジタルシングルのセレクション期間を振り返って
──今、フリーライブのお話が出ましたが、3rdデジタルシングルのセレクションは前作までとは違い、フリーライブが皆さんの将来を左右する審査の場となりました。
遠藤 今回の審査について急に発表されたこともあって、最初はとても驚きました。私はファンの方や家族など、いろんな方に期待してもらえることがうれしくて。「莉乃ちゃんならもっとできるよ」とか「歌がよかったよ」と言われることが増えて、その言葉が支えになっていました。だからこそ、期待をしてもらえる分、絶対に成長した姿を見せたいし期待に結果で応えたいという思いが強かったです。私は自分が楽しめていないとお客さんも楽しめないと思っているので、いつも“楽しむこと”を大切にしていて。その気持ちを忘れずに、でも目標を達成するために努力する、そんなバランスを大事にしていました。この期間、みんな本当にたくさん練習していて、メンバーの成長や努力を間近で感じました。それが刺激になって「私ももっとがんばらなきゃ」と奮い立たせられましたし、メンバーからアドバイスをもらうことも多かったです。グループとしての絆がさらに強まった、すごくいい期間だったと思います。
鈴野みお この2カ月間のセレクション期間は本当に長く感じました。終わりが見えなくて、最終日の6回目のライブを迎えたときは「やっとここまで来た!」という気持ちでした。毎回成長を見せなきゃいけないという焦りもありましたし、「本当に自分は変われているのかな」「お客さんは楽しんでくれているのかな」と不安になることも多かったです。でも、1stや2ndの頃よりもメンバーと一緒に練習する時間や話す時間が増えていて。気持ちが落ち込んでも、みんなが「がんばろうね」「楽しもうね」と声をかけてくれたおかげで前向きになれました。メンバーの支えがなかったら、たぶん途中で心が折れていたと思います。みんなと一緒に楽しめたことで、これまで積み重ねてきたものを全部出せた気がします。
新野 フリーライブ期間は、本当に周りの方々に支えられながらがんばれましたし、私自身も心から楽しめました。私は毎週土曜の深夜に生放送のラジオ番組があって、放送が終わるのが朝だったんです。そこから家に帰って少し準備したあと、すぐにフリーライブへ向かうという生活が続いていた時期があって。体力的にもかなりしんどくて、「この状態で100%のパフォーマンスができるかな」と不安に思うこともありました。でも、メンバーがたくさんサポートしてくれたり、ファンの方々が「一緒にがんばろうね」と声をかけてくれたりして。本当に、自分1人ではがんばれなかったと思います。
橋本真希 私は2ndのフリーライブ期間、そして3rdのセレクション期間中はカップリングメンバーとして活動に参加していました。フリーライブでは自分たちの楽曲を中心にパフォーマンスするときもあれば、ほかの秋元先生プロデュースのアイドルグループの楽曲をカバーさせていただくこともあって、新しい挑戦が多かったです。もちろん審査の場なので緊張はありましたが、「今まで見せたことのないRain Treeを届けたい」という気持ちもあり、毎回楽しみでした。最初のうちは失敗しないように、という意識が強かったんですけど、回を重ねるうちに少しずつ気持ちに余裕が出てきて、歌やダンスだけでなく表現力の部分にも向き合えるようになりました。特典会で「この曲のパフォーマンスが好きだから来ました」と言ってもらえることもあって、それがすごくうれしかったです。始まる前はドキドキの連続でしたが、終わってみると本当に楽しかったし、自分の成長を実感できた期間でしたね。
──最終日までに手応えを感じられたんですね。
橋本 そうですね。メンバー全員、表情が最初の頃よりすごくよくなりました。やっぱり表現力の部分では大きく成長できたんじゃないかと思います。
──セレクションシステムは、今回のシングルでひと区切りを迎えました。
橋本 セレクションシステムがなくなるということは、いつ見られても大丈夫な状態でいなきゃいけない、ということだと思うんです。だから、日常生活から気を抜けないなって(笑)。練習への姿勢やSNSでの発信も含めて、運営の皆さんはいろんなところを見ていると思うので、毎日の時間の使い方をこれまで以上に大切にしていきたいです。
次のページ »
初めてメインメンバー入りを果たした永瀬&市原





