多和田葉子台本、細川俊夫作曲の新作オペラ「ナターシャ」リハーサルが開始

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8月に東京・新国立劇場にて上演される新作オペラ「ナターシャ」のリハーサルが昨日7月14日にスタート。その様子が公開された。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。左から大野和士、演出のクリスティアン・レート。(撮影:堀田力丸)

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。左から大野和士、演出のクリスティアン・レート。(撮影:堀田力丸)

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オペラ「ナターシャ」は多和田葉子の台本をもとにした、細川俊夫による新作オペラ。大野和士音楽芸術監督による日本人作曲家委嘱作品シリーズ第3弾で、故郷を追われた移民ナターシャと青年アラトの出会いを軸に日本語・ドイツ語・ウクライナ語の多言語によって、現代文明と人間の始原の姿が描き出される。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。(撮影:堀田力丸)

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リハーサル初日には細川、大野のほか、多和田がベルリンからオンラインで参加。そのほか演出のクリスティアン・レートらクリエイティブスタッフ、ナターシャ役のソプラノ歌手イルゼ・エーレンス、アラト役の山下裕賀、メフィストの孫役のクリスティアン・ミードル、ポップ歌手役の森谷真理と冨平安希子、新国立劇場合唱団らが顔をそろえた。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。多和田葉子。(撮影:堀田力丸)

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。多和田葉子。(撮影:堀田力丸)[拡大]

多和田は「今までひとりでポツポツとリーフレットを書いてたんですけれど、長い孤独な時間が細川さんのおかげで音になり、その音がこんなにたくさんの方々の中から流れ出してくるんだなということを実感しながら映像を見ております。今ベルリンの自宅にいて、東京の会場の顔合わせの映像がパソコンの中に小さく映ってるんですけれども、非常に大きなものとして感じております。大変楽しみにしております」とコメント。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。大野和士。(撮影:堀田力丸)

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。大野和士。(撮影:堀田力丸)[拡大]

大野は「皆さんにお力をお借りして、素晴らしい舞台になるよう私も全力を尽くして参りたいと思います。まず、細川俊夫さんにぜひぜひ大きな拍手をお願いいたします。新国立劇場で以前、細川さんの『松風』を上演していますが、『松風』と比べてみても大規模な、ソリストのアンサンブルと合唱の皆さんの出演するオペラ『ナターシャ』が世界初演を迎えます。出演者、スタッフの皆さん、この作品は、私たちの力を示す機会となるでしょう」と意気込む。さらに「『ナターシャ』は劇場いっぱいに広がる音とアンサンブル、そしてこのめくるめく、輝いていくオーケストレーションというのが聴きどころの一つです。歌手の歌が流れてくると、雨が降るように、ひとりずつ、ポツ、ポツ、ポツ、ポツポツ……と別れて、本当に雨が降ってくるような音の中を皆さんが歌うというようなところもあります。それから3人が小気味よく連携を取りながらアンサンブルが運ぶようなところもあって、三次元的に出て来る声とアンサンブルが、本当に昇華しているような作品だという風に思っています。このプロダクションを楽しんでいきましょう」と語った。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。細川俊夫。(撮影:堀田力丸)

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。細川俊夫。(撮影:堀田力丸)[拡大]

細川は「今日を待ちわびていました。元気を取り戻して皆さんの練習を聞かせていただきたいと思います。2019年に大野さんからお願いされて、多和田葉子さんに台本をお願いし、2023年に台本ができました。それからいろいろなやり取りがありまして、昨年から一年半ぐらいかけて今年4月に完成しました。日本で初めてこういう大きなオペラを演奏していただくんですけども、とても楽しみにしています」と思いを語った。

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。演出のクリスティアン・レート。(撮影:堀田力丸)

オペラ「ナターシャ」のリハーサルの様子。演出のクリスティアン・レート。(撮影:堀田力丸)[拡大]

続けてレートから演出コンセプトが説明された。レートは「この物語は、ナターシャとアラトという少女と少年が、どこか分からない土地で出会うところから始まります。彼らの問題は、お互いの言葉が通じないことです。言葉が通じない中で、どうやってコミュニケーションをとっていくのか、人が何を頼りにお互いを知っていくのかということが、この作品で語られています。そして『メフィストの孫』という者が現れて、ふたりをいろいろな『地獄』に、人間によって環境も人間性も破壊された世界に連れて行くわけです。ナターシャとアラトはもともと、そんな破壊のトラウマを持っています。人間が攻撃者であり、そして被害者でもあるという世界が描かれています」と言い、「7つの地獄を舞台で次々に見せていくというのは、私たち演出家、デザイナーにとって大きな挑戦でした。私たちは、切れ目なくシーンが移っていく夢のように、止まることなくシーンが続く映画のように、ナターシャとアラトが見た世界として地獄を具現化することにしました。ナターシャとアラトの先には、私たちが望む世界が待っています。これが今回作っていく世界です」とプランを示した。

公演は8月11、13、15、17日に新国立劇場 オペラパレスにて行われる。なお関連企画として7月21日に「新作オペラ『ナターシャ』創作の現場から~細川俊夫・大野和士・有馬純寿が語る~」が開催されるほか、8月11日にはアフタートーク、13日にはバックステージツアーが行われる。

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オペラ「ナターシャ」

2025年8月11日(月・祝)、13日(水)、15日(金)、17日(日)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

スタッフ

台本:多和田葉子
作曲:細川俊夫
指揮:大野和士
演出:クリスティアン・レート

出演

ナターシャ:イルゼ・エーレンス
アラト:山下裕賀
メフィストの孫:クリスティアン・ミードル
ポップ歌手A:森谷真理
ポップ歌手B:冨平安希子
中国のビジネスマン:タン・ジュンボ
サクソフォーン奏者:大石将紀
エレキギター奏者:山田岳

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