藤田俊太郎演出「Take Me Out」2025年版上演、レジェンドチーム&ルーキーチームの2チームで

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藤田俊太郎が演出を担う舞台「Take Me Out」が、来年5月から6月にかけて東京・有楽町よみうりホールで上演される。

舞台「Take Me Out」ロゴ

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藤田俊太郎(c)KEI OGATA

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リチャード・グリーンバーグが作劇を手がけた「Take Me Out」は、メジャーリーグに所属する野球チームのロッカールームを舞台にした作品。ある日、黒人の母と白人の父を持つ1人のスター選手が、自身がゲイであることを告白し……。

日本では2016年に初演、2018年に再演され、いずれも藤田が演出、小川絵梨子が翻訳を担った。3度目の上演となる今回は、初演と再演のキャストを含んだ“レジェンドチーム”と、新メンバーで構成する“ルーキーチーム”の2チームで上演され、ルーキーチームのキャストは、一般応募によるオーディションで決定される。応募の詳細は、公式サイトを確認しよう。

藤田のコメントは以下の通り。

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藤田俊太郎コメント

「Take Me Out」2025年公演のスタートに寄せて。

「Take Me Out」は読む度にいつも新しい価値観が見つかり、そして演出する度にいつも私に新鮮な演劇の美しさを与えてくれる戯曲です。これまで2度演出を担ってきましたが、また挑戦したいと常々願っていたこのせりふ劇に向き合える機会をいただけたことを心から嬉しく思っています。しかも、今回のシーズンは2016年、18年の公演を共に創った仲間たちを中心とするレジェンドチームと全キャストオーディションにてご一緒する新チームの2チームで創作するというプロジェクトが始まり、2025年の上演に向けて今からとても興奮しています。オーディションは演技経験不問の一般公募。たくさんの演技者、表現者に出会うチャンスを与えてくださったシーエイティプロデュースの皆様には感謝しかありません。オーディションに関しては、映像による一次審査は参加してくださる全員、責任を持って全て観させていただきます。その後二次審査は、具体的に演出プランを伝えて、稽古初旬のようにその場にいる参加者全員でシーン構築していくワークショップ形式でのオーディションを実施致します。

これまでこの作品を通して出会った全ての方、キャスト、プランナー、スタッフ、カンパニーに心からのリスペクトを込めて、2025年の公演ではこれまで培った演出の核となるものを大事にしながら、真っ新な気持ちで臨みたいと強く思っています。全体の規模感も公演する劇場も演出のアプローチも一新します。キャストお一人お一人の個性を大事に、対話を積み重ねて、それぞれの魅力が溢れる2チームを創り上げたいと思っています。

今思うと、初めてこの本に出会った時になんと魅力的な言葉の力を持った物語なのだろうと感動しました。舞台は2000年代初頭と思われるアメリカニューヨーク、メジャーリーグのベースボールチーム。ロッカールームやシャワールーム、グラウンドでの登場人物のやり取り、様々な会話によって立ち上がる主題は多岐に渡ります。異なる人種間の理解と不寛容。人と人の心の融和と、受け入れ合うことができない差別。マイノリティとマジョリティ。既成概念と革新的な考え方。勝つことと負けること。正しいことと正しくないこと。裕福と貧しさ。連れ出すこと、もしくは追い出すこと。身を守ることと攻撃すること。台本の中で“楽園”という言葉で表現される野球を通したアメリカの現代社会を描きながら、作品全体が喜劇的であり悲劇的です。生きる喜びと、日々何かを損なうという、失う悲しみをも描いています。劇中に“言葉にするのが難しいだけかな”というせりふがありますが、言葉を尽くしてそれでもまだ語り尽くせない野球の感動が演劇と交錯することで、新しい感情の表現を生み出しています。 

会計士である「メイソン」がこのチームを外側からの観た語り部となり、スポーツの魅力を清々しい言葉に宿して響かせ、その中心にいるファイブツールプレイヤーと称される大スター選手、黒人と白人のミックスである「ダレン」と愛を交歓します。もう一人の語り部である「キッピー」が選手代表としてチームを内側から語る視点を持つことでこの作品が独自の魅力を持つことになります。白人の「トッディ」が実に人間らしくこの状況に反応し堂々と自己主張し、アメリカ南部出身の天才投手「シェーン」の言動が仲間たちに修復することができないひびを入れ、ムードメーカーであるキャッチャーの「ジェイソン」がチームの不和を正そうとする役割を持ちます。中南米出身の「マルティネス」の佇まいと強烈な個性が場に開放感や彩りをもたらし、「ロドリゲス」の持つ陽気さ、アメリカ出身ではない者の事象への対峙が舞台に深みをもたらします。日本人メジャーリーガーのパイオニアのような存在の「カワバタ」の苦悩がリアリティを持ち、監督の「スキッパー」が全ての騒動を見守り、発言には大きな影響力があります。ライバルチームで黒人の実力選手である「デイビー」の死、かつてのダレンとの深い友情を想い、観客は胸を痛めることになります。

劇は、“ここではないどこかへ連れ出してくれる存在”を支柱としながら、終幕に向かいます。幕切れは、様々な解釈をすることができます。私は、“人は互いを称えあい生きている”という人間讃歌を描いているのではないかと感じ、演出家としての愛をラストシーンに込めたいと思っています。アメリカにおける2025年の“今”を鑑みながら、この作品を通してどのような演劇を創ることができるのか、カンパニー一丸となって挑戦し、追い求めていきたいと思っています。「Take Me Out」2025年シーズンに向けての全キャストオーディション、たくさんの方の応募を心からお待ちしております。

舞台「Take Me Out」

2025年5月~6月
東京都 有楽町よみうりホール
※地方公演あり。

作:リチャード・グリーンバーグ
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎

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