TRiDENT「BLUE DAWN」|マイファスNob提供曲でメジャーデビュー!新進気鋭のガールズバンドが鳴らす希望の音

3ピースガールズバンド・TRiDENTが新作EP「BLUE DAWN」をリリースし、キングレコードからメジャーデビューを果たした。

TRiDENTは同じ高校の軽音楽部に所属していたASAKA(Vo, G)とSERINA(B, Cho)によって結成されたバンド。2020年12月にNAGISA(Dr)が正式加入し、現在の体制となった。ポップなビジュアルから想像もつかないようなヘヴィなサウンドは、聴き手の心を強く揺さぶる。Nob(MY FIRST STORY)が書き下ろしたEPのリードトラック「黎明ノ詩」からも、彼女たちが持つすさまじいエネルギーを感じ取れるだろう。

またTRiDENTは9月から放送されているテレビアニメ「ポーション、わが身を助ける」のオープニングテーマとエンディングテーマの両方を担当しており、今すさまじい勢いでメジャーシーンの階段を駆け上がっている。そんな彼女たちが目指している場所は、東京ドームのステージ。音楽ナタリーでは3人にインタビューを行い、結成の経緯からEPの制作過程、憧れの場所への思いまで話を聞いた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 入江達也

スリーピースでやっていく決意

──まずはバンドの成り立ちから教えてください。

ASAKA(Vo, G) 高校生の頃にASAKAとSERINAが部活動で組んだバンドが始まりでした。当初はコピーバンドをやっていて……。

SERINA(B, Cho) ONE OK ROCKやELLEGARDENのコピーをしていました。そこから徐々にオリジナル曲を作り始めて……地元のライブハウスにプロを目指す先輩バンドがたくさんいたので、それについていきつつ、だんだんバンドに本腰を入れるようになっていきました。

ASAKA 私はもともとボーカル志望で軽音部に入ったんですけど、ELLEGARDENとかをコピーするにあたって「ギターがもう1本必要だよね」ということになって。それで最初はお飾りみたいな感じでギターを持って歌ってたんですけど、バンドが4人組からスリーピースになったタイミングくらいから本格的にギターをがんばりました。

SERINA 4人から3人になったときに、新しくギターを入れるか3人でやっていくか迷ったんです。ちょうどその頃に3人でめっちゃカッコいいライブをしている先輩バンドを見て「これだ! 3人でやっていこう」と決意しました。

ASAKA けっこう悩んだよね。

SERINA ASAKAの負担がかなりデカくなる決断ではあったので。

ASAKA いまだにバンドの写真を見ると不思議に思いますから。「すごい、私ギター弾いてるんだ!」って(笑)。

SERINA 私も、元はと言えばベースにそこまで強い思いがあったわけじゃなくて。最初は友達に誘われて「楽しそう」って軽音部に入って、たまたまお父さんが趣味の親父バンドでベースを弾いていて家にベースがあったから「まあ、ベースでいっか」みたいな感じで始めました(笑)。

SERINA(B, Cho)

SERINA(B, Cho)

──NAGISAさんがこのバンドに加入した経緯はどういう感じだったんですか?

SERINA NAGISAは別でガールズバンドを組んでいて……。

NAGISA(Dr) ガールズロックバンド革命(TRiDENTに改名する前のバンド名)とツーマンライブをするくらい、同じようなところでがんばっていたバンドにいたんです。そのバンドを辞めて「ちょっと1人でサポートミュージシャンとしての活動をがんばっていこうかな」と思っていたタイミングで、ちょうどガールズロックバンド革命のドラムの子が抜けて。そのときに誘ってもらって、サポートドラマーとして参加し始めました。素晴らしいタイミングでチャンスをいただいたなって。

SERINA 同じようなシーンにいたというのもあるんですけど、NAGISAももともとワンオクとかが好きで。

ASAKA ルーツが共通してた。

NAGISA 私がドラムを始めたのは中学生のときに入った吹奏楽部がきっかけだったので、キレイな打楽器演奏しか知らなかったんです。それが高校のときに、ワンオクの「完全感覚Dreamer」のミュージックビデオを観て衝撃を受けまして。「ドラムって、こんなに荒々しく叩いてもいいものなんだ」と思って、そこからワンオクにどっぷりハマっていきました。

──そもそもドラムという楽器を選んだ理由は?

NAGISA 本当はサックスとかをやりたかったんですけど、吹奏楽部のパート決めの日におたふく風邪にかかってしまって、余ってたのがパーカッションしかなかったんですよ(笑)。なので最初はしゃあなしで始めたんですけど、高校受験のときにアニメの「けいおん!」に出会って。吹奏楽に燃え尽きていたタイミングであんなにかわいい女子高生バンドのアニメに出会ってしまったことで、「もうバンドしかない!」みたいな感じでそのままドラムを続けてきました。「りっちゃん(田井中律)になるんだ!」って(笑)。

──3人とも共通して、楽器選びがあまり自主的なものではなかったんですね(笑)。

一同 そうですね(笑)。

なんとか形にして、食らいついてきた

──そんな皆さんがこのたび、1st EP「BLUE DAWN」でメジャーデビューを果たしました。

ASAKA メジャーというのはバンドとしての1つの目標でもあったので、「いつかは」という気持ちはずっとありました。TRiDENTになって今の事務所に出会うことができて、それから5年ぐらい一緒に自主でずっとがんばってきた中で、今回キングレコードさんとの素敵なご縁をいただきました。

NAGISA 今考えると、やっぱり力がまだ足りてなかったんだろうなと思います。最近はライブにも自信が持てるようになったし、いい曲をたくさん作れるようにもなって、ようやく機が熟したのかな?という感覚はありますね。

SERINA これからはメジャーバンドになるわけなので、絶対に今までよりも忙しくなるだろうし、「甘えていられないな」という意識が芽生えてきています。

ASAKA 実際すでにスケジュールが詰まってきていて、お部屋が散らかり始めていたりもします(笑)。

NAGISA メジャーに行くということは、より広く私たちの音楽を大衆に届けるということだと思うので、楽曲1つひとつの捉え方に関しても意識が変わったように思います。最初の頃はBPM200がデフォで、それが自分たちの持ち味だと思っていたんですけど、自分たちではバラードだと思ってやっていた曲が「そんなに速い曲をバラードとは呼ばないよ」と言われたりして(笑)。今ではかなり楽曲の幅を広く考えられるようになったと思います。

NAGISA(Dr)

NAGISA(Dr)

──TRiDENTの曲作りはどういうスタイルが多いですか?

ASAKA 以前は私がボイスメモに録った弾き語りを2人に聴かせて、「ここのベースはスラップで」とか「ドラムはこういう感じで」と伝えるスタイルだったんですけど、TRiDENTに改名したくらいのタイミングで、私がDAWを触れるようになりまして。今は、編曲家さんに投げる前のベーシックなデモを私がCubaseで作っています。

SERINA それを元に各自でフレーズを考えたり。前身バンドのときはメンバーだけでアレンジを完結させていたんですけど、TRiDENTになってから外部の編曲家さんに入ってもらうスタイルになったんです。それでだいぶ変わったよね。

ASAKA 何もかもが変わりました。

SERINA シンセとかのいろんな音を使うようになったのがまず大きく違うのと、フレーズ自体も今まで自分が生みだしたことのないようなパターンを一緒に考えてもらったりして。幅がめちゃくちゃ広がりました。

NAGISA 技術的に難しいアレンジのときもあるんですけど、とりあえずがんばってやってみる。できなくてもできないなりになんとか形にして、食らいついてきた感じですね。

1曲でアルバム1枚分ぐらいの情報量

──MY FIRST STORYのNobさん書き下ろしのリードトラック「黎明ノ詩」をはじめ、EPには自分たちの作曲ではない楽曲も含まれています。人に曲を作ってもらうことは今までにもあったんですか?

ASAKA ちょこちょこありました。自分たちだけでは出てこないような新たなプレイに挑戦できるので、それこそNAGISAが言ったように、幅を広げられるやり方だなと思っています。

NAGISA 演奏するのは難しかったりしますけど(笑)。

SERINA 歌詞を考えるのはASAKAなので、幅広いタイプの楽曲がある中でも、一貫してバンドの思いはちゃんと入っているんです。すごくいい歌詞を書いてくれるので。

ASAKA ……(思わず照れ笑い)。

──その「黎明ノ詩」ですが、デビュー盤のリード曲にものすごくふさわしい1曲だなと感じました。「TRiDENTが今できることをすべて詰め込みました」みたいな曲ですよね。

一同 そうですね!

NAGISA 演奏はすごく難しかったです(笑)。レコーディングにNobさんも来てくださったんですけど、「全然できると思って、難しいフレーズもガンガン入れちゃったよ」と言ってくださって。期待してくれているからこそだと思うので、とにかく吸収!という気持ちで臨みました。

SERINA かなりボリューミーな曲で……。

ASAKA 1曲でアルバム1枚分ぐらいの情報量がある。

NAGISA そうそう(笑)。

SERINA そもそも1曲が5分近くあるのもTRiDENTでは珍しいですし、展開もすごく多くて。ただ、私たちはもともと音楽的にマイファスとも通ずる部分が多かったり、お客さんの層が被っていたりもするので、相性はめちゃくちゃよかったですね。

ASAKA ファルセットの使い方もNobさんにご指導いただいて、「ここで使うとこういうふうになるんだ」という学びにもなりました。Nobさんにお願いして本当によかったです。

ASAKA(Vo, G)

ASAKA(Vo, G)

NAGISA ドラムでいうと、こんなにツーバスをドコドコ踏むことって実はあまりやってこなかったんです。今までで最速のキック連打になっているので、練習の成果を音源で確かめていただけたらなと(笑)。

SERINA Nobさんは曲を作るにあたって、普段私たちがどういう曲やどういうプレイが好きかをヒアリングしてくれたんです。私のスタイルは“サビでも構わずベースラインが動きまくって、同時にコーラスも歌う”というものなんですけど、それが映える曲やアレンジを作ってくださいました。

ASAKA 歌詞では今までの自分たちをそのまま表現しました。1曲を通じて同じフレーズが2回出てくるところがないので、読み物みたいな感じで味わっていただけたらうれしいです。それで聴いた人の背中を押せたり、勇気付けられたりしたらいいなって。