本作は、1985年に公開されたSF映画「
開演前、ステージを覆う幕には、電子機器の基板をイメージしたデザインの映像が蛍光ブルーやグリーンに輝き、場内には「カチッ、カチッ」と秒針の音が流れている。開演時間になると、ブルーに光っていた幕が赤色に変わり、観客の期待は最高潮に。ついに幕が開くとステージには、アメリカ・カリフォルニア州のヒルバレーにある、ドクのラボが現れた。
ドクのラボに姿を現したのはマーティ。冴えない日々にうんざりしていたマーティはあるとき、ドクがデロリアンを改造して作ったタイムマシンで1955年へタイムトラベルしてしまい……。タイムトラベルの場面で舞台にドクとデロリアンが登場すると、劇場には大きな拍手が。時速88マイルに加速したデロリアンが時を超えるシーンでは、実際にステージ上をデロリアンが走るほか、街並みが流れていく疾走感ある映像も使用され、まるでマーティと一緒に加速するデロリアンに乗っているかのような迫力と臨場感を観客に感じさせた。
また劇団ファンなら思わずニヤリとしてしまうような、「『ラ・アルプ』(
さまざまな仕掛けが施された舞台装置や映像が見どころの本作だが、俳優たちの熱量の高い演技にも注目したい。マーティ役の立崇はギターを携えてパワフルに歌い、観客を沸かせる。また若き父がビフに虐げられているのを見過ごせず、つい介入してしまうマーティの向こう見ずな一面や、ドクを慕う気持ちを、立崇は真っすぐなまなざしで表現した。科学に対してピュアな情熱を持つドクは、タイムマシンを発明できた喜びで踊り出してしまうような人物。野中は「何事も為せば成る」というドクの座右の銘をパワフルに繰り返しつつ、孤独に発明や実験を続けてきたドクの悲哀を、ふとした瞬間の表情や歌声ににじませ、観客をグッと惹き付けた。
また海沼千明は、のちの息子マーティに恋してしまう母ロレイン・ベインズの若い時代を、可愛らしいが少し強引な少女としてコミカルに演じる。マーティの気弱な父ジョージ・マクフライを演じる斎藤洋一郎は、腰が引けたようなクネクネとしたダンスで観客を笑わせた。さらにマーティの宿敵ビフ・タネン役の酒井康樹は、傍若無人だがどこか憎めない人物として、ビフを滑稽に描き出した。
ゲネプロ終了後に行われた海外クリエイターの合同取材会には、台本・共同創作者のボブ・ゲイル、共同創作者のロバート・ゼメキス、作詞・作曲のグレン・バラード、演出のジョン・ランド、デザインのティム・ハトリーが出席。ゼメキスとゲイルは原作映画でも脚本を手がけ、ゼメキスは監督も務めた。リハーサルを観劇したというゼメキスは「日本の観客の皆さんはこの舞台に恋をすると思う」と絶賛。記者が「なぜ映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は長く愛されていると思うか」と尋ねると、ゼメキスは「それはよくいただく質問ですが、やはりどんな世代にも『十代だった頃の両親に会えたら面白い』というテーマが響くのでは」と笑い交じりに答えた。
ゲイルは「映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の4作目を作らないのか?」とたびたび質問されてきたことを挙げて、「『もし1作目と同じくらい感動を与えられるなら、新作を作る』と答えてきた。ミュージカル版はまさに、映画の1作目と同じ幸せを与えてくれる舞台になっていると思う」と出来栄えに自信をのぞかせた。
「この才能あふれるチームの一員になれたことがうれしい」と言うバラードは「ミュージシャン、俳優たち、技術スタッフ、すべての仕事が完璧。ダメ出しを伝えようと思っていたのに、特に言うことがないのでとにかく楽しんで観ています」と笑いを誘った。ランドは「この作品を上演するにあたって、これ以上の場所はない」と瞳を輝かせ、「“ホバーボード”や“タイムトレイン”など、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのファンにとってのイースターエッグも仕込まれていますのでお楽しみに」と微笑んだ。
さらにハトリーは「複雑な舞台セットと映像、照明、音響を整理するのは大変ですが、劇団四季は素晴らしい仕事をしてくれた。日本の上演版は本作の“フラッグシップ”のような存在になると思います」と劇団四季に厚い信頼を寄せた。
劇団四季 海外新作ミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は4月6日からロングラン上演される。
劇団四季 海外新作ミュージカル「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
2025年4月6日(日)~ ※公演終了
東京都 JR東日本四季劇場[秋]
スタッフ
脚本:ボブ・ゲイル
作詞・作曲:アラン・シルヴェストリ / グレン・バラード
演出:ジョン・ランド
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